佐々木校長に、今の教育の現場において「求められる支援の形」を聞くと、「まさに今回のような『機会創出型』」という回答が返ってきた。

「陸前高田の子どもたちを見ていて、少しだけ心配があるとすれば、どこか自己評価が低いように見えるんです。近隣の学校の先生からも似たような話を聞いたので、東北人の気質か震災の影響なのかもしれません。本来、子どもって『なんでもできる』という夢や希望が前面に出ているものだと思うんです。ですから、ソーラーシステムのように、好奇心を刺激する設備はとてもありがたかった。私たち自身も工夫していきますが、今後、他地域の子どもたちと接するような機会があるとうれしいですね」

震災から5年が経過し、日常を過ごすための物資自体はある。だが、いまだ市内の大部分は整地作業中。小中学生が思い切り体を動かせる場所も多くない。佐々木校長も「子どもたちが、思いきりサッカーボールを蹴ることができるような環境が早く戻ってくるといいですね」と窓の外に目を向けた。

本校舎を左手に、白線で引かれたトラックを体育館へ向かって走り出す子どもたち

本校舎を左手に、白線で引かれたトラックを体育館へ向かって走り出す子どもたち。遊ぶことができるスペースは限られるが、休み時間には遊具などで力いっぱい遊ぶ姿が見られた


それでも子どもたちは休み時間になると、校庭や体育館へと駆けていく。体育館で上級生から下級生まで夢中になっていたドッジボールでは、上級生が下級生に優しくボールを回していた。小学生でも、自然と小さき者に手をさしのべる気風が身についている。陸前高田の子どもたちは、人とつながり、地域とつながり、自然とつながることを知っている。

その体育館の屋根のソーラーパネルには、太陽の光がさんさんと降り注ぐ。あの日には想像すらできなかった、あたたかな“今”がここにある。

学校への来客が帰途につくとき、すれ違う子どもたちは「さようならーっ!」と大きく手を振る。その姿を見ながら、佐々木校長は目を細めて言う。

「震災を経たコミュニティだからこそ、地域の大人たちとも密接に関わっている。だからうちの子どもたちは誰にでも普通にあいさつができる。小さなことかもしれないけど、大切なことだと思うんです」

子どもを見つめ、美点を知り、課題に向き合う。教育を取り巻く環境もまだ十分ではない中、外からは見えない苦労もあるだろう。

「当たり前のことですよ」

さらりと口にした言葉に、東北における教育者の矜持が覗いた。


「コカ・コーラ 復興支援基金」とは?

ザ コカ・コーラ カンパニーは2011年3月24日、「コカ・コーラ 復興支援基金」を設立。いつの時代も変わらず掲げているテーマ「ハピネス」を東北に届け、循環させるべく、今後も復興に向けて支援を継続していく。

ささき・しん

<プロフィール>
ささき・しん/1962年奥州市生まれ。岩手大学教育学部卒業後、盛岡私立杜陵小学校、仁王小学校、岩手県立総合教育センターなどを経て、2014年から矢作小学校長に就任。課題は特別活動の充実。