高校ラグビーの強豪校がひしめく埼玉県。その分厚い壁に挑み続ける、若き指揮官と生徒たちがいる。 県立熊谷高校ラグビー部。文武両道を掲げる進学校の生徒でもある彼らは、常に自分たちよりも強い相手と戦う強さを求められている。進むべき道を模索する彼らに変化を与えたのは、「コカ・コーラ レッドスパークス」との出会いだった。

「ゴーゴーゴーゴーッ!」

河川敷のラグビーグラウンドに熱血顧問の声がこだまする。一つのボールを中心に選手たちが一斉に走りだす。体と体が激しくぶつかり合う。
ホイッスルが鳴った。選手たちがゆっくりとタッチラインに向かって歩きだす。そしておもむろにスポーツドリンクを手に取り、渇いた喉を潤した。休憩時間ではない。補給タイムだ。彼らはすぐに、グラウンド中央へと戻っていった――。
日本一の最高気温を記録したこともある埼玉県熊谷市は、この日も朝からぐんぐん気温が上がり、5月でありながら夏を思わせる暑さであった。過酷な状況にも負けずに汗を流す埼玉県立熊谷高等学校ラグビー部は、地区予選を突破したばかり。県大会に向けての練習をしていた。

普段の練習から激しくぶつかり合う
普段の練習から激しくぶつかり合う

「初戦の相手は県でベスト8にも残るような強豪校。実力差が大きいことは認めます。でも大事なのは自分たちのやりたい“守り抜くラグビー”ができるかということ。挑戦者として食らいついていきたい」

そう話すのは同校ラグビー部の顧問であり監督の、梨本雄太さん。自身も熊谷高校ラグビー部出身で、愛校精神の塊のような人物だ。見た目はさわやかな若者だが、その立ち居振る舞いは常に礼儀正しく、堂々としている。
梨本さんが高校教師になったのは2013年4月。いきなり母校に配属され、ラグビー部の顧問に指名された。「こんなにラッキーなことはない」と喜んだ梨本さんだが、待っていたのは強豪校の分厚い壁だった。全国有数の激戦区である埼玉県の中でも、熊谷高校のある北部地区は特にラグビーが盛んな地域だ。後輩でもある教え子たちを何とか勝たせてあげたいという一心で指導しているが、当初、その思いは空回りするばかりだった。
埼玉県立熊谷高校ラグビー部顧問の梨本雄太さん
埼玉県立熊谷高校ラグビー部顧問の梨本雄太さん

「やることをやっていれば強くなる、こういうふうにすれば勝てる。最初は自分の考えを押し付けるだけの指導だったような気がします」

選手それぞれに個性がある。体格の違い、性格の違い、ラグビーへのモチベーション。部員の3分の2は高校に入ってからラグビーを始める初心者なので、チーム内のあらゆる凸凹を調整してからでないと、なかなか一つにまとまらない。まずはそれを行うのが自分の役割なのだと気づいた。
しかし梨本さんは、ラグビーのことだけを考えているわけにもいかなかった。ラグビー部の顧問、監督である以前に、自分は高校の教師である。ただチームを強くすることだけが目的になってしまってはいけない。挨拶や礼儀がしっかりと身についているか、勉強にしっかり取り組んでいるか。規則正しい日常生活を送ることができているか。そういったことをトータルで見ていくことが求められる。
さらに、部活の生徒のことだけを考えるわけにもいかない。高校では保健体育の教師だ。ラグビー以外のスポーツに取り組んでいる生徒もいれば、ほとんどスポーツをする機会がない生徒もいる。彼らも自分の教え子である。子どもの運動能力の低下が叫ばれる昨今において、そのことも気にかけなければならなかった。

「持久走ですぐにバテてしまったり、腕立て伏せが3回しかできなかったり。あくまで個人的な実感ですが、自分が高校生だった頃よりも体力の落ちている生徒が増えたな、という印象です」

ラグビー部員は毎日走るが、学校では生徒によって運動量が異なる
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