文=ローラ・ランダル

■1931年に誕生したドライブインシアター

ここはインディアナ州にあるドライブインシアター「フォーティーナイナー」の中のスナックバー。2000年にリニューアルしたものの、1956年の開店時とほとんど変わらない外観を残しています。「コカ・コーラ」のロゴが入ったビンテージの電光看板にはホットサンド、オニオンリング、キャラメルアップルといった定番商品の名前が書かれ、その下には溶かしバターがけのポップコーンをつめるための赤と白のカップがきちんと並べられています。そして、ステンレスの機械からソフトドリンクが注がれ、ガラスのキャビネットの中にはキャンディバーが積み上げられているのが見えます。
アメリカに初めてドライブインシアターが誕生したのは1931年のこと。屋外で映画を観るための新しい娯楽施設は、たちまち家族やカップルの人気を博しました。そして、ドライブインシアターの増加とともに、その場内に設けられた売店も、来場者に対して大きな役割を果たすことになります。

■ドライブインシアターの主役になった「コカ・コーラ

アメリカの原風景をつくり上げた
「コカ・コーラとドライブインシアター」の幸せな関係
Double Feature: Coke's Cinematic Connection With Drive-In Movie Theaters
ドライブインシアターでの掲出用につくられた「コカ・コーラ」の広告

ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)でヘリテージ・コミュニケーション部門のディレクターを務めるテッド・ライアン。彼に、「コカ・コーラ」とドライブインシアターの関係について話を聞いたところ、「コカ・コーラ」は1950~60年代にかけて、ドライブインシアターの各売店で主役級の存在になっていたそうです。そのためか、この時期のコカ・コーラ社はドライブインシアターだけを対象とする広告、キャッチコピー、ドリンクサーバーなどを展開しています。「コカ・コーラ」の各販売店に配布されたソーダファウンテンの1962年のカタログには、人々の行動様式や娯楽の変遷の実例として、外食の増加や野球観戦の一般化と共に、ドライブインシアターのことも取り上げられています。
ソーダファウンテンによる「コカ・コーラ」の販売は、1963年まではドライブインシアターやレストランといった外食のできる大型施設が中心でした。ちょうどその頃、コカ・コーラ社は圧力式のドリンクサーバー(通称「サテライト」)を導入しました。このサーバーは複数のノズルを使うことで短時間に多くのドリンクを注ぐことができることが売りでした。「今見ると時代遅れな感がありますが、1962年当時としては最先端の、本当にかっこいい設備だったんですよ」とライアンは言います。
アメリカの原風景をつくり上げた
「コカ・コーラとドライブインシアター」の幸せな関係
Double Feature: Coke's Cinematic Connection With Drive-In Movie Theaters
1934年に開業した「シャンクワイラーズ」は、アメリカで今も営業を続けている最古のドライブインシアター


■Win-Winの関係を築いた広告戦略

ドライブインシアターでは、「コカ・コーラ」の初期の広告戦略の興味深い一面を見ることができます。コカ・コーラ社は売店での売り上げを伸ばすため、映画の予告編からスナックバーのディスプレイに至るまで、多種多様なツールを駆使して製品の宣伝をしました。たとえば、コカ・コーラ社は自社製品を置いてもらうことと引き換えに、スナックバーで売られているキャンディや軽食など、他の商品の宣伝も「抱き合わせで」手がけています。お菓子やドリンクに囲まれたピエロのモビール、映画本編の前に上映されるアニメなど、広告として用いられた媒体もさまざまでした。ホットドッグ、ポップコーン、はてはピクルスまで、スナックバーに置かれたありとあらゆるものを、キンキンに冷えた「コカ・コーラ」と一緒に楽しんでもらおうと考えたのです。
「当社が提供した広告は、シアターのオーナーの経営を助けるものでした。ドライブインシアターで提供される食べ物の質や施設内のサービスの質の高さを強調した、非常に特殊な目的の広告を展開したのです」とライアンは解説します。