コーヒーやお茶は、世界中で古くから親しまれてきた飲料です。コーヒー豆や茶葉には、炭水化物やたんぱく質といった栄養素に加え、抗酸化作用をもつポリフェノールや、旨味のもととなるアミノ酸など、さまざまな成分が含まれています。私たちは、コーヒーやお茶を飲むことにより、それらの成分を体にとり入れることができます。

<Contents>

1. コーヒーとお茶の基本情報
コーヒーとは
お茶とは

2. コーヒーとお茶に含まれる成分

3. ポリフェノール
コーヒーのポリフェノール「クロロゲン酸」
お茶のポリフェノール「カテキン」
《コラム》「タンニン」って何?

4. カフェイン

5. アミノ酸
コーヒーの香りに関わる「含硫アミノ酸」
お茶の旨味や安らぎ感に関わる「テアニン」

1.コーヒーとお茶の基本情報

コーヒーとは
コーヒーは、エチオピア原産の植物です。私たちがよく知る褐色のコーヒー豆は、熟したコーヒーの果実から種子をとり出し、焙煎したものです。それを挽いて煮出したものが、飲料としてのコーヒーです1)

お茶とは
お茶は、中国原産の植物です。飲料としてのお茶(緑茶)は、茶葉を蒸して乾燥させ、煮出したものです。ウーロン茶や紅茶も実は同じ茶葉が原料ですが、蒸した後に発酵させることで、全く別の風味を生み出します。お茶は世界中で親しまれている飲料であり、緑茶は茶飲料のなかでも最もよく飲まれているといわれています2)

2.コーヒーとお茶に含まれる成分
コーヒー豆や茶葉には、炭水化物やたんぱく質のほかに、ポリフェノール、カフェイン、アミノ酸などが含まれており、茶葉の種類、コーヒー豆や茶葉の加工法によって成分が変化します3, 4)。また、煮出したコーヒーやお茶にこれらの成分が溶け出すことで、味や香りが特徴づけられます。近年、化学の進歩に伴って、コーヒーやお茶の成分に関する研究が盛んになり、コーヒーやお茶の成分と、それらの機能との関係についても明らかになってきました3, 5)

3.ポリフェノール
ポリフェノールは、赤ワインに多く含まれることがよく知られていますが、コーヒーやお茶にも含まれています。飲料は、ポリフェノールに富むものが比較的多く、特にコーヒーやお茶は日本人のポリフェノールの主要な摂取源になっています6)。ポリフェノールは、さまざまな植物に含まれる成分で7)、抗酸化物質の一つです。抗酸化物質には、活性酸素の発生や働きを抑制したり、活性酸素そのものをとり除いたりする働きがあります。活性酸素は、微量ならば、細菌やウイルスを殺すなど体を守る働きをしますが、大量につくられると、過酸化脂質と呼ばれる物質をつくり出し、健康へ悪影響を及ぼすことが知られています8)

コーヒーのポリフェノール「クロロゲン酸」
クロロゲン酸は、コーヒーの褐色や苦味、香りのもとになる成分で3)、焙煎する前のコーヒー豆に多く含まれています7)。焙煎の仕方によって違った香味のコーヒーが楽しめるのは、焙煎によって起こるいくつもの複雑な化学反応があるためです。そのなかでもクロロゲン酸の化学反応は、コーヒーらしい苦味をつくり出す重要な反応といえます。クロロゲン酸は、焙煎による化学反応によって、焙煎後のコーヒー豆では含有量自体は減りますが、豆を煮出すことでコーヒー中に溶け出すため、レギュラーコーヒー1杯に15〜325mg含まれます7)。コーヒーに含まれる総ポリフェノール含有量は、同量の赤ワインに含まれる総ポリフェノール含有量と同程度といわれています3)

お茶のポリフェノール「カテキン」
カテキンは、お茶の渋みのもとになる成分です5)。緑茶には、エピガロカテキンガレートを中心に、主に4種類のカテキン類が含まれています。これらのカテキン類は、抗酸化作用以外にも、病原菌や食中毒菌などに対する抗菌作用もあります。また、同じ茶葉が原料であるものの、ウーロン茶や紅茶でエピガロカテキンガレートの含有量が少ないのは、茶葉を発酵させる過程でテアフラビンなどのほかの種類のポリフェノールに変化するからです7)
 

<コラム>

「タンニン」って何?

緑茶のカテキン類や紅茶・ウーロン茶などのポリフェノールは、「タンニン」とも呼ばれます。タンニンの語源が「皮なめし」であるように、もともとタンニンは皮革工業に必須の素材でした。皮革産業をベースに「タンニン=ポリフェノール」という概念が広まっていた時代もありますが、タンニンの定義はこれまでに何度も変わり、実は今でも明確ではありません。近年、タンニンの生理作用や、食品加工の過程でつくられる多種多様なポリフェノールの、化学と機能に関する研究が注目されるようになり、木材化学などの分野で従来用いられてきた「タンニン」の定義では対応が難しくなってきました。このような背景もあり、国際的にも「タンニン」ではなく「ポリフェノール」という言葉を用いる機会が増えてきています7)


4.カフェイン

カフェインは、コーヒーやお茶の苦味のもとになる成分です。特に「コーヒーの苦味」というイメージが強いかもしれませんが、コーヒーの苦味成分としてはわき役的存在であり、気持ちをすっきりさせ、「また飲みたい」と思わせるおいしさを生み出す成分でもあります9)。カフェインは、構造的には、眠気を覚ましたり、熱を冷まし痛みを抑えたりする作用をもつ「アルカロイド」という化合物の仲間に分類されます3)。カフェインを意識的にとろうとして、眠いときにコーヒーを飲むことも多いかもしれませんが、カフェインはとりすぎると健康を害する恐れがあることが知られています。コーヒーの場合、1日3〜5杯(カフェイン400mg程度)であれば健康への影響はないといわれていますが、コーヒーやお茶を飲む際は、下記の表や食品表示を参考にして、過剰摂取とならないように気をつけることが大切です。エナジードリンクや眠気覚まし用飲料などを利用しているときは、総カフェイン摂取量を意識して飲料の種類を選ぶようにしましょう10)

表 食品中のカフェイン濃度


カフェインの過剰摂取について(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html

5.アミノ酸
アミノ酸は、たんぱく質をつくる約20種類のアミノ酸がよく知られていますが7)、このうちのいくつかは、コーヒーにも含まれ、その香りに関わっています9)。また、自然界には、そのほかにも多くの種類のアミノ酸が存在しています。そのなかにはお茶の旨味などに関わるものもあります7)

コーヒーの香りに関わる「含硫アミノ酸」
コーヒーに含まれるアミノ酸は、コーヒーの独特の香りを生み出します。コーヒーの生豆には、メチオニンやシステインといった「含硫アミノ酸」の割合が、ほかのアミノ酸に比べて圧倒的に多いのが特徴です。含硫アミノ酸とは、硫黄原子を構成要素にもつアミノ酸のことです。コーヒーの生豆を焙煎すると、コーヒー豆に含まれる糖類と含硫アミノ酸が反応して、「2—フルフリルチオール(FFT)」という香り成分が生まれます。コーヒーの香り成分は1000種類以上あるといわれていますが、全てがいわゆる「コーヒー」の香りとは限りません。複数の香り成分が組み合わさってバランスをとることで、独特な香りを生み出します。そのなかでFFTは、主にコーヒーをコーヒーらしくしている香り成分といわれています9)

お茶の旨味や安らぎ感に関わる「テアニン」
緑茶に含まれるアミノ酸は、緑茶の旨味を生み出します。そのなかでも「テアニン」というアミノ酸が緑茶には特に多く含まれ、代表的なお茶の旨味成分として知られています。テアニンは、初期の若芽を摘みとる高級茶ほど多く、旨味あふれる味わいを醸し出します。テアニンのほかにも、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸も多く含まれ、緑茶の味に関与しています。お茶には神経を高揚させるカフェインが含まれていますが、お茶を飲むとほっとした気分になる場合も多いかもしれません。これは、テアニンがカフェインの作用とは逆に、交感神経の働きを抑えてリラックスさせる効果があるためと考えられています5)

コーヒーやお茶の成分は、味や香りに関わるだけではなく、それ自体が生理作用をもつものも多くあります。コーヒーもお茶も、私たちの生活には欠かせない飲料ですが、それらに含まれる成分のなかには過剰摂取に注意が必要な成分もあるので、日々の生活に上手にとり入れていきましょう。

参考文献
1) 「健康食品」の素材情報データベース、コーヒー(国立健康・栄養研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail1703.html(最終アクセス:2017年9月8日)
2) 「健康食品」の素材情報データベース、茶(国立健康・栄養研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail491.html(最終アクセス:2017年9月8日)
3) 全日本コーヒー協会 
http://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/library/caffeine(最終アクセス:2017年9月8日)
4) 日本食品標準成分表2015年版(七訂)、第2章 日本食品標準成分表、16.し好飲料類(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/02/16/1365343_1-0216r9.pdf (最終アクセス:2017年9月8日)
5) 森田明雄ほか編, 茶の機能と科学, 朝倉書店, 2013
6) Taguchi C et al., J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2015, 61, 338-44
7) 食品機能性の科学編集委員会編, 食品機能性の科学, 産業技術サービスセンター, 2008
8) e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/(最終アクセス:2017年9月8日)
9) 旦部幸博著, コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか, 講談社, 2016
10) カフェインの過剰摂取について(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html (最終アクセス:2017年9月8日)

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