「いつでも、どこでも、だれにでも」清涼飲料を届けるために
全国に設置されたコカ・コーラ社の自動販売機(以下、自販機)。
年々進化はしつつも、その基本的な機能は、あまり変わらないまま現在に至っています。
しかし、ITによる技術革新が進む現代だからこそ、
「自動販売機にイノベーションを起こす必要があるのではないか?」
と考える方も多いはず。
そこで、気鋭の若手建築家の谷尻誠さんと
AR三兄弟の川田十夢さんを招き、ふたり会議を開催。
まだ誰も見たことのない未来の自販機、
私たちと自販機のハッピーな関係について語り合ってもらいました!


文=小山田裕哉
写真=鈴木慎平


「買うだけの自販機」じゃつまらない!

──川田十夢さんは2013年4月に、コカ・コーラの自販機のPRを手がけてらっしゃいますよね。

川田 スマホ向けアプリの「自販機AR」ですね。自販機のマーカーをアプリのカメラで読み取ることによって、「ポーラーベア」のイラストが動いたり、ウェブ上でいろいろな情報が提供できるようにしたものです。

──そのときに、自販機の歴史をいろいろと調べたりしたとか。

川田 ええ。起源を調べていったら、古代エジプトのアレキサンドリア寺院には自販機が既に存在していました。神殿にコインを置く秤があって、何枚か置くと聖水が出てくるという仕掛けでしたね。最初から飲み物のための装置だったというのは驚きでした。基本的には、このときから自販機の基本的な仕組みって変わってないんですよ。だから、「自販機AR」では飲み物を売るだけじゃない、付加価値を加えることを考えたんです。

川田十夢と谷尻誠の
「自動販売機の未来はこういうことなんだよ会議」
川田十夢さん

──谷尻誠さんは建築家として、自販機をどう捉えていましたか?

谷尻 僕は建築家という仕事柄、正直、自販機をいかに隠そうかと考えてしまうんですよ(笑)。というのも、自販機って機能がひとつしかないですよね。川田さんがおっしゃるように、飲み物を提供するだけの存在。そこにだけ最適化されていて、外見を周辺環境にマッチさせるような配慮はあまりなされてないように思う。だから、自分が手がけた建築に自販機を置くと言われると、「置くんですか……」という感じになってしまうんです(笑)。

──デザインを隅々まで考え抜く建築家の方にとっては、確かに自販機は厄介な存在かもしれませんね。

谷尻 デザインの面だけじゃないんですけどね。自販機に機能がひとつしかないということは、活用されていない時間が長いということでもあるわけです。飲み物を提供する時間は一瞬であって、それ以外の時間は有効に使われてない。だから、そこに置いてあること自体に、意味が出てくるような機能を持たせれば、「ぜひ自販機を置こう!」という考えにもなるんです。

打ち水をする自販機があっていい

──その機能とは?

谷尻 たとえば、冬であれば自販機から発する熱を利用して暖房器具になり、夏には水蒸気を発して、その気化熱で周辺の気温が下がる、とか。人がそこに集まりたくなる機能があるといいなと思うんです。

人って、モノの前にいる時間が長くなればなるほど欲しくなるんですよ。パッと見た瞬間に「欲しい!」と思うことは珍しくて、接している時間が長いほど、買ってみようかなと思う生き物なんです。観光旅行と一緒ですよね。ただ行って帰ってくるだけだったら何も買わないけど、泊まったりすると記念に余計なものまで買ってしまう。

川田 それ、すごくいいっすね。自販機がモノを売るだけじゃなく、プラットフォーム化していくという。

谷尻 モノを売るだけじゃなくて、いろんな機能があって、そのなかのひとつに「飲料を売る」ということが含まれているのが理想です。できれば、その機能が社会の役に立つものであってほしい。暖房や冷房になることで人が集まり、結果として商売になる。自販機が発する水蒸気には打ち水みたいな効果があって、増えれば増えるほど都市の気温が下がるとか。そうすれば、社会的にも「もっと自販機を置こう!」という動きになっていくと思うんですよ。

川田 現状では人と自販機は1対1の関係でしかありませんが、自販機をプラットフォームとして考えていけば、その可能性はどんどん広がっていく。飲み物を提供するだけでは、もう物足りなくなってきている。

谷尻 その機能はみんなが知っていますからね。