この記事をまとめると、

① 高齢者は、飲食の量が減って水分不足になりがち

② 水分と一緒に電解質も失ったときは、スポーツドリンクの利用もgood

③ 命に関わる脱水症。喉が渇かなくても水分補給を

高齢になると、体温や体液のバランスを調節する機能が低下し、脱水症のリスクが高まります1,2)。高齢者の脱水症は、生命に危険を及ぼす可能性もあり、持病の有無や使用している薬の特性などを考慮した水分補給が求められます2,3)

 

1.高齢者の体の特性
私たちの皮膚には温度センサーがあり、暑さを感じるとその信号が脳に伝わります1)。脳は皮膚の血流量や汗の量を増やすことによって、体の外へ熱を放ち、体温を下げようとします1)。ところが、高齢になると、皮膚の温度センサーが鈍くなり、暑さを感じにくくなります1)。したがって、皮膚の血流量や発汗量の増加が遅れ、体に熱がたまりやすく、深部体温が上がりやすくなります1)
若年者と比べると、高齢者は、体液量が少ないことも特徴です1)。水分を蓄えている筋肉が減り、水分を含まない脂肪の量が体全体に対して多くなるためです2)。また、腎臓機能の低下に伴い、尿を濃縮する能力が低下し、尿量が増えることも一因です2)。体液量が減少すると、体の外へ熱が出にくくなり、体温調節機能の低下につながります1)

 

2.高齢者の脱水症の原因
高齢者に多い脱水症は、食欲が低下し、食べ物や水分を口から摂取できなくなることが原因と考えられています2)。摂食量が低下する要因には、病気による食欲低下だけでなく、食事が面倒になることや、一人での食事はつまらないといった精神的な理由も含まれます2)
また、高齢になると喉の渇きを自覚しにくくなり、自分で水分を摂取する機会が減るため、脱水症を起こしやすくなります1)。認知症を患っている場合は、自律神経の働きや判断力の低下から、脱水症になりやすいうえに、喉の渇きや食欲不振などの脱水症状を自覚できないため、より注意が必要です3)。そのほか、下痢や嘔吐の症状がみられる場合、腎臓疾患がある場合、利尿薬を使用している場合も、脱水症のリスクが高まります2)

 

3.高齢者に多いタイプの脱水症とは
脱水症は、失われる水分と電解質の割合によって、次の3つのタイプに分けられます3)

1. 等張性脱水症(水分と電解質を同程度失う)
2. 高張性脱水症(電解質に対して水分を多く失う)
3. 低張性脱水症(水分に対して電解質を多く失う)

高齢者の脱水症の多くは等張性脱水症といわれています3)
脱水症の症状は、タイプによって異なります3)。高張性脱水症は、喉や口の中の渇きが特徴的であるのに対し、低張性脱水症はそれらがなく、食欲不振、嘔吐、めまいなどを起こします3)。等張性脱水症では、高張性脱水症・低張性脱水症のどちらの症状も現れます3)。等張性脱水症および低張性脱水症では、水分だけでなく電解質も失われているため、水分および電解質の適切な補給が必要です3)。電解質を効果的に補給するためには、スポーツドリンクを利用するのも一つです2)。ただし、糖尿病を患っている場合などは、糖分のとり過ぎにつながる可能性もあるので、スポーツドリンクの利用には注意が必要です2)

 

4.脱水症が命取りになる可能性も
脱水症を起こすと、血液は濃くなり、血栓(血液のかたまり)ができやすくなります3)。血栓が脳や心臓の血管に詰まると、脳梗塞や心筋梗塞を発症します3)。また、脱水症によって体内の電解質のバランスが崩れると、神経細胞に異常を来します3)。その結果、おかしな言動や、幻覚や幻聴の症状が現れることがあり、これをせん妄といいます3)。脱水症が原因で起こるせん妄は発見されにくいのが特徴です3)。せん妄が脱水症をさらに悪化させ、命を失うこともあります3)

 

5.高齢者の水分補給のヒント
脱水症は、発症後の対応からではなく、事前の予防が重要です3)。たとえ喉が渇いていなくても、1日を通じて意識的に水分をとるようにし、介護者もそのように勧めましょう1)。飲み込むのが難しい場合は、とろみをつけたり、ゼリータイプの飲料を使ったりするのもよい方法です2)。また、入浴中は、汗をかきやすく水分が失われがちです1)。入浴前後に水分をとることや、湯温を40℃以下にして長湯をしないといった配慮も必要です1)。特に、認知症を患っている場合は、介護者等、周りの人が常に気を配らなくてはなりません3)。また、高齢者でも運動習慣が身についていると、体温調節の機能を保てることが知られています1)。日常的に運動を行うのもよいでしょう1)
脱水症は、場合によっては命に関わる重篤な症状ですが、正しい水分補給で未然に防ぐことができます。体の特性上、高齢者は脱水症になりやすいことを認識し、高齢者自身または高齢者の介護者は、脱水症の予防に重点をおいた水分補給を心がけましょう。

 

参考文献
1) 熱中症環境保健マニュアル2018(環境省)
http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf (最終アクセス:2018年9月5日)

2) 野溝明子著, 看護師・介護士が知っておきたい高齢者の解剖生理学, 秀和システム, 2014

3) 防ごう!! 守ろう!! 高齢者の「脱水」(公益財団法人日本訪問看護財団)
http://www.jvnf.or.jp/top/dassui.pdf (最終アクセス:2018年9月13日)

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