2017年、日本コカ・コーラは設立60周年を迎えた。現在、日本では50以上のブランドから800種類以上のコカ・コーラ社製品が販売されているが、グローバルな視点から見てもこれほどまでに飲料製品のイノベーションが活発な国・地域はほかにないという。日本コカ・コーラでマーケティング&ニュービジネス部門を統括するカリル・ヨウンスが、社史を振り返りながらその理由をひもとく

 日本の「コカ・コーラ」の歴史は大正時代まで遡る。高村光太郎の詩集『道程』内に収録された『狂者の詩』に“コカコオラ”の記述が見られるほか、芥川龍之介が佐佐木茂索にあてた書簡にも“コカコラ”としてその名を確認することができるのだ。
 しかし当時、日本で飲まれていた「コカ・コーラ」はあくまで輸入品だった。日本で「コカ・コーラ」の製造と販売が本格的に始まったのは、「コカ・コーラ」の原液供給元として日本飲料工業株式会社(現在の日本コカ・コーラ株式会社)が設立された1957年(昭和32年)のことである。
 それから60年。創業当初は「コカ・コーラ」「ファンタ」という炭酸飲料のみだった製品ラインナップも大幅に増え、ミネラルウォーター「い・ろ・は・す」や、緑茶の「綾鷹」、コーヒー飲料「ジョージア」、スポーツ飲料「アクエリアス」など、炭酸飲料以外のブランドも人気製品として定着している。現在日本コカ・コーラが提供しているのは、50ブランド以上、800種類以上の製品にのぼる。それにしても、なぜこれだけのラインナップが揃うようになったのか。日本コカ・コーラのマーケティング&ニュービジネス部門の副社長であるカリル・ヨウンスは「日本の消費者の行動特性が重要な要因の一つではないか」と分析する。

 

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清涼飲料「コカ・コーラ」に始まり、年々ラインナップを増やし続けてきたコカ・コーラ社製品。
嗜好やシーンに合わせた製品が揃っている


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トクホ・機能性表示食品には、「おなかの調子を整える」
「血圧が高めの方に」「緊張感の軽減」など、効果・効能の表示がされている

「海外の目から見れば、日本の市場にこれだけ充実した製品ラインナップがあることは驚きかもしれませんが、日本の消費者にとってはごく普通のことです。実際に日本のお客様と接してみると、日本で多様な製品バリエーションが展開されているのは普通のことだということが分かります。日本のお客様にはさまざまな飲料ニーズがあり、幅広い適切な製品群でそれにお応えしなければなりません。また、トレンドに非常に敏感で、常に製品に新しさを求めています。同時に、製品に対しては、妥協のない最高の品質と、意外性があり、どこかほかと違うと感じられる差別化を好む傾向があります。この厳しい市場環境で成功を収めるために、日本のコカ・コーラシステムは世界でも類を見ない独自の進化を遂げなければなりませんでした」
日本のコカ・コーラシステムは、消費者の期待に応えるために製品開発力やマーケティング能力の強化が必要とされたが、それによって長年にわたる持続的な需要に応えられるようになった。
「コカ・コーラ社は200以上の国と地域で事業を展開していますが、イノベーションでは日本は上位に位置すると言って差し支えないでしょう。よく職人気質といわれる日本人は、何事においても完璧を目指す精神がその文化の中に根付いています。それは個人の自己研鑽にとどまらず、製造業、農業、商業、サービス業など、商業的にも産業的にもイノベーションをもたらしています」
 日本コカ・コーラは、60年に及ぶ独自のイノベーションのサイクルの中で、日本特有の飲料を次々に生み出した。その先駆けとなったのが、1975年に発売された缶コーヒーの「ジョージア」だ。「ジョージア」はロングセラーブランドとして進化を続け、現在では国内のみならず、海外の一部市場でも人気のブランドに成長した。
「1975年に『ジョージア』を発売してから、80年代、90年代、2000年代と時代が進むごとに日本コカ・コーラの飲料製品のラインナップは飛躍的に増加してきました。たとえば、1983年には『アクエリアス』が、1993年にはブレンド茶の『爽健美茶』が、2007年には『綾鷹』が、2009年には『い・ろ・は・す』が発売されています。お客様のライフスタイルの多様化に従い、満たすべきニーズも多様化していったことが、このような成長を促してきました。また、製品がお客様の生活に浸透する上では自動販売機、スーパーマーケット、コンビニエンスストアといった販売チャネルの急速な発展が大きな役割を果たしています」