近年真夏日や猛暑日が増え、熱中症による脱水症を防ぐために、意識的に水分をとるようになった人も多いのではないでしょうか。実は、脱水症は暑い気候だけで起こる症状ではありません。寒冷地で運動をするときなど、寒い気候でも脱水症は起こります1,2)。また、標高の高い場所では、喉が渇いていることに気付きにくく3)、脱水症のリスクが高まります。寒冷地や高所などでは、状況に応じて十分に水分補給をすることが重要です。


寒冷地での運動
寒冷地での運動は、脱水症を引き起こす要因が意外に多くあります。まず、寒いので喉が渇きにくくなり水分摂取量が減る一方で、利尿が促進されます2)。それに加え、トイレが面倒で水分を控えることや、厚着で汗をかいてもすぐに体温が下がるため水分摂取の意欲が下がることも一因です2)。私たちの体は、寒さによって体温を奪われるのを防ぐために、寒い所で末梢血管を収縮させ、皮膚温を下げています1)。しかし、このときに体が脱水状態だと手足の血行がさらに悪くなり、特に氷点下の環境では凍傷を負いやすくなります1)。寒冷環境でも、体重の2%以上の水分を失わないよう、積極的に水分をとることが大切です2)

標高の高い場所
標高の高い場所は脱水症のリスクを高めます。高所で呼吸が大きく速くなった経験はありませんか。この体の変化により、呼吸をするときに肺から失われる水分が増えます3)。また、高所の空気は乾いており、汗をかくことで多くの水分が失われます3)。ところが、高所で脱水症を起こしても、地上ほど強く喉の渇きを感じません3)。そのため、高所では意識して十分な量の水分をとる必要があります3)。高所登山者であれば、最低でも1日3~4リットルの水分を摂取する必要があるといわれています3)

寒冷地や標高の高い場所は、日常生活とは異なる環境です。そこでは身を守るための合理的な行動をとることが重要です。意識的な水分補給はその一つといえるでしょう。

参考文献
1)山本正嘉著, 登山の運動生理学とトレーニング学, 東京新聞出版局, 2016
2)鈴木志保子著, 理論と実践スポーツ栄養学, 日本文芸社, 2018
3)増山茂, 高所医学総論(日本登山医学会)
http://www.jsmmed.org/info/pg50.html (最終アクセス:2018年10月11日)

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