東日本大震災から3年。コカ・コーラシステムでは発生直後から、「コカ・コーラ復興支援基金」を通じ、さまざまな形で被災地の復興支援を続けてきました。被災3県の公立小中学校への太陽光発電システムと蓄電池の設置の助成事業もその一つです。
震災では、多くの人々の暮らしが脅かされました。学校が地域の避難所となり、そこで長期間避難生活を送った子どもたちが大勢いました。大変な経験をしたからこそ、未来を担う子どもたちには、希望を取り戻し、明るくたくましく成長してほしい——。
願いを形にするために地域のニーズに耳を傾け、始まったこの取り組み。助成を受けた小中学校では、太陽光発電設備の設置によって災害時のエネルギー確保が可能となり、その設備を活用して子どもたちがクリーンエネルギーを身近に感じられるよう新たな環境教育が進められています。
そのうちの一校である、福島県相馬郡の新地小学校を訪ねました。

「いつも当たり前にある電気や水が使えない」。
震災で痛感したライフラインの重要性。

2011311日。福島県新地町には10メートルを超える大津波が押し寄せ、町の風景は一日にして激変しました。その中で、幸いにも大きな被害を免れたのが新地小学校です。数日後には避難所として開放され、不安を抱えた地域の人々が肩を寄せ合う場に。
同校の渡邊博之校長は、「寒さが厳しい中で何より大変だったのは、避難されてきた方々の体調管理です。電気が使えず灯油も不足していて、ストーブの使用は制限されました。体調を崩す子どもたちも増え、風邪の流行などをいかに防ぐかという点には非常に苦労しました」と、当時を振り返ります。
断続的な余震、離れ離れになった家族と再会できない子どもたち。状況把握のための十分な情報も得られず、不安と焦りばかりが続きました。
「いざというときに避難所となる小学校だからこそ、ライフラインの重要さをこのとき痛感しました。そして、子どもたちもまた暖房や照明が使えない、のどが渇いても飲み水がないという状況を経験し、『普段当たり前に電気や水が使えること』のありがたさを身に染みて感じたようでした」。

太陽光発電システムがつなぐ、未来への希望。災害に強い町をつくり、子どもたちにエネルギーの大切さを伝えたい。01
新地町立新地小学校 校長 渡邊博之先生

太陽光パネルと蓄電池の設置。
新たな設備を活かした環境教育プログラムがスタート。

震災後、いち早く災害に強い町づくりに乗り出した新地町。「コカ・コーラ復興支援基金」の助成を受け、町内にある小学校3校と中学校1校すべてに太陽光発電システムと蓄電池を設置しました。
新地小学校では、80枚のソーラーパネルにより毎時平均20kWを発電。非常時に備えて、蓄電池に約56時間使用可能な16kWの電力を蓄電しています。また、校庭と玄関ホールには、発電状況がひと目でわかる「見える化システム」が設置されています。
「見える化システム」と連動したノートパソコンを活用し、理科や総合学習の時間で太陽光発電について学ぶのは5年生と6年生。「今、学校で発電している電気はどのぐらい?」「今日はどのぐらいのCO2を削減できた?」などの先生からの問いかけに、興味津津でモニタ上の発電量のグラフを覗きこみ、次々とワークシートに数字を書き込んでいく。
「今つくり出している電力を教室の蛍光灯に使うと何分になります」「エアコンの設定を毎日1℃・1時間変えると、1年間で削減できる二酸化炭素量はこれくらいになります」と答える子どもたち。「こんなに節電できるんだ」「すごいね」など口々に驚きの声が交わされる授業が展開されています。

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昼休みや放課後には、渡邊校長をはじめ先生と児童が一緒になって「見える化システム」の発電量を観察するのも日常的な光景です。低学年の子どもたちも関心を持って集まってきて、「今日は昨日より晴れているからいっぱい電気をつくっているね」と、先生の説明に聞き入っています。
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被災地のボトラー社として地域に寄り添い、
太陽光に希望を託す。

一方、被災地のボトラー社として、この事業を全面的にサポートしてきた仙台コカ・コーラボトリング(株)。社長の鈴木恭氏は、「地域に根ざして歩んできた企業として、こんな非常時だからこそ私たちにしかできない支援をやり抜こうと考えました」と語ります。
震災後、地元の地域からは電気を使えないことの不自由さを訴える声、電気の大切さを再認識する声が多く聞かれました。
「そんな中で太陽光発電システムの助成事業をスタートしました。これは、地域の防災機能を高めながら、震災を体験した子どもたちに自然エネルギーについて学ぶ機会を提供することを目的としています。この2つの点において非常に意義のある取り組みだと感じています」。
新地小学校に太陽光発電設備が設置された後には実際に環境授業を見学。「子どもたちはパソコンに触って、『今何ワットを発電していて、これは何世帯の家庭分の電気になる』『削減した二酸化炭素量をクスノキに置き換える何本分になる』など、ゲーム感覚で楽しそうに学んでいました。そんな前向きな姿を見ていると、つくづくこのプロジェクトに携わってよかったと感じます」。

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仙台コカ・コーラボトリング株式会社 代表取締役社長 鈴木 恭氏

地域や環境を大切に思い、明るい未来を築いてほしい。
次世代に向けられる真摯な願い。

「将来、ソーラーで動くロボットを開発したい」「太陽光の力で住みやすい社会をつくりたい」など、未来に向けた明るい夢を語る児童たち。
渡邊校長もまた、「太陽光発電システムの設置を受けて、子どもたちの再生エネルギーについての関心は高まっています。家や学校で積極的に節電に取り組むなど、電気をますます大切に考えるようになりました」と、その成長ぶりを誇らしげに語ります。

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「人間が健康で文化的な生活を営むためには、豊かな自然環境を守っていくことが欠かせません。子どもたちは今、直接的にはクリーンエネルギーについて学んでいますが、より広い視野から日本の未来を考えていくことが大切です。震災復興には10年、20年という長い歳月がかかる中、将来はその中心を担って活躍してほしいのです。また、今回の震災で国内外からいただいた暖かい支援を忘れず、他の人たちが苦しい境遇に置かれたとき進んで手を差し伸べる人間になってほしいと願います」と渡邊校長。
子どもたちに寄せる期待は、鈴木氏の想いとも重なる。
「子どもたちは、東日本大震災という困難な体験により、自然を怖いものと感じたかもしれません。しかし、実際には、私たちは太陽光エネルギーをはじめ非常に多くの恵みを自然から受けています。太陽光発電をきっかけにそのことに目を向け、自然やふるさとを大切にする気持ちを養ってくれればうれしいです」と、鈴木氏は子ども達への期待を語った。
雨上がりの下校時間。
太陽が顔をのぞかせ、見える化システムが再び動き出した。
「今何ワットだね」「電気できてるね」とおしゃべりしながら児童たちは校舎を後にした。
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