「Coca-Cola Sustainability Report 2017」を、外部有識者に分析、評価していただきました。

◆評価できること

■全体を通じて、「me=お客様の健康とハピネスに貢献する活動」「we=地域社会に貢献する活動」「world=持続可能な地球環境への取り組み」という日本のコカ・コーラシステムが取り組むサスティナビリティーの3つの領域と9つの重点分野における活動がわかりやすくまとめられた良いレポートだと思います。今年、日本コカ・コーラは設立60周年を迎えました。トップメッセージにあるように、この60年の間、時代ごとに環境は変化してきたものの、「事業活動を通してお客様と共通の価値をつくりながらサスティナブルな地域社会づくりに貢献する」というスタンスは一貫しています。本業の中に組み込まれたCSR活動は持続性が高く、日本コカ・コーラの社会的責任意識の高さを示しているとも言えるでしょう。このような、CSRに対する企業姿勢を高く評価したいと思います。

■特集では、「日本コカ・コーラの製品開発の歴史と未来」(「me」)、「コカ・コーラシステムの女性起業家支援活動」(「we」)、「持続可能な農業を実現する『日本コカ・コーラのお茶製品』の原材料づくり」(「world」)が紹介されています。本レポートで最も高く評価したいのは、日本コカ・コーラとコカ・コーラシステムが、実に多様な側面から日本の社会に貢献している点です。
例えば、1つめの製品開発について、現在、日本で50ブランド以上800種類以上と大変多くの製品を提供していますが、これは日本人の豊かな暮らしを支えたいという思いから、日本の消費者の嗜好にあわせて製品開発を行ってきた結果に他なりません。2017年には、近年の健康志向の高まりに対応して、機能性表示食品である「からだ巡茶 Advance」や特定保健用食品の「コカ・コーラ プラス」等を発売しました。
2つめの女性支援活動については、2020年までに500万人の女性の経済的自立と社会での活躍を支援する「5by20」を世界64カ国で推進する一環として、2016年よりNPO法人と内閣府と協働するかたちで日本で始めた女性起業家を支援するプログラムが注目に値します。近年は改善されてきたものの、日本ではいまだに女性労働力率のM字カーブ(30代の労働力率が低い)現象が見られます。出産・育児の後に、再度、企業に勤務するというキャリアだけでなく、「起業」するというキャリアプランニングを支援する活動は、今現在の日本の女性が置かれた状況を十分に考慮した上での女性支援活動と言えるでしょう。
3つめの特集記事では、転換期にある日本の農業の中で、原材料の調達先である農家がコカ・コーラシステムの「SAGP(持続可能な農業に関する指針:サプライヤー基本原則)」の認証を受け、品質を保持すると同時に環境にも配慮する持続可能な農業を営んでいる様子が描かれています。
上記の活動は、いずれも、日本社会の現状と課題に対して、日本コカ・コーラとコカ・コーラシステムが提供している解決策であり、同社の日本における社会貢献活動が多様な側面から行われていることを示しています。

■GRIレポート部分を読むとわかるように、コカ・コーラシステムは、「地域社会が健全であってこそビジネスの成長を果たすことができる」という考えのもと、地域コミュニティーを支える活動に積極的に取り組んでいます。その活動は、「地域清掃」「スポーツ支援プログラム」「教育・文化支援プログラム」「パートナーシップ」など多岐に渡りますが(GRIレポートp.58)、それ以外にも、2016年末で全国に8,000台の災害支援型自動販売機を設置するなど、事業と地域貢献を両立させる活動を展開しています(GRIレポートp.50)。2016年の熊本地震では、実際に災害支援型自販機を通して多くの飲料が無償提供されました。地域を支える活動の一つひとつは地道なものですが、今後もぜひ継続していただきたいと思います。

■2015年4月、コカ・コーラシステムは、環境サスティナビリティーへの取り組みの指標として「環境2020年目標」を掲げ、「エネルギー削減/温暖化防止」「持続可能な(環境に配慮した)容器」「水資源保護」「持続可能な農業」という4つの重点分野を設定しました(GRIレポートp.67)。その中で、「水資源保護」については、「ウォーターニュートラリティー」(製造に使用した水と同等量の水を還元する目標)を2020年よりも4年早い2016年末に達成しています(GRIレポートp.70)。また、「エネルギー削減/温暖化防止」については、2020年までに製品のカーボンフットプリントを2010年比で25%削減するという意欲的な目標を立てています。コカ・コーラシステムの地球環境の保全に関する積極的な取り組み姿勢を評価したいと思います。

職場環境については、まず、2017年4月現在の女性管理職比率が24%と国内の企業の中で高い水準に達しており(GRIレポートp.66)、先進的な企業と言えるでしょう。フレックスタイム制、育児休業、介護休業、育児看護休暇、在宅勤務制度等など、柔軟な働き方をサポートする制度も導入しています(GRIレポートp.60)。日本における労働人口減少という問題をふまえ、今後も女性の活躍の場を広げていただくとともに、高齢者や障がい者を含むダイバーシティマネジメントと働き方改革をより一層進めていただくことを期待します。次年度はぜひ、高齢者雇用者数、障がい者雇用率、その他各種制度の取得率などのデータも掲載していただきたいと思います。

◆<要望したいこと>

■次回のレポートでは、CSRアクションプランを掲載してはいかがでしょうか。目標を設定し、実際に行ったCSR活動の概要を示すとともに目標達成の進捗率を年度ごとに確認してPDCAサイクルを回すことは、日本のコカ・コーラシステムの活動のさらなる推進に役立つはずです。日本コカ・コーラらしい社会貢献活動は着実に進展しているので、次年度のレポートがさらに充実することに期待します。


高岡先生プロフィール

<プロフィール>
高岡美佳(たかおか・みか)/立教大学経営学部教授・博士(経済学)。専門は小売経営論、フランチャイズシステム論、サスティナブルコミュニケーションと消費者行動。産業構造審議会地球環境小委員会評価・検証WG(低炭素社会実行計画フォローアップ)などを務める。