2015年度のサスティナビリティー活動報告を、外部有識者に分析、評価いただきました。

◆評価できること

全体を通じて、「me=お客様の健康とハピネスに貢献する活動」「we=地域社会に貢献する活動」「world=持続可能な地球環境への取り組み」という日本コカ・コーラ株式会社とコカ・コーラシステムが取り組むサスティナビリティーの3つの重点領域における活動が分かりやすくまとめられた良いレポートだと思います。トップメッセージにあるように、日本コカ・コーラは、「お客様と地域社会の“良き隣人”として」社会的責任を果たしていきたいと考えています。コーポレートガバナンスや製品の品質管理を徹底するだけでなく、人びとや地域に寄り添い共に生きる姿勢を持つことは現代の企業にとって欠かせない要素です。まずは、このような企業姿勢を高く評価したいと思います。
今回のレポートで評価できる点は、レポートを活動ダイジェスト・特集ページと、より詳細に活動を伝えるGRIレポートで構成したことでしょう。日本コカ・コーラが特に重点的に取り組むべきだと考えている(マテリアリティ)活動が明確になると同時に、3つの重点領域・9つの重点分野の活動が整理され、数値なども含めたデータが読み取りやすくなっています。
特集では、「若者の運動不足を解消するコカ・コーラの活動」(『me』)、「コカ・コーラシステムの復興支援の現在」(『we』)、「霧島連山の森とコカ・コーラシステムの絆」(『world』)が紹介されています。いずれも素晴らしい活動であり、また、現在の日本が抱える社会的課題をふまえて展開されている点が特徴です。たとえば、1つ目の活動に関して、「Olympic Moves」自体は米国に本社をおく「ザ コカ・コーラ カンパニー」が主導し、持続可能な社会づくりを目指して健康的なライフスタイルを普及するためにIOC(国際オリンピック委員会)とともに世界中で取り組んでいるグローバルプログラムですが、日本の中学生のスポーツ環境が二極化している実態をふまえて、身体能力や運動経験に左右されない競技を選定しています。2つ目については、東日本大震災の影響を受けた岩手県陸前高田市の小学校にソーラーパネルを設置し、子どもたちが好奇心を取り戻して未来に目を向け始める様子が紹介されています(2015年度時点で、岩手県・宮城県・福島県の合計55校をサポート)。3つ目も同様です。日本で林業の担い手が減少している現状をふまえて、「森を守ることは、水を守ること」という考え方のもと、日本コカ・コーラは日本製紙グループと協働で森林資源と水資源を保全するプロジェクトを展開しています。コカ・コーラは世界で名だたるグローバル企業グループであり、ともすると世界中で画一的なサスティナビリティー活動を展開しがちですが、日本が抱える社会課題を直視し、その解決に向けて地道な活動を行っている点を高く評価したいと思います。
WebにまとめられたGRIレポート部分で注目したいのは、日本コカ・コーラの環境問題に対する意識の高さです。「エネルギー」「水」「容器」「廃棄物」の4つを対象領域とした「環境2015年目標」については、すべての項目で目標値を達成し、とりわけ物流部門と販売(自動販売機)部門でCO2排出量削減が大きく進みました。2015年4月には、国内の中長期環境目標として「環境2020年目標」を設定・公表しましたが、ここでは、「エネルギー削減・温暖化防止」「持続可能な(環境に配慮した)容器」「水資源保護」「持続可能な農業」というより意欲的な4つの重点分野が設定されています。今後も地球環境の保全に力を注いでいただきたいと考えます。
その他、女性の活躍推進に関しても積極的な点を評価したいと思います。2016 年4月現在の女性社員比率は32%、女性管理職比率は22%と、国内の企業において女性管理職の比率が突出しています。2016年4月~2020年3月を計画期間とする「女性の積極的参画を目指す活動計画」の内容にも期待がもてます。ダイバーシティは企業の活力を高めイノベーションを生起させる源泉となるので、今後もぜひ推進を継続していただきたいと思います。

◆要望したいこと

グローバル・リポーティング・イニシアチブ(GRI)はG4ガイドラインにおいて、特定された経済・環境・社会への影響に対応するマネジメント方法についての開示(DMA:マネジメントアプローチに関する開示)を推奨しています。次年度は、GRIレポート部分で各領域ごとに、「社会課題に対する認識」→「担当マネジメントの声(コミットメント)」→「中期目標・アクションプラン」を公開してはいかがでしょうか。ステークホルダーにとって必要な情報を積極的に開示すると同時に、サスティナビリティーマネジメントの実効性を高めることができると考えます。


高岡先生プロフィール

<プロフィール>
高岡美佳(たかおか・みか)/立教大学経営学部教授・博士(経済学)。専門は小売経 営論、フランチャイズシステム論、サステナブルコミュニケーションと消費者行動。産業構造審議会地球環境小委員会評価・検証WG(低炭素社会実行計画フォローアップ)などを務める。