■順番は1番目。運命の審査対象演舞

 そして、翌日──。
 雑居ビルにある早朝の控室は、まさに戦場だった。このチームのメイクをデザインしたメイクアップアーティストの横山美和さんの指示を受けて、急ピッチでメイクが進む。チーム部員たちにメイクをするのは、ボランティアでチームに帯同している札幌ベルエポック美容専門学校の学生たちだ。

北の大地に「ハピネスの花」が咲いた!
コカ・コーラ札幌国際大学、
涙と笑顔の「YOSAKOIソーラン祭り」
部員のメイクは横山美和さんが担当。
アマチュアの情熱にプロの仕事が彩りを添えていた

「時間ないけど、気持ちつくって!」
「気持ちをつくりすぎて、顔が追いつかない!」
 部長の澤出は「みんな、緊張してフワフワし過ぎです」と不安を口にした。じっと動かず、落ち着き払った様子の女性リーダー・輪島は「実は緊張しています」と表情を緩ませた。1年生の藤田は、相変わらず「ウフフ」と笑っている。
 ビルを出て移動し、本番まで30分。澤出が全員を集めて声を張った。
「自分たちは、今まで2カ月間、本当に頑張ってきました。怒られたこともあるし、成長したと思うところもあったと思うけど……もう、ね、頑張りましょう! 本当に! 俺は本当にファイナルに行きたいし、みんなをファイナルに連れて行きたい。だから、マジで頑張りましょう! 笑顔で踊れるように!」
「大通パレード南コース」で行われる演舞は、通りを移動しながら立て続けに5度披露される。そのうち、審査の対象となるのは2度目の演舞。通りの脇には観覧用のスタンドが設置され、全国から駆けつける多くの観客によって埋め尽くされる。前日までとは、まるで雰囲気が違う。
コカ・コーラ札幌国際大学」の演舞順は、幕開けを告げる1番手だった。

北の大地に「ハピネスの花」が咲いた!
コカ・コーラ札幌国際大学、
涙と笑顔の「YOSAKOIソーラン祭り」

北の大地に「ハピネスの花」が咲いた!
コカ・コーラ札幌国際大学、
涙と笑顔の「YOSAKOIソーラン祭り」
運命の審査対象演舞。澤出賢人くんも、
輪島亜実さんも、藤田早稀さんも、力一杯舞った!


■100人の部員、みなが泣いた

 審査の翌日、つまり、審査結果発表の日。市内各地の会場で演舞を披露した彼らは、公園で昼食を摂っていた。
 10個に分けられた各グループの、それぞれ1位チームだけが勝ち取る「ファイナル進出」の発表は、正午(最終的に、セミファイナルの優勝チームを加えた計11チームがファイナルに進出する)。時計の針が12時15分を指した頃に、澤出がスタッフに呼び出された。車の裏に隠れて結果を告げられた彼は、その場で泣きじゃくった。
 その様子を察したチームメイトたちは、昼食どころではない。次第に増すソワソワ感がピークに達したところで、ようやく落ち着きを取り戻した澤出が戻ってくる。自然と円ができあがり、その中心で澤出がゆっくりと話し始めた。
「2カ月間、自分たちは本当に全力で頑張ってきました」
「自分的には、審査もすごく手応えがあったし、それはみんなも感じたと思うんだよね」
「自分たちの頑張りは嘘じゃない。そう信じています」
「その結果は……」
 めいっぱい張り上げた「ファイナル進出です!」を言い切る前に、100人の歓喜が爆発した。抱き合い、叫び、ハイタッチを交わし、午後の演舞に向けて直したばかりのメイクを台無しにするほど涙が溢れた。

北の大地に「ハピネスの花」が咲いた!
コカ・コーラ札幌国際大学、
涙と笑顔の「YOSAKOIソーラン祭り」

北の大地に「ハピネスの花」が咲いた!
コカ・コーラ札幌国際大学、
涙と笑顔の「YOSAKOIソーラン祭り」

北の大地に「ハピネスの花」が咲いた!
コカ・コーラ札幌国際大学、
涙と笑顔の「YOSAKOIソーラン祭り」
「ファイナル進出です!」そう告げられると
部員たちの顔は涙でくしゃくしゃに


 歓喜の輪は、約3分も続いた。再び澤出が、みんなを集めて言葉を発する。
「俺も本当に嬉しい! 3年ぶりのファイナル。4年生以外は初めてのファイナルだし、やっと行けたって感動してます。でも、俺らはまだ上にいけると思うし、次のファイナルパレード、ファイナルステージも成功させたい! ただ喜んでいるだけじゃダメ! まだ上にいけるから、みんなもついてきてください!」
 どこからともなく、「自分も泣いてるじゃん!」とツッコミが入った。100人がまた、一斉に笑った。