この記事をまとめると、

① 水は、細胞から各臓器まで、さまざまなレベルで重要な役割を担っている

② 脱水が起こると、脳機能の低下や心拍数の増加など各器官に支障がでる

③ いつも通りの生活を送るために、適切な水分補給は必要不可欠

水は、体が正常に機能するために欠かせない大切な要素で、私たちの体のおよそ6割を占めます。日常生活では、意識して水分をとることが重要です。体内の水分量が不足しているかどうかは、喉の渇きによって知ることができます。ひとたび体内の水分バランスが崩れると、脱水や浮腫といった症状が現れるため注意が必要です。

 

1.人はなぜ水が必要か?
人の体の約60%を占める水は、体を構成する最大の要素です1)。体内の水分は、「体液」と総称され2)、細胞内液と、細胞外液(血漿、間質液)に大きく分けられます1)。体内で起こるすべての生化学反応に関わる「体液」は、栄養素や酸素の運搬、老廃物の排泄、細胞内外の浸透圧やpH値の維持、体温の調節を担っています1,2)

2.体内での水の役割

細胞

細胞の中には、生命活動を行う「原形質」と呼ばれる物質があります。原形質は、タンパク質、脂質、糖質などが、無機塩類とともに水に溶けた状態です。原形質では、さまざまな酵素反応が行われていますが、水は酵素が活性を持つために不可欠です3)

消化管

食べた物を吸収してエネルギーに換えるため、食べ物を分解して小さな分子にする「加水分解反応」が行われるのが消化管です2,3)。加水分解反応には、水が必要です。また、分解された成分は水に溶けて、吸収、運搬、排泄されます3)

腎臓

腎臓の機能は、血液をろ過して尿をつくり、体内の老廃物を体外へ出すことです2)。水は、老廃物を排泄するための溶媒としての役割を担っています。老廃物を十分に出し切るためには、1日あたり最低400〜500mLの排尿が必要です2)

脳、筋肉、心臓、血管

水は、脳や筋肉、心臓などが適切に機能するために重要です。体液には、電解質(イオン)が溶けています。カルシウムイオンやマグネシウムイオンといった電解質が細胞内外を行き来すると、脳では神経伝達が、骨格筋や心筋では収縮や弛緩が起こります。血管の平滑筋は、収縮と弛緩をくり返すことで血圧をコントロールしています2)

関節

骨と骨が接する部分は「関節軟骨」と呼ばれる組織で覆われています。水は、関節軟骨の70〜80%を占める主要な構成要素です4)

3.1日にどのくらい水を飲んだらよいか
1日に必要な水分量は、その人によって異なります。例えば、座っている時間の長い人では2.3~2.5L、立ち仕事が多い人や習慣的にスポーツを行う人などでは3.3~3.5L程度と推定されています1)。推定にとどまっているのは、年齢や性別、身体活動レベルに応じて、科学的に水分必要量を決めることは、現時点では難しいためです1)。欧米では、目安となる水分必要量を示す国もありますが、日本では明確な目安量は示されていません1)。厚生労働省と農林水産省が共同で策定した「食事バランスガイド」でも、水やお茶を体に欠かせないものと位置付けるにとどまっています5)。ただし、脱水による熱中症や脳梗塞、心筋梗塞等の病気を予防するために、厚生労働省では、現状よりコップ2杯分余分に飲むことを推奨しています6)

4.喉の渇きは、体からのサイン
喉の渇きは、細胞外液の状態と密接に関わっています。細胞外液は、細胞の大きさを一定に保つために、その浸透圧が常に一定でなければなりません。私たちの体には、体に水分が不足して細胞外液の浸透圧が上がると、喉の渇きを覚えるしくみが備わっています。喉の渇きを受けて水分補給をすることで、体に不足した水分を補うためです。特に、水分の不足が著しく、腎臓が尿を濃縮する機能だけでは体液の調節が間に合わないとき、このしくみは大変重要です7)

5.体液のバランスが崩れると
体液が不足すると、脱水が起こります。例えば、大量に汗をかいた場合に起こりやすいタイプの脱水では、水分が失われる割合がナトリウムの損失に比べて大きく、血液中のナトリウム濃度が上がります2)。特に、高齢者や乳幼児は、このタイプの脱水を起こすリスクが高いので注意が必要であり、適切な水分補給が重要です8,9)。 一方、細胞外液が過剰になると、浮腫(むくみ)を引き起こします。食塩のとりすぎやカリウム不足などが原因で、ナトリウムが正常に排泄できないときに起こります。細胞外液にナトリウムイオンが増え、水分がたまっている状態です2)

〈コラム〉

飲み物の種類によって、水分補給の質は変わる?

水と清涼飲料では、水分補給の質に差はあるのでしょうか? その答えを見いだすために、健康な人を対象に行われた実験があります。実験では、水分補給の選択肢が①水だけだった場合と②水以外の清涼飲料だった場合の、体重や尿量が調べられました。その結果、両グループで、体重や尿量といった脱水に関わる指標に違いはありませんでした。この実験では、水もそれ以外の清涼飲料も、同様に水分補給の役割を果たすことがわかりましたが10)、日々の生活では、状況に応じて適切な飲料を選ぶことも重要です。例えば、運動などで大量の汗をかいたときは、水分と一緒にミネラルや糖類も適切にとることが奨められているため、スポーツドリンクなどを活用するとよいでしょう11)

 

参考文献
1) 日本人の食事摂取基準(2015年度版)〈参考〉 水(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042639.pdf (最終アクセス日:2018年8月22日)

2) 渡邊昌監, 運動・からだ図解 栄養学の基本.マイナビ出版, 2016

3) 川瀬義矩, 水を科学する, 東京電機大学出版局, 2011

4) 村上輝夫, 生体医工学. 2006,44(4):537-544

5) 食事バランスガイド(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/division.html (最終アクセス日:2018年8月22日)

6) 「健康のため水を飲もう」推進運動(「健康のため水を飲もう」推進委員会)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html (最終アクセス日:2018年8月22日)

7) 水分補給のサイエンス—これからの水分補給を考える—. ILSI (International Life Sciences Institute). 2010
http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/BOOK/Newsletter/Water-2-NL_1006.pdf (最終アクセス日:2018年8月22日)

8) 中村伸枝編著, 小児看護学(看護学実践-Science of Nursing-), 株式会社ピラールプレス, 2016

9) 野溝明子著, 看護師・介護士が知っておきたい高齢者の解剖生理学, 秀和システム, 2014

10) Grandjean AC et al., J Am Coll Nutr. 2003, 22, 165-173

11) スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(日本スポーツ協会)
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guidebook_part4.pdf (最終アクセス日:2018年8月22日)

 

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