糖分の過剰摂取は、一日あたりの適切なカロリー量をオーバーさせることや虫歯に繋がります。毎日のカロリー量を適切にコントロールすることと、適度な運動を行うことが健康のために大切です。また、長時間の運動中に、砂糖やブドウ糖、果糖などが含まれたスポーツ飲料を摂取することで、運動能力が向上することが知られており、米国スポーツ医学会でも、スポーツ飲料による運動中の糖分補給が推奨されています。


炭水化物と砂糖が健康に与える影響については、近年、世間から注目が集まっています。2010年の米国人の食事摂取指針に関する専門委員会(U.S. Dietary Guidelines Advisory Committee:DGAC)は、炭水化物に属するエネルギー源としての砂糖が、心臓病、2型糖尿病、虫歯、体重増加やその他の健康問題を左右しているという明確な根拠は確認できないとしています。欧州食品安全機関(European Food Safety Authority : EFSA)も、体重増加や食事に関連する諸疾病に対して炭水化物の関与を決定づける証拠はないという結論を出しています。しかし、カロリーを過剰に摂取すれば、長期的には体重増加につながります。

判断力と行動への影響
さまざまな小児を対象に実施された多くの研究によって、砂糖の摂取は小児の多動性や注意力持続時間、認知能力には影響しないことが示されています。しかし、砂糖の摂取量と判断力や精神状態にはある種の関係があることを示す研究もあります。ある状況下では、砂糖の摂取が認知能力を向上させることが明らかとなっています。ただし、過剰なカロリー摂取を防ぐために、炭水化物や糖質はバランスの良い食生活の中で摂取すべきです。

運動能力への影響
米国スポーツ医学会(American College of Sports Medicine)によると、長時間の運動では、脱水状態や血糖値の低下、筋肉中のグリコーゲンが枯渇するため、運動能力と持久力には制限があるとされています。長時間の運動時に、単糖類を摂取すると、脳と活動中の筋肉に直接エネルギーが供給され、筋肉と肝臓のグリコーゲンが温存されるために疲労を感じるまでの時間が延長し、運動能力が向上します。ほとんどの市販スポーツ飲料には、ショ糖、ブドウ糖、果糖などが含まれており、米国スポーツ医学会の推奨量とされる240 mLあたり13~19 gの炭水化物を補給できます。

食事への影響
米国医学研究所(U.S. Institute of Medicine:IOM)の報告によると、食品中の炭水化物に関する2002年版食事摂取基準(Dietary Reference Intakes : DRI)調査における砂糖とビタミン・ミネラルの摂取量のデータを解析した結果、砂糖の摂取量が多すぎたり少なすぎたりする場合は、ビタミン・ミネラルの摂取量が少なくなることがわかりました。具体的には、食事による全摂取カロリー中、砂糖によるカロリーが全体の25%を超えると、ビタミン・ミネラルの摂取量が少なくなることがわかっています。この結果に基づき、砂糖の摂取を全摂取カロリーの25%以下にすることが提案されました。

近年、米国と英国において、食事による砂糖とビタミン・ミネラルの摂取量との関係を定量化する目的で、2つの調査が実施されました。2010年にMarriottらが行ったレビューでは、2003~2006年に実施された全国健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey : NHANES)のデータを使用しています。その結果、砂糖と砂糖を含む食品の平均摂取量は1990年代半ばと同等であることが示されました。ただし、砂糖の摂取量が多い人ほど、必要なビタミン・ミネラルの摂取量を満たしていないことも明らかになりました。「しかし砂糖の摂取量が多い人はごく一部であり、米国民全体が栄養摂取の問題に直面していると捉えることはできない」と著者は述べています。また、GibsonとBoydが2009年に行ったレビューでは、National Diet and Nutrition Surveyから、4~18歳の英国児童1,688名のデータを抽出して解析しました。その結果、「砂糖の摂取量がビタミン・ミネラルの摂取に与える影響は全体的には少ないが、児童における栄養価の高い食品の摂取不足と、砂糖の摂取量が多い食生活には関連性があるかもしれない(約23%)」ことが明らかとなっています。

体重管理への影響
体重管理とは、すなわちカロリーバランスを整えることです。食品・飲料中から摂取されるカロリーと、基礎代謝や運動により身体が燃焼するカロリーが均等になるよう心がける必要があります。

