地元地域の人たちと観光客で連日賑わいを見せる、東京・谷中銀座商店街。明治37年創業の酒屋「越後屋」は、111年にわたり、ほぼ年中無休で人々の暮らしを眺めてきた。老舗がこだわり続けることは何なのか。そこにはコカ・コーラ社製品との、ある共通点があった。


ビールケースが椅子代わり。そこに腰かけ、「コカ・コーラ」の瓶を片手に友達と談笑する人。お茶を飲みながら、隣の肉屋さんで買ったメンチカツを頬張る人。日本酒を飲みながら、人の流れをぼーっと眺める人。みんな思い思いに、自分の時間を過ごしている。谷中銀座商店街(東京・台東区)の酒屋「越後屋」の軒先で見られる日常の光景だ。

越後屋の創業は明治37年(1904年)。365日、法事の日以外は年中無休というのが創業以来の“社則”となっている。副店主の本間俊裕さんは、今も現役で店に立ち続ける両親の背中を見ながら育った。家族旅行には出掛けられなかったが、寂しい思いはしなかった。この場所には、谷中の人たちのたくさんの思い出が詰まっているからだ。
ビールケースに座って休憩する人たち
ビールケースに座って休憩する人たち

「子どもの頃は友達が学校帰りにうちの店に寄って、よくいっしょに瓶の『コカ・コーラ』を飲みました。今も近所の子どもたちが店に来ると、当時を思い出しますね。僕が生まれる前からうちの店を使ってくれている人もいます。ここにいると、いろんな思い出話を聞けますよ。昔は家庭に冷蔵庫がなかったから越後屋を冷蔵庫代わりに使っていたとか、銭湯の帰りには必ず寄っていたとか」

越後屋には、創業時の店舗が戦争で焼失したつらい過去もあるが、雨の日も雪の日も店を開けてきた。「店を開けてお客様が来なかった日はない」と本間さんは言う。それだけ地域の人たちから、「越後屋はいつでも開いているし、欲しいものが何でも置いてある」と信頼されているのだろう。
越後屋の本間俊裕さん
越後屋の本間俊裕さん

今では写真だけが残っているかつての越後屋
今では写真だけが残っているかつての越後屋

本間さんがこの店を継ぐことを決めたのは23歳の時だった。父・元裕さんが体調を崩したのを機に、酒屋を継ぐべきがどうかを真剣に考えた。「これだけ長く、多くの人に愛された越後屋を潰すわけにはいかない」という思いと「この場所ならやっていける」という商売人としての計算、それら二つが合わさり彼に継ぐことを決意させた。

それから10年余り。元裕さんはすっかり元気になり、店主として店を守っている。母・スミ子さんも毎日店の前に立ち続けている。本間さんは仕入れや配達など、越後屋の中核を担うようになった。