コーヒーは古くに人間の生活に根付き、今では私たちの日常になじみ深い飲料になりました。ひとことにコーヒーといっても、銘柄や、焙煎具合、挽き具合、抽出の仕方により、その味や香りは驚くほどの多様さを持っています。最近では、抽出したコーヒーをアレンジしたコーヒー飲料の選択肢も増え、コーヒーの楽しみ方はますます広がっています。

 

1.産地で決まるコーヒーの銘柄
“コーヒー豆”という言葉をよく耳にするかもしれませんが、実はコーヒーはマメ科ではなく、アカネ科の“コーヒーノキ”という植物の種子を加工したものです。アフリカ、中南米、東南アジア、ハワイなど世界60カ国以上で生産されています。産地は赤道をはさんで北回帰線から南回帰線までの“コーヒーベルト”と呼ばれる地帯に広がります1)。国連食糧農業機関 FAOの統計 (2016年)によると、特にブラジルのコーヒー生産量は飛び抜けて多く、以下ベトナム、コロンビア、インドネシア、エチオピアと続きます2)
コーヒーには、キリマンジャロやブルーマウンテンといった非常に多くの銘柄があります。コーヒーの銘柄は産地や商品的な価値によって決まり、味や香りはそれぞれ特徴的です3)(表1)。いろいろな銘柄をブレンドすることで、風味や香りの可能性も無限大に広がります。

表1. コーヒーの産地と銘柄別の特徴の例

産地 銘柄 特徴
南米 ブラジル ブラジル 適度な酸味と苦味、調和のとれた味
コロンビア エメラルドマウンテン マイルドでなめらか、高貴な香り
ベネズエラ ベネズエラ 軽い酸味、程よい香り、独特の苦味
中米 ジャマイカ ブルーマウンテン 気品のある香り、単独で調和のとれた味
キューバ クリスタルマウンテン すっきりとした飲み口、甘い余韻
グアテマラ グアテマラ 甘い香り、上品な酸味、深いコク
コスタリカ コスタリカ 豊かな香りと酸味、上品な味
アフリカ エチオピア モカハラーボールドグレン 少ない苦味、程よい酸味
タンザニア キリマンジャロ 強い酸味、甘い香り
アジア インドネシア マンデリン やわらかな苦味、上品な風味
イエメン モカマタリ 独特の味わい、甘い香り
ハワイ州 ハワイ島 コナ 強い酸味、甘い香り

出典:中村賢一. 日本食生活学会誌,2000;11(1):23-31.
お茶大図鑑, pp.191-197, 主婦の友社, 2012

2.飲用のコーヒー豆の品種は主に2種類
コーヒーノキは、現在125種が確認されています。そのうち、飲用のコーヒーに加工されるのは、主にアラビカ種とロブスタ種の2種類です1)
アラビカ種は、コーヒー豆の全生産量の7割ほどを占めています1)。私たちが普段飲むコーヒーは、アラビカ種か、アラビカ種をメインにロブスタ種をブレンドしたものといっていいでしょう。アラビカ種は、平らな楕円形で、他の種に比べ香味高く高品質ですが4)、病害虫に弱いという欠点があります1)
一方、丸みをおびた短い楕円形であるロブスタ種は、インスタントコーヒーなどの工業用やブレンド用に使われます4)。耐病性に優れ、収穫量も多いのが特徴です1)
その他、リベリカ種も飲用種の一つで強い苦味を持ちます。生産量はわずかでごく一部の地域でしか栽培されていません1)


3.栽培地の標高や豆の大きさで格付け
同じ銘柄のコーヒーでも、豆の大きさや栽培の条件によって品質はさまざまです。そこで、産地ごとに基準を設け、コーヒー豆を格付けするものが“等級”です。一般に、栽培地の標高が高いほど、または豆の大きさが大きいほど、等級が高い(優れている)とみなされます4)。例えばコロンビアコーヒーは、コーヒー豆のサイズが大きい順に、エクセルソ プレミアム、エクセルソ スプレモ、エクセルソ エクストラというように等級がつけられます。


4.香味の決め手は焙煎
焙煎とは、生豆を乾煎りし、180〜250度に加熱する工程のことです。コーヒーの苦味や香りの成分は焙煎で生まれます。コーヒーの香味は、豆の種類よりも焙煎による影響の方が大きいといわれるほどです1)