2010年に米国人の食事摂取指針に関する専門委員会が行ったエビデンスに基づくレビューでは、糖を含む飲料の摂取と体重増加に関連があるという疫学的根拠が示されました。しかし、委員会は体重増加の原因が砂糖の摂取によるものなのか、単に余分なカロリーによるものなのかは、レビューした研究だけでは判断できないとしています。一方、無作為化比較対照試験(randomized control trials : RCT)では、カロリー摂取量や体重の増加において、砂糖と他のエネルギー源とを添加した食品摂取には差が見られないことがわかっています。ちなみに、RCTは、因果関係を評価するための「最高基準」とされる試験です。さらにレポートは、「個人の食事の基本栄養素の摂取割合の違いが、現在蔓延している肥満の原因ではない」とし、「健康的な体重の維持、減量、減量後のリバウンド予防に効果があるような、食事中の脂肪・炭水化物・タンパク質の最適な摂取割合は存在しない。重要なのは、総カロリー量である」と述べています。また、「含有するカロリー量が一定であれば、摂取するものが液体か固体かということは、体重とカロリー摂取の関係にほとんど影響しないのです。したがって米国人は、液体か固体かに関係なく、食品・飲料に含まれるカロリー量に注意を払わなければならない。いずれの場合も、問題となるのはカロリーである」としています。

重要なのは食事全体のカロリー摂取をコントロールすることであり、体重増加を避けるためには過剰にカロリーを摂取することなく、必要な栄養素を摂取しなければなりません。摂取量に気を配り、低カロリーまたはカロリーゼロの甘味料を選択することで、甘味への欲求を満たし、砂糖によるカロリー摂取をコントロールすることができます。

糖尿病への影響
糖尿病は、身体が適切に血糖値を調節できなくなることによって起こる代謝疾患です。1型糖尿病では、ブドウ糖をエネルギーとして使用することを助けるホルモンであるインスリンを膵臓が産生しなくなります。2型糖尿病は、十分な量のインスリンを産生しなくなる、もしくは作られたインスリンに身体が正常に応答できなくなり発症します。糖尿病発症には多くの潜在的な危険因子が関係し、遺伝や環境、代謝などの因子がすべてかかわっています。特に、肥満と運動不足が、2型糖尿病の発症に強く関与します。

米国糖尿病協会(American Diabetes Association : ADA)の栄養療法指針では、砂糖の摂取について、砂糖とその他の炭水化物を等重量で置き換えられるということ以外に、具体的なガイドラインは示されていません。ADAは食品中の脂肪および飽和脂肪酸の摂取制限を糖尿病患者に推奨しています。

歯の健康への影響
砂糖および調理済みデンプン製品(パン、パスタ、クラッカー、ポテトチップスなど)は、虫歯のリスクを高める発酵性炭水化物です。口腔細菌が発酵性炭水化物にさらされると、酸を生成し、歯の硬いエナメル質や象牙質を徐々に分解します。その結果、虫歯が進行するのです。虫歯のリスクの高さには、口腔細菌が発酵性炭水化物にさらされる時間、歯科衛生習慣の不足、歯のエナメル質の強度、歯の表面の深いくぼみや溝の存在、唾液の流れと組成、口腔細菌の種類と量などの複数の要因が関係します。

しかし、これらのリスクは適切なフッ素の使用と定期的な歯科検診で良好な口内衛生を管理することによって低減させることができます。

歯の侵食とは、一般に歯が頻繁に酸にさらされることによって生じる歯のエナメル質の脱灰現象であり、これに口腔細菌の細菌作用は無関係です。さまざまな食品・飲料中に含まれる酸や胃酸(逆流性食道炎、Gastroesophageal Reflux Disease : GERD)、あるいは水に含まれる塩素が原因となることもあります。酸性度が高い食品・飲料を頻繁に摂取したり、口の中に残したままにすると、歯の侵食を進めることになります。なお、多くの炭酸飲料は酸性ですが、その酸含有量はオレンジやリンゴ、ブドウなどのフルーツジュースと同程度なのです。

まとめ
身体の主要なエネルギー源である炭水化物は、健康的な食生活に必須です。現在、バランスのとれた食生活、活動的な生活習慣の中で、食品・飲料中の炭水化物や砂糖を楽しむべきだとしています。

糖代謝の詳細については、「IFICレビュー:砂糖の科学」を参照。

参考文献
Position of the Academy of Nutrition and Dietetics: Use of Nutritive and Non-nutritive Sweeteners.J Acad Nutr Diet. 2012; 112: 739-758.

Scientific Opinion on Dietary Reference Values for Carbohydrates and Dietary Fibre (EFSA)

2010 Dietary Guidelines Advisory Committee Report, Part D. Section 5: Carbohydrates

Marriott BP, et al. Intake of added sugars and selected nutrients in the United States, National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES) 2003-2006. Crit Rev Food Sci Nutr. 2010; 50(3): 228-258.

Dietary Reference Intakes for Energy, Carbohydrate, Fiber, Fat, Fatty Acids, Cholesterol, Protein, and Amino Acids (2005). Institue of Medicine, Food and Nutrition Board (FNB)

Gibson S and Boyd A. Associations between added sugars and micronutrient intakes and status: further analysis of data from the National Diet and Nutrition Survey of Young People aged 4 to 18 years. Br J Nutr. 2009; 101(1): 100-107.