近年、多数の水分補給に関する研究により、喉の渇きのみを頼りに水分摂取量が適切かを推測することはできないことや、年齢や性別、食生活や健康状態によって必要な水分摂取量が異なること、カフェイン含有の有無にかかわらず、さまざまな飲料が水分補給に利用可能であることなどが明らかになってきました。水分補給に関する研究の専門家らは、これらの知見に基づいて議論を進め、健康増進のための水分補給の重要性を世界的に周知していく必要性に関する声明を発表しています。
水分補給研究を専門とする研究者らは、健康増進のための水分補給の重要性について科学的根拠に基づく推奨を行うよう、政府や関係機関に向けた声明を発表した。
「食事摂取ガイドラインの策定および運用の責任を担う政府や関連機関は、健康増進のために水分補給と水分摂取総量の重要性について科学的根拠に基づく推奨を行うべきである」
これは水分補給を専門とする研究者らの結論であり、「水分補給と健康に関する科学的コンセンサス(SCS)」初版の末尾に、この領域を代表する専門家らの署名とともに記載されています。
この声明は、2006年11月ILSI North Americaが主催した「水分補給と健康増進に関するシンポジウム」における議論を集約した科学的知見に基づくものです。このシンポジウムは、米国および欧州双方の専門家が参加したことにより、政府、学術界、産業界、専門機関などの注目を集めました。SCSとこのシンポジウムに関連する記事は、米国栄養学会誌(Journal of the American College of Nutrition)2007年10月号の増刊記事として発行されています。
専門家らは、適切な水分補給を行うことと、生命維持、健康増進、身体的・精神的活動の維持、職場の安全と生産性などとの間には科学的な相関性があるとの結論に達しています。
コンセンサスの声明には、次の6項目に関する記載がある。 | |
・ | 水分は生命維持に必要不可欠である。 |
・ | 喉の渇きという感覚に頼るだけでは、水分摂取量が適切かどうかを推し量ることはできない。 |
・ | 通常の食生活では、食品や飲料を通して水分を摂取することができる。 |
・ | 水、牛乳、茶、コーヒー、ジュース、ソフトドリンク、スポーツドリンクなどの各種飲料(カフェイン非含有/含有)により、必要な水分量を摂取できる。 |
・ | ある種の果物、野菜、スープ、乳製品などの食品からも、必要な水分量を摂取できる。 |
・ | 飲料や食品を摂取する際は、個人的な好みだけではなく、必要とされるカロリー、栄養素、水分などのニーズに応じて適切に選択する。 |
「水は生命および健康維持に不可欠なものであるが、一般的なガイドライン等では、水分補給や水分摂取についてあまり多く触れられていない」と話すのは、医師のMaxime Buyckx先生です。彼はコンセンサスの声明が採択された2006年度の「水分補給と健康に関するシンポジウム」を開催したILSI North Americaの技術委員会の議長も務めており、次のように話しています。「水分補給と健康に関する知見は急速に深まっています。一般的な栄養指導において身体活動に重点が置かれるようになったことと相まって、将来のガイドラインでは水分摂取の重要性を強調する必要性が指摘されています」
必要な水分補給量は、年齢、体格、身体活動レベル、健康状態、食事のパターン、気温や湿度などの環境によって変化します。そのため、このコンセンサスの声明では、飲料や食品を含む水分摂取総量に関する勧告において、ライフサイクルや特別な健康ニーズのほかに、地域や国際的な相違点を考慮すべきであるとしています。例えば、米国とカナダでは、水分摂取総量の約80%は飲料水やその他の飲料から、残りの20%は食品から摂取していることを示すデータをもとに、米国医学研究所(Institute of Medicine:IOM)が水分摂取量の推奨を行っています。この場合、19歳以上の男性では1日平均の飲料水と他の飲料を合わせた水分摂取量は3L(コップ約13杯)であり、女性では2.2L(約9杯)となります。
Buyckx先生は、水分補給研究の動向について「IOMが2004年に水分補給と水分摂取量に関する勧告を発表したのを機に、研究が盛んに行われました。2006年度開催のシンポジウムでは、近年の多数の研究を反映したコンセンサスが確立されました。これは同時に、今後さらに研究が必要な分野を検討するための基盤にもなりました」との見解を述べています。
参考文献
Hydration and Health Promotion. J Am Coll Nutr. 2007; 26: 529S-532S.
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