異性化糖(高果糖液糖、High-fructose corn syrup:HFCS)とは、トウモロコシを原料として作られる高カロリー甘味料のことをさします。トウモロコシの収穫量が多い米国では、特に砂糖(ショ糖)の代わりとして使われることの多い甘味料です。砂糖と同程度の甘さを持つことが特徴であり、またカロリー量も砂糖と異性化糖ではほぼ同等であることが知られています。一部では、異性化糖は砂糖よりも肥満の原因になりやすいという懸念が広まっていましたが、この認識は2008年の調査によって明確に否定されています。


ニュースの裏側にある科学的事実
異性化糖は、コーン(トウモロコシ)を原料として作られる高カロリー甘味料です。シリアル食品、肉製品、ソース類、調味料、清涼飲料水など、さまざまな食品・飲料への使用に適しています。異性化糖はショ糖(砂糖)の代わりに多くの加工食品や飲料に使用されるようになってきていますが、米国および世界中で最も使用されている甘味料はショ糖です。

異性化糖の成分・安全性・代謝
「異性化糖」とは、通常のコーンシロップと区別するために付けられた名称です。通常のコーンシロップは100%ブドウ糖からできており、ショ糖(砂糖)の65%ほどの甘さしかありません。しかし1970年代、清涼飲料水用の甘味料を開発する中で、コーンシロップ中のブドウ糖の一部を、ブドウ糖よりも甘い果糖に変化させる方法が発見されました。この新しい甘味料「異性化糖」はショ糖に匹敵する甘さがあり、55%の果糖が含まれていることから、HFCS55と呼ばれるようになりました。

「異性化糖」の55%の果糖含有は甘味料として高い値ではありません。ショ糖は50%の果糖と50%のブドウ糖を含んでおり、これはHFCS55の組成(55%の果糖と45%のブドウ糖)とほぼ同等です。多くの清涼飲料水に含まれる甘味料が100mLあたり10 g程度であることを考えると、果糖含有量にほとんど差はありません。HFCS55をショ糖の代わりに使用しても、250 mL(8fl. oz.)あたりで果糖使用量は1.25 gしか増加しません。

異性化糖は、1983年に米国食品医薬品庁(Food and Drug Administration : FDA)から「一般的に安全」(Generally Recognized as Safe:GRAS)と認定されています。子どもや妊娠中・授乳中の女性を含め、すべての人が摂取しても安全だといわれています。異性化糖はショ糖と同じように体内に吸収され、代謝されます。異性化糖のカロリー量はショ糖と同様で、1gあたり4 kcal(17 kJ)、あるいは小さじ1杯あたり約16 kcalです。

異性化糖の利点
異性化糖は米国の食品メーカーで広く使用されています。これは、顆粒状のショ糖(砂糖)と比べ、供給面、製品の安定性、取り扱いやすさの面で優れているためです。米国ではトウモロコシの収穫量が多く、安定供給が可能です。一方、ショ糖はその多くを輸入に頼っています。そのため、ショ糖の供給量は、生産国の気候状況や政治情勢に左右されてしまうという問題があります。また、異性化糖は性質が安定しており、特に酸性飲料においてそれは顕著です。さらに液体であるため、顆粒状のショ糖よりも輸送や取り扱い、調合が簡便だという特徴があります。

異性化糖をめぐる論争―科学的な正しい理解
2004年、American Journal of Clinical Nutrition (AJCN)誌が発表した異性化糖と肥満に関するレビューに多くのメディアが注目して以来、米国の消費者は、異性化糖が肥満を引き起こすのではという懸念をもつようになりました。このレビューは、異性化糖とショ糖との甘さ、果糖含有量、満腹感に及ぼす違いを比較し、両者の差が米国の肥満率の上昇と関連している可能性があると示したものです。それ以降、多くの論文が発表され、異性化糖は「より甘い」わけではないこと、またショ糖と比べて代謝に違いはないこと、インスリンレベルや満腹感を知らせるシグナルに及ぼす影響はショ糖と同等であることが確認されました。後に、前述したAJCN誌のレビューを執筆した共著者の1人から、「レビューの発表は科学的議論を喚起することを意図したものであり、また、紹介した仮説が正しくないことはわかっていた」と説明がありましたが、消費者とメディアには疑念が残る結果となりました。

2008年、米国医師会(American Medical Association : AMA)は異性化糖に対する消費者の懸念に応えるため、この甘味料に関する研究文献を再評価した。AMAは「異性化糖とショ糖の組成は類似しており、特に身体への吸収メカニズムはほぼ同じであることから、異性化糖が肥満やその他の条件に対してショ糖よりも大きな影響を及ぼすとは考えにくい」との声明を発表しました。ただし、その一方でAMAは異性化糖などの甘味料が健康に及ぼす影響を調べる独自の研究を奨励するとともに、消費者に対しては米国人のための食事摂取ガイドラインを遵守し、すべての高カロリー甘味料を制限するよう推奨しています。保健当局は、肥満は多くの複雑な要因、例えばエネルギーの過剰摂取、「座りっぱなし(Sedentarism)」などの活動量の少ない生活習慣、遺伝、生理学的・環境的・社会的問題などの因子が絡み合って引き起こされる、深刻な問題だと認めています。

今日、多くの専門家は「異性化糖とショ糖は非常に類似しているため、これらを置き換えても肥満または健康への明確な影響はない」と認めています。もちろん、ショ糖や異性化糖、またはそれ以外の糖であっても、すべてはエネルギーになることは確かです。ただ、残念なことに、消費者は異性化糖とショ糖との類似性などをほとんど知らないため、混乱と懸念を引き起こすこととなったのです。

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