いまやすっかり、日本にも定着した感のあるハロウィン。しかし、その由来や歴史についてはというと、まだまだ知られていないことばかりです。もっとハロウィンのことを知りたい!……という方々のために、10個のトリビアをご紹介します。

文=アン・カーティス

 

[トリビア1]

ハロウィンは、「死の神」のご機嫌を取るために始まった!?

[解説]
ハロウィンの起源は、今から2,000年以上前、現在のアイルランドのミーズ州あたりで古代ケルト人が行っていたお祭り「サムハイン」にあるとされています。ケルト人は、1年の区切りである秋の終わり=冬の始まりにはこの世とあの世の境