生豆を加熱してしばらくすると、パチパチと音を立て豆がハゼ始めます。この1回目のハゼはいったん収束しますが、さらに加熱し続けると2回目のハゼが始まります。さらに加熱を続けると、豆の表面に油が滲み出します。これら一連の焙煎過程のどこで加熱を止めたかにより、浅煎り、中煎り、深煎りなどと呼び方が変わります。ただし、この焙煎度の表現の仕方には明確な決まりがなく、地域や時代によっても異なります1)(表2)
焙煎の過程では、複数の化学反応から多くの化合物が生まれます1)。なかでも、コーヒーらしい苦味をつくりだす重要な反応は、生豆に含まれる“クロロゲン酸”(ポリフェノールの一種)から苦味物質ができる反応です。また、メイラード反応(糖とアミノ酸から褐色色素ができる反応)によって、ピラジン、アルデヒドなどの香り成分や、コーヒーの焦げ色がつくられ、カラメル化(糖類から黒褐色色素のカラメルができる反応)によって酢酸やフラノン酸と呼ばれる香り成分がつくられます。香味は、香りの損失、水分や酸素との反応が原因となり、焙煎後すぐに劣化してしまいます。湿気や酸化を避け、ガスが抜けないようにすれば、おいしさをより長く保つことができます1)

表2. コーヒー豆の焙煎の進行と焙煎度の呼び方の例

焙煎の進行 焙煎度の呼び方
日本
(1970年代〜)
アメリカ
(2000年代〜)
1回目のハゼ


2回目のハゼ

油の滲出

浅煎り
(アメリカン)
シナモン(ライト)
シティ(ミディアム)
中煎り フルシティ(ヴィエンナ)
中深煎り
深煎り
フレンチ
(ダーク、エスプレッソ)
深煎り イタリアン
スパニッシュ
 

出典:旦部幸博. コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか, p.171, 講談社ブルーバックス, 2016 より抜粋

 

5.挽き方や淹れ方の多様性
コーヒーを淹れるとき、丸のままの豆ではなく、挽いて粉状にしたものを使用するのは、豆のままではコーヒーの成分が抽出されにくいからです。コーヒー豆を挽くと、豆の細胞壁が壊れて、中の成分が簡単に溶け出します1)。挽き方が細かい場合、コーヒーの濃度は濃く、苦くなりやすいのに対し、粗い場合は酸味が強くなります4)。市販の粉コーヒーのパッケージには、豆の挽き方が5段階で表示されており5)、好みの挽き方を選ぶことができます(表3)
また、コーヒーの淹れ方には、大きく2つのタイプがあります。一つは、コーヒーの粉と水を一度に混ぜる浸漬式抽出であり、プレス式、サイフォン、冷浸式などが該当します。もう一つは、コーヒーの粉で層をつくり、そこに水を通過させる透過式抽出で、ペーパードリップやネルドリップ、エスプレッソ、ウォータードリップなどがこれに当たります1)
豆の挽き方とコーヒーの淹れ方には相性があり、例えば、ペーパードリップには中挽き、エスプレッソには極細挽きが適しているとされています4)

表3. コーヒー豆の挽き方

挽き方 挽いた粒の粗さ
粗挽き ザラメ状かそれ以上
中挽き グラニュー糖程度
中細挽き 中挽きと細挽きの中間
細挽き グラニュー糖と白砂糖の中間
極細挽き 細挽きより細かい
 

出典:レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約(一般社団法人全国公正取引協議会連合会)http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/012.pdf  をもとに作成

 

6.“コーヒー”と“コーヒー飲料”の違い
最近では、缶やペットボトル入りのコーヒー飲料も種類が豊富です。多様な商品の中から、甘さやミルクの割合など、そのときの気分にぴったり合ったコーヒーをスムーズに選ぶためには、パッケージにある表示ラベルなどの読みとり方をおさえておくとよいかもしれません。
例えば、その飲料にどのくらいの割合でコーヒーが含まれているかは、食品表示欄の「品名」をみればわかります。コーヒー豆の使用量を基準とし、その割合が多い順にコーヒー、コーヒー飲料、またはコーヒー入り清涼飲料と記されます。また、カフェインレスコーヒーを使ったものや炭酸を含むものも区別され、品名の表示が異なります6)(表4)

表4.コーヒー飲料等の種類

品名の種類 コーヒー豆の使用量
(製品100gあたり)**
その他の規約
コーヒー 5g以上 なし
コーヒー飲料 2.5g以上5g未満 なし
コーヒー入り
清涼飲料
1g以上2.5g未満 なし
コーヒー入り
清涼飲料
(カフェインレス)
規定なし 使用できるコーヒー豆は、カフェインを90%以上除去したもののみ
コーヒー入り
炭酸飲料
規定なし コーヒー抽出分に、二酸化炭素を圧入したもの
 

出典:コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約・施行規則 対照表(一般社団法人全国公正取引協議会連合会)http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/010.pdf 

 

7.コーヒー飲料等の表示に関するルール
コーヒー飲料のパッケージに“微糖”や“低糖”といった文言があるのに甘味が強かったという経験はありませんか? 微糖や低糖と表示するかどうかは含まれる糖類の量によって決まるので、人工甘味料を使った場合などでは微糖や低糖でも甘みが強いことがあります。例えば、無糖、ノンシュガーなど糖質を含まない旨の表示は、飲料100ml当たり0.5g未満であることを、低糖、甘さひかえめなど糖質が低い旨の表示は、飲料100ml当たり2.5g未満であることを意味します6,7)。また、カフェ・ラッテ、カフェオレなど、ミルク入りを思わせるフレーズは、牛乳などの乳製品を5%以上含むことを意味します7)。 また、プレミアム、スペシャル、リッチなど高級感の漂うフレーズは、原材料の豆の半分以上が高品質な豆(ブルーマウンテン、キリマンジャロ、ハワイコナなど全14種類が規定されている)か、従来品の2割以上多くの豆を使っている場合にのみ用いられる表現です5),6)
同様に、「〇〇ブレンド」という表現についても基準が設けられており、例えば、 “エメラルドマウンテンブレンド”であれば、原材料の豆の51%以上がエメラルドマウンテンという銘柄の場合に用いられます6)
その他にも表示できる文言は細かく決められています。例えば、「ベスト、極上、最高級、濃厚、ストロング、本格派、純粋」といった文言は禁止されています6)

 

〈コラム〉

コーヒー牛乳がなくなった!?

お風呂上りにコーヒー牛乳を飲みたいという人は多いのではないでしょうか?しかし、実は今、「コーヒー牛乳」と呼べる製品は存在しません。
というのも、2003年に飲用乳の表示に関する公正競争規約が改正され、
生乳100%でなければ“牛乳”という表示ができなくなったためです。
“ミルク”や“乳”という表示は許されているため、改正後の現在は
「コーヒー牛乳」に代わり「ミルクコーヒー」のように表示されています8)


コーヒーは、同じコーヒーノキの種子を原料としていても、産地やブレンド、焙煎度や挽き方、抽出の仕方次第で、ひと味もふた味も違ったおいしさが生まれます。その奥深さは、コーヒーが人々を魅了する理由のひとつかもしれません。
飲料産業が発展した今、世界各地のコーヒーや、それらをアレンジしたコーヒー飲料を手軽に楽しめるようにもなりました。コーヒーの基本情報を知ることで、より自分に合ったコーヒーの楽しみ方をみつけてみてはいかがでしょうか。

 

参考文献
1) 旦部幸博. コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか, 講談社, 2016

2) FAOSTAT(FAO(国連食糧農業機関)による統計)
http://www.fao.org/faostat/en/#home

3) 中村賢一. 日本食生活学会誌, 2000; 11(1): 23-31.

4) お茶大図鑑, 主婦の友社, 2012

5) レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約
(一般社団法人全国公正取引協議会連合会)
http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/012.pdf

6) コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約・施行規則 対照表
(一般社団法人全国公正取引協議会連合会)
http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/010.pdf

7)栄養成分表示ハンドブック(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouji/kyouzai/files/eiyouseibun_handbook.pdf

8) 飲用乳の表示に関する公正競争規約及び同施行規則
(全国飲用牛乳公正取引協議会)
http://www.jmftc.org/about/kiyaku.pdf

 

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