かつて、カフェインを含む飲料を摂取することで、骨が弱くなるのではないかと考えられていた時期がありました。しかし、その後15年間にわたる研究により、現在、そうした考えは誤りであったことが分かってきています。健康な骨を維持するためには、カルシウムやビタミンDなどが含まれた栄養バランスのよい食事をとることや、適度な運動を続けることが大切です。そして、炭酸飲料に含まれるカフェインやリン酸などが、骨の健康を損なうことはないということを知っておきましょう。
骨の健康と、リン酸およびカフェインを含む飲料との関係
疫学調査で、コーラ飲料を摂取した思春期の少女の骨の健康が悪化した、という結果が公表されました。以来、コーラ飲料に含まれるリン酸、またはカフェインの過剰摂取により、骨吸収を促したり、あるいはカルシウム吸収が阻害され、骨形成が低下するのではないかと考えられるようになりました。
しかし、科学者および患者支援組織が過去15年間にわたり実施してきた研究では、カルシウム摂取が十分であれば、リン酸やカフェインを含む炭酸飲料を摂取することで、健康な人の骨が弱くなったり、骨粗鬆症を発症したりすることはないと結論づけられています。
・ | 2010年のカルシウムおよびビタミンDの推奨摂取量の改定に際して、米国医学研究所(U.S. National Academy of Sciences’ Institute of Medicine:IOM)は、体のカルシウムバランスに影響を与える可能性がある食事に関するレビューを発表しています。その結果によると、カフェインはカルシウム排泄を適度に促進し、骨への吸収を阻害しますが、1日にコーヒー2~3杯程度のカフェイン摂取では、牛乳をあまり飲まないなどカルシウムの総摂取量が極端に少ない場合でなければ、骨量の減少は見られませんでした。また、食品中のリン酸もカルシウム吸収に悪影響を及ぼさないことも明らかになりました。なお、IOMはリン酸を多く含む炭酸飲料の消費量が骨量減少および骨折増加と関連することを示す複数の研究があるものの、「これはリンそのものが問題ではなく、牛乳の代わりに炭酸飲料を飲んだことによるカルシウム摂取不足が原因なのではないか」としています。 |
・ | 2006年に国際骨粗鬆症財団(International Osteoporosis Foundation:IOF)は、炭酸飲料、特にコーラ飲料の摂取による骨への影響を調査し、栄養と骨の健康に関するレビューを発表しました。このレビューでは、「いくつかの観察的研究で、10代の青少年における多量の炭酸飲料の摂取が、骨密度(bone mineral density:BMD)の減少や骨折率の増加に関連しているとされている。しかし、これらの飲料の摂取が骨の健康に悪影響を及ぼすという根拠はない」と述べています。 |
・ | 2004年度の米国公衆衛生総監報告における骨の健康と骨粗鬆症に関する発表では、カフェイン、リン、炭酸飲料の過剰摂取について言及しています。しかし、科学的データをレビューした結果、「適量のカルシウム摂取が維持されているのであれば、ある程度の炭酸・カフェイン飲料の摂取に問題はない」と結論づけています。 |
・ | 2000年に公表された、骨粗鬆症予防・診断・治療に関する米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の同意形成会議声明では、栄養バランスの良い食事をしていれば、飲料や食品中のリンまたはカフェインが原因で、骨粗鬆症にはならないとしています。また、「多量のタンパク質、カフェイン、リン、ナトリウム摂取は体内のカルシウムバランスに悪影響を与えるが、十分なカルシウムを摂取していれば問題ない」と再確認しています。 |
・ | 1994年、NIHの要請で骨と骨粗鬆症の専門家が作成した最適なカルシウム摂取に関するレポートでは、「脂肪、リン、マグネシウム、カフェインを含む食品は、カルシウムの吸収や排出に対して大きな影響を与えない」と報告しています。また米国医師会は、NIHの専門家の意見を再検討し、カルシウム吸収に対するリンの影響について「生理学的には大したものではない」と結論づけています。 |
骨の健康についての世界的権威であるDr. Robert P. Heaneyは、清涼飲料水と骨の健康に関する解説の中で、「清涼飲料水が人体のカルシウム吸収に及ぼす影響は比較的小さい。のみならず、その影響は清涼飲料水の代わりに牛乳を飲むことによって解決できるものである。清涼飲料水を摂取しないよう警告するのではなく、乳製品の摂取を推奨することが解決策となる」と述べています。
炭酸飲料におけるリンおよびカフェインの含有量
リンは人間の生命維持に欠かせない栄養素です。体内のエネルギー代謝において重要な役割を果たすだけでなく、骨と歯を形成しています。米国において、リンの推奨摂取量(Recommended Dietary Allowance:RDA)は、妊婦や授乳中の女性も含む18歳以上の全成人で1日あたり700 mgとされています。
コーラ飲料やその他の炭酸飲料からリン酸を摂取すると、胃で消化され、リン酸塩として体に吸収されます。これは、食品に含まれるリンと同様です。肉、チーズ、ナッツ、穀物などに含まれるリンも、消化によってリン酸塩として体に吸収されています。
米国人の一般的な食事において、リンの摂取源となる食品を調べると、炭酸飲料から摂取するリンは全摂取量の約2%です。代表的なコーラ飲料であるコカ・コーラ240mL(8fl. oz.)に含まれるリンの量は約41 mgで、これは独特のピリッとした味を加えるために添加されています。比較すると、240mL(8fl. oz.)の牛乳には200mgのリンが含まれています。食事によって摂取されるリンの多くは、肉、チーズ、ナッツ、穀物などの高タンパク食品によるものです。
コカ・コーラのカフェイン含有量は240mL(8fl. oz.)あたり23mgです。これは、同量のコーヒーに含まれるカフェイン量の1/3以下です。飲料ごとのカフェイン含有量を比較したカフェイン比較表を参照するとよいでしょう。
要点:カフェインやリン酸を含む炭酸飲料を飲んだとしても、骨が弱くなったり、骨粗鬆症の原因となったりすることはありません。骨の専門家は、強い骨を作り、維持するためには、バランスの良い食事で十分なカルシウムとビタミンDを摂取し、適度な運動を行うことを推奨しています。また、その他の栄養素、例えばビタミンK、ビタミンA、マグネシウム、亜鉛、タンパク質なども、健康な骨を作るのに重要な役割を果たしています。
高カロリー甘味料と骨の健康
2008年6月にTsanziらが発表したレビューでは、砂糖(ショ糖)、異性化糖(high fructose corn syrup:HFCS)などの通常の高カロリー甘味料による骨の健康への影響が評価されています。著者らは、骨の健康に対する通常の高カロリー甘味料の影響について結論を出すには、研究が不十分であるとしています。2003年に発表された論文では、砂糖は尿中へのカルシウム排泄を促しますが、体が自動的に調節を行うため、長期的には実質的なカルシウムの損失が生じることはないとしています。ただし、十分なカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを含む栄養バランスの良い食事をとり、適度な運動を続けることが重要です。
Dietary Reference Intakes for Calcium, Phosphorus, Magnesium, Vitamin D, and Fluoride. Institute of Medicine, National Academy of Sciences. 1997.
Fitzpatrick L and Heaney RP. Got Soda? Editorial. J Bone Min Res. 2003; 18(9): 1570-1572.
Bone Health and Osteoporosis: A Report of the Surgeon General. U.S. Surgeon General. 2004.
Osteoporosis Prevention, Diagnosis, and Therapy. National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement, March 27-29, 2000.
[Note: This statement is more than five years old and is provided solely for historical purposes].
Optimal Calcium Intake. National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement. June 6-8, 1994.
[Note: This statement is more than five years old and is provided solely for historical purposes]
詳細情報
「飲料が骨に及ぼす影響の有無を検証」
IFIC Review: Physical Activity, Nutrition and Bone Health.
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