文=ハンナ・ニーマー

 

■なぜ、あの音を聴くと「コカ・コーラ」を思い出す?

歴代の「コカ・コーラ」製品や販促アイテム、アート作品などが保管されている、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)のアーカイブ庫。その収蔵品は膨大な数に上りますが、実は、そこに保管されているのは形ある物だけではありません。

たとえば、「コカ・コーラ」ボトルの蓋を開けるときのプシュッという破裂音、「コカ・コーラ」をグラスに注いだ瞬間に氷がカチリと割れる音、そして最初の一口がのどを通り抜けた後に思わず漏れてしまう「あぁ……!」という満足のため息。何と、それらも保管されているのです。

そして、それら「コカ・コーラ」にまつわる“音の管理人”を自任しているのが、アーカイブ庫のマネジャーを務めるジャマル・ブッカーです。

ザ コカ・コーラ カンパニーは1927年に、最初のラジオCMを放送しました。そして、1950年代初頭から、視聴者が「コカ・コーラ」を飲みたくなるように、「コカ・コーラ」が立てるさまざまな音を効果的にCMに活用するようになったのです。

「当時の音源から、『コカ・コーラ』ボトルの開栓音、グラスの中で氷がかち合う音や炭酸がはじける音などがCMで使われていたことが分かります。ラジオなので、実際にはグラスも液体も見えません。だから、音を立てているのがどんな炭酸飲料であってもおかしくないのですが、不思議なことに、聴いた瞬間、『コカ・コーラ』の映像が頭の中に浮かぶんですよね」(ブッカー

コカ・コーラ」のパッケージデザインは時代と共に変化しており、常に新鮮なイメージを打ち出してきましたが、「コカ・コーラ」の発する音はいつの時代も同じ。それは、同じ音をCMで発信し続けることで、消費者に、“この音と言えば「コカ・コーラ」”というイメージを植え付ける、ブランディング戦略があったからです。

ザ コカ・コーラ カンパニーでグローバル・ミュージック・マーケティング部門を統括するジョー・ベリオッティは、次のように語ります。「一貫して同じ音を使い続けるということには、非常に大きな意味があります。『コカ・コーラ』そのものを見せられないときでも、聴覚を通して消費者に『コカ・コーラ』を“見せる”ことができる。『今すぐ飲みたい!』と思わせるパワーが、それらの音には秘められているのです」。

 

■「音で伝える」挑戦はこれからも続く

グローバルキャンペーン「Taste the Feeling」のテーマソングを歌うコンラッド・シューエル

 

時代は流れ、メディアの主役がラジオからテレビやインターネットへと変わっても、「コカ・コーラ」という体験は、常に音とともにあります。

ザ コカ・コーラ カンパニーが2016年初頭に打ち出したグローバルキャンペーン「Taste the Feeling」の音源を制作した際も、ベリオッティはアーカイブ庫を訪れ、消費者にも馴染み深い「コカ・コーラ」の音から発想を膨らませていきました。

 

「Taste the Feeling」キャンペーンの一環で世界配信されたTVCM“Anthem”篇

 

「Taste the Feeling」キャンペーンの公式テーマソング
アヴィーチー&コンラッド・シューエル

 

「『Taste the Feeling』キャンペーンでは、『コカ・コーラ』のある風景を、音をベースにして描こうとしています。『コカ・コーラ』を冷蔵庫から出し、パーティ会場に運んで人々に飲んでもらうまでの一連の流れを音で構成してみたんです。その音をぎゅっと凝縮させて完成したのが、『コカ・コーラ』の飲料体験を数秒間で表現するオーディオシグネチャーです」(ベリオッティ

Podcast(ポッドキャスト):「コカ・コーラ」にまつわる音
音源の後半で、「Taste the Feeling」キャンペーンで使われた音楽や効果音を聴くことができます。
※説明は英語のみ
https://soundcloud.com/the-coca-cola-company/the-sounds-of-coca-cola

のどの渇きがいやされる瞬間を、音で見事に再現したオーディオシグネチャーは、「コカ・コーラ」を飲む体験と分かちがたく結びついている“音”の力をあらためて実感させてくれますね。どのようにしてその体験の本質を消費者に伝えるか、その挑戦は現在も続いているのです。