1970年代に販売された、「コカ・コーラ」ロゴとスローガン入りのビーチパンツ。
そのまま積み上げられていた状態であったのを(左)、
間に保護紙を入れ(中)、保存箱に収納するように整理し直しました(右)

文=ギニー・ヴァン・ウィンクル

 

■プロだから、伝えられることがある

ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)のアーカイブ庫(*)にはどんなアイテムが保管されていると思いますか?」と問われたら、歴代の「コカ・コーラ」ボトルや古い金属製の看板、そして色鮮やかな広告ポスターのことを連想する方が多いと思います。もちろんそれも正解ですが、アーカイブ庫に保管されているのは、それらだけではありません。ほかの「お宝」もたくさん保管されています。たとえば、野球のユニフォーム(1920年代製)やベルボトムのパンツ(1970年代製)など、ユニークな繊維製品です。

2015年、ザ コカ・コーラ カンパニーのアーカイブ庫に保管されているアイテムは、そっくりそのまま、新施設に移されました。私はそれ以来、歴史的なアイテムの保存管理の専門家(アーキビスト)として、繊維製品の整理と保存状態の改善に取り組んでいます。担当するアイテムは衣服、帽子、エプロン、バッグ、ネクタイやスカーフなど多岐にわたり、その素材もシルク、コットン、ポリエステル、レーヨン、リネンなどさまざまです。

話は変わりますが、『Coca-Cola Journey』の読者の中には、お祖母さんの手縫いのキルトやお母さんのウェディングドレスなどの繊維製品を、いつまでも良い状態のまま保管しておきたいと考えている方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか? 同時に、お気に入りの服に虫食いやシミを発見してショックを受けたことのある方も多いはずです。

そこで今回は、私自身が仕事で活用している、繊維製品をいつまでも良い状態のまま保管するためのコツをお教えしたいと思います。実践するのはそれほど難しくありませんし、ここに挙げるアイテムは、インターネット通販などで安価に手に入れられるものばかりなので、気軽に試してみてください。

*アーカイブ庫……企業の創立時から現在に至るまでの製品や広告資材などを保管しておく場所。歴史ある米国企業の多くがアーカイブ庫を保有している。

 

■「日光」は、繊維製品の大敵です

繊維製品を劣化させる主な外部要因には、温度や湿度の変化、日光や有害物質の影響などがあります。また、害虫やネズミ、カビなどが深刻なダメージをもたらすこともあります。カビの臭いに加え、布地に黒や灰色がかった変色が見られたら、それはほぼ、カビが発生していると考えて間違いないでしょう。このような繊維を痛める要因をできる限り排除し、適切な方法で保管できていたかどうかによって、数年後、数十年後の繊維製品の状態が決まってきます。

上に挙げたような外部要因による劣化を予防することは、起きてしまった問題を解決することよりもはるかに簡単です。繊維製品の保管に適した温度帯は18~24℃で、湿度は50%程度ですが、この条件をきっちり満たせなくても、温度と湿度をなるべく一定に保つように心がければ、一定の効果は得られます。時間や季節によって激しい温度差の生じない(あるいは空調で管理できる)安定した場所を選択し、温度・湿度の調整が難しいことの多い天井裏や地下室は避けたほうが無難でしょう。

意外に思われるかもしれませんが、繊維に想像以上のダメージを及ぼす要素が、日光です。染料が色褪せたり、染めていない布の色が変色することもありますので、繊維製品にはなるべく日光が当たらないように気をつけましょう。保存ボックスに入れて、窓のない部屋に保管するのが理想的です。

保管場所は清潔に保ち、害虫を寄せ付けるゴミやほこりがたまったり、臭いがこもったりしていないか、定期的に確認しましょう。実は、大切な繊維製品に害虫が住み着くのを防ぐ最も効果的な方法は、家の中をきちんと掃除すること。もちろん、換気によって室内の空気をきれいな状態に保つことも大事。加えて、保存ボックスにしまうことで、ほこり、花粉、土、タバコの煙などから繊維製品を守ることができるのです。

 

■プロご用達アイテムを活用しよう

余裕のある方は、もうひと手間かけてみましょう。繊維製品の劣化を防ぐには、長期保存のために開発されたアシッドフリー(劣化の原因となる酸性物質が原料から取り除かれた状態)の保護紙を敷いた保存ボックスを用いるのが最も効果的です。衣類は、ハンガーでつるすのではなく平置きすることで、繊維へのダメージを最小限にとどめることができます。衣類を何枚か重ねて保存ボックスに入れる際には、間に保護紙をはさみましょう。

ザ コカ・コーラ カンパニー アーカイブ庫直伝 あなたの大切な洋服を100年間保管する「プロの技術」

コカ・コーラ」ロゴ入りキャップは、以前はそのまま積み重ねていましたが(左)、
帽子一つずつに柔らかい保護紙を詰めて元の形に整え(中)、
アシッドフリーの保護紙を敷いた保存箱に収納しました(右)

衣類の状態が良ければつるして保管することも可能ですが、金属製のハンガーに長期間かけたままにしたり、クリーニングから引き取った状態(ビニール製の袋や衣類カバーに入った状態)のままで保存するのは禁物。金属製のものやビニール製のものは、ときとともに素材の劣化が進み、金属であればサビが、ビニール製であれば分解した化学物質が衣類を傷める原因となるからです。衣類を保管するときは、サイズの合った保管専用のカバーをかけましょう。また、ビーズのついたドレスのような重い服は、つるさず平置きにするのが鉄則です。衣類をたたんで保存箱に入れる場合は、しわになるのを避けるために、折り目の部分にアシッドフリーの保護紙をはさむと良いでしょう。

バッグや帽子などの立体的なアイテムは、中に保護用のティッシュをふんわりと詰めて形を整えます。汚れや傷みを見つけた場合には、その製品を取り扱う専門店にクリーニングと補修をしてもらうことをお勧めします(繊細な素材でつくられた製品の場合、普通のドライクリーニングの薬剤を使うと傷んでしまうことがあるため、頼むお店を選ぶときは慎重に!)。カーペットやタペストリーに家庭用の掃除機をかけるときは、吸引力を最も弱い設定にして丁寧に汚れを取り除くようにしましょう。

いかがでしたか? コツさえつかめれば、家庭でも、プロにお願いしたかのような良い状態で繊維製品を保存することができます。世代を超えて受け継がれてきた大切な繊維製品をいつまでも楽しんでいただけるように、ここにご紹介した方法が参考になれば幸いです。