生物多様性と里地里山の暮らしcontentsheader


里地里山の暮らしは生物多様性そのもの
-今年は生物多様性年ということで、改めて自然保護、豊かな自然を維持することが 注目されています。
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竹田: 私が生物多様性を意識したのはコメの有機農業を手がけたときでした。「田んぼの水はどこから来ているんだろう」と田んぼの外に目 をやってみたのです。たどってみると水は山から引かれていました。そして水路のまわりにいろいろな生きものが生息して、全部がつながっていました。そのと き「なんだ、里山の暮らしそのものが生物多様性だったんじゃないか」と気づいたのです。
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宮林: 「生物多様性」というと難しく受け取るかたも多いでしょうから、「生きもののつながり」といったほうがわかりやすいかもしれませ ん。要するに、生きものは、すべて役割を持ちながらつながっているということ。太陽の光から植物が栄養を作り、草食動物が食べ、それを肉食動物が食べ、や がて動物が土に帰って、土の中の微生物によって分解され、土の栄養になってまた植物の体になる。こういう循環のなかに植物・動物・微生物など多様な生きも の同士がつながっているわけです。ところが、そのつながりのどこかが切れると多様な循環が回らなくなり、いろいろなつながりが壊れてきます。
竹田: 私は佐渡島のトキを自然に放す相談を受けたことがあります。日本のトキは絶滅してしまい中国のトキを繁殖させて自然に帰そうとし ていますが、そのために何をしなくてはいけないのかを調べてみました。するとトキが食べるのは、サワガニ、ドジョウ、ミミズなど、昔の農村ではよく見かけ る生きものばかり。つまりトキを自然に帰すには、昔の農村を再現する必要があったわけです。
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宮林: 昔の農村、里地里山では、多様な生きものが暮らしやすい環境があったんですね。それは人間が自然を豊かにしていたという面もある んです。例えば農家の人が「ミミズが少ないな」と感じたときは、畑の土に枯葉を混ぜたんです。そうすると自然にミミズが増えて土が元気になり、生きものも 増える。自然と共存する知恵、自然を豊かにする知恵を持っていたんですね。化学肥料に頼らない知恵が、日本の里地里山に見られる。そのことによって、豊か な生物多様性を作ってきたんだと思います。
竹田: 生物多様性を作ったのは誰かといえば、もちろん生きもの。でも人間も生物多様性に貢献していたんですね。
宮林: そう。自然の中に住む野生の動植物だけでなく、そこに暮らす人間や家畜も生物多様性を守り、育てる存在なんです。かつては人間と 家畜が暮らす空間と、野生の動物たちが住む空間は明確に区分され、お互いに犯さないとする一定の共存関係がありました。垣根が今ほど高くなかったからです ね。ところが戦後、生産力を拡大することを優先した産業構造の発展によって、自然を開発する論理が行きすぎてしまい、開発か、保護か、というように自然と 人間社会の対立関係が強くなってしまった。本来、人間は自然の一員として、共存しながら暮らしてきたところがあり、自然との関係性を取り戻す必要があるんです。
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1.生物多様性と里地里山の暮らし
2.自然環境への働きかけと恵みの享受
3.自然を「レンタル」しているということ
4.子どもたちへのメッセージ