この記事をまとめると、

① 小児は、気温が高いと体温が上がりやすい

② 体の水分の出入りが大人よりも多く、水分も失いやすい

③ 自由に水分補給ができる環境を整え、きちんと実行させることが大切

小児の体は、大人に比べて水分の占める割合が多いにもかかわらず、脱水症を起こしやすい特徴があります。それは、体温を調節する能力が未熟であり、尿や汗によって、体重に対して多くの水分を失ってしまうためです。脱水症を予防するためには、保護者の管理や小児自身の喉の渇きに従って、適切な水分補給が必要です。特に運動時は、状況に応じて水分に加え塩分の摂取も考慮し、暑すぎないかなど環境にも配慮することが大切です。

 

1.小児の体温調節機能は未発達
小児の体温は36.5〜37.0℃であり、大人より高い傾向にあります1)。また、小児は、発汗機能が未発達であり、体温の変動が大きい、いわゆる「熱しやすく冷めやすい」という体の特性を持ちます1)。特に、環境温度が皮膚温度より高いとき、深部体温が大人よりも上がりやすくなります2)

 

2.小児の体の水分は出入りが多い
成人は体に占める水分が60%程度ですが、小児のなかでも特に新生児や生後3ヵ月くらいの乳児は、体に占める水分が70〜80%と多いのが特徴です1)。また、体内の水分は、血漿と組織液からなる「細胞外水分」と「細胞内水分」に分けられ、大人ではその割合が1:2とされています1)。それに対し、乳児では低月齢であるほど細胞外水分の割合が大きく、新生児では細胞外水分と細胞内水分の割合が1:1であることが知られています1)。 小児は、体内に占める水分だけでなく、体に出入りする1日当たりの水分(水分出納)も大人をはるかに上回ります1)。水分出納は、大人では1日に細胞外液の約15%であるのに対し、乳児では細胞外液の約50%にものぼります1)。また、乳児は、腎臓で尿を濃縮する能力が大人の半分程度のため尿が多く、不感蒸泄(呼気や皮膚から失われる水分)によって失われる水分も大人の約3倍(体重1kg当たり)といわれています1)
体内水分および水分出納の多い小児の体は、感染症などによる哺乳量の減少や、下痢や嘔吐などの症状による影響を受けやすく、水分を欠乏しやすいといえます1)

 

3.小児の脱水症
脱水症とは、体の水分が欠乏した状態であり、体液中の電解質(ナトリウムイオン)の濃度などにも異常をきたします1)。脱水症は、血液中のナトリウム濃度によって、等張性脱水症、高張性脱水症、低張性脱水症の3つに分けられます(表1)1)。小児の脱水症のうち、等張性脱水症が95%と大半を占め、高張性脱水症は5%、低張性脱水症は極めて少ないとされています1)

脱水症の程度は、水分を失うことでどのくらい体重が減少したかにより、軽度、中等度、重度に分類されます1)。例えば乳児では、体重減少が4〜5%で軽度、6〜9%で中等度、10%以上で重度と診断されます。脱水症の症状は、全身状態、皮膚の色や弾力性、目のくぼみ、尿量などに現れます。軽度から重度に進行するに従い、全身状態は正常からぐったりとしていき、皮膚は蒼白から浅黒く斑点状に、目はくぼみ、尿量は減少していきます。乳児では、頭のくぼみが顕著になります1)

軽度の脱水症の場合は口から補液を少量ずつ頻回に与えて対処しますが、中等度以上や口から補液を摂取できない場合は、輸液療法などの医療処置が必要です1)

表1. 脱水症の種類

脱水症 特徴
等張性脱水症 水分とナトリウムを同程度失う。小児の脱水症の約95%を占める。
高張性脱水症 水分をナトリウムに対して多く失う。小児の脱水症の5%を占める。
低張性脱水症 水分に対してナトリウムを多く失う。小児の脱水症としては少ない。

出典:中村伸枝編著, 小児看護学(看護学実践-Science of Nursing-), p.188-189,
株式会社ピラールプレス, 2016より作表

 

〈コラム〉

発症頻度は少なくても、知っておきたい脱水症のタイプ

小児の脱水症の多くは等張性脱水症ですが、高張性脱水症や低張性脱水症もまれに起こります。高張性脱水症は、ナトリウムに対し水分が多く失われる状態で、細胞内の水分が減少します。脳細胞の水分も減るため、全身けいれんなど中枢神経症状を起こしやすくなります。 低張性脱水症は、水分に対しナトリウムが多く失われることで血液の量が少なくなり、脱水症状は顕著です。下痢のときに、番茶や白湯などナトリウムを含まない水分を与え続けると起こることがあるため、注意が必要です1)

 

4.小児への水分補給で知っておきたいこと
体内の水分バランスを維持するために、水分を摂取する行動の原動力となるのが「喉の渇き」です3)。小児も大人と同じように喉の渇きを覚えるため、喉の渇きを目安に水分を摂取することで、発汗量に見合った水分を補給することができます3)。大人は、小児が喉の渇きを覚えたときに自由に水分補給できるよう、環境を整えたり、指導したりすることが重要です3)。ただし、新生児や乳児は、喉の渇きを訴えたり、水分摂取を求めたりすることができないので、保護者など周囲の大人の管理が必要です1)
運動時の水分補給には、5〜15℃に冷やした、糖分や塩分を含む飲料が効果的です3)。基本は飲みやすい飲料を与えることですが、糖分を多く含むものは胃にたまりやすく、糖分のとりすぎにもつながるので注意が必要です3)。また、真夏の炎天下など高温環境での運動は、熱による負荷が大きくかかります。運動時は、適切な水分補給を心がけるのと同時に、外の環境も考慮し、特に持久力が必要な運動は避けたほうがよいでしょう3)。 小児の水分補給には、年齢に応じて、大人の管理や指導が必要です。体温や体液バランスの調節が未熟であることや、脱水症を起こしやすいことを十分理解した上で、大人自身が感じる暑さや喉の渇きだけを指標にせず、こまめに計画的な水分補給を心がけましょう。

 

参考文献
1) 中村伸枝編著, 小児看護学(看護学実践-Science of Nursing-), 株式会社ピラールプレス, 2016

2) 熱中症環境保健マニュアル2018(環境省)
http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf(最終アクセス日:2018年9月3日)

3) スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(日本スポーツ協会)
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/nechusho_yobou_guidebook_2018.pdf(最終アクセス日:2018年9月3日)

 

関連記事
あなたの毎日に必要な水分補給。
高齢者への水分補給で気をつけるポイント。

 

ダウンロード資料
適切な水分補給を心がけましょう!
体液の役割と運動時の水分補給