──“格差”を研究テーマとしたきっかけは?

森永:先ほど話したアメリカ旅行は、スタート地点のニューヨークで友人が強盗に遭うという散々な旅でした。そして僕自身も、ニューオリンズで財布を落とすというハプニングがありました。中に10万円は入っていました。「財布がない!」と叫びながら歩き回っていたら、農夫風の男性が「お前が落としたのはこれか?」と言って財布を持ってきてくれたんです。どうせ中身は抜き取られた後だろうと思っていましたが、全部残っていた。きらびやかな都会で友人は強盗に遭い、貧しい人の多い田舎町で僕は助けられた。経済の豊かさと人の心の豊かさが必ずしも一致しないという現実を目の当たりにして、資本主義とは何なのかと考えるようになったんです。やはり人間は汗をかいて働かなくてはいけない、とも思いました。それだけが格差研究のきっかけというわけではありませんが、僕のバックボーンに強烈に刻まれた出来事であったことは間違いありません。

B宝館には「コカ・コーラ」グッズがたくさん

B宝館には「コカ・コーラ」グッズがたくさん2
B宝館には「コカ・コーラ」グッズがたくさん

──これまでの人生での失敗談はありますか?

森永:バブル到来を予測して、収入に見合わない家を買ってしまったことですね。当時サラリーマンだったので安定的な収入はありましたが、ローンの支払いがきつくて貧乏生活を余儀なくされました。僕は我慢できるけど、生まれたばかりの子どものミルク代までは削れない。晩御飯が目玉焼き1個ということもありましたけど、妻はよくやりくりしてくれたと思います。

──今後の活動をどのように思い描かれてますか?

森永:少しずつ干されてフェードアウトしていければと……。オファーがあるうちは働きますけど、お声が掛からなくなっても悪いことではないと思っています。それはつまり、若い人の出番がやって来たということですからね。僕もサラリーマン時代、若くて経験不足なのにいろんな仕事を任せてもらいました。そのおかげで今があります。自分でやれば何だって面白いし、失敗することで成長もします。コカ・コーラの奨学金は僕に学ぶチャンスを与えてくれましたが、若い人たちにもっと多くのチャンスを与えることが、これからの企業や社会に求められることなんじゃないかと思います。
プロフィール

もりなが・たくろう/1957年東京都生まれ。80年東京大学経済学部卒業。日本専売公社、三井情報開発総合研究所、UFJ総合研究所などを経て、2006年より獨協大学経済学部教授。執筆活動の傍ら、テレビやラジオにも多数出演。分かりやすい経済解説に定評がある。B級グッズを集めるのが趣味で、14年10月埼玉県所沢市に「B宝館」をオープンさせた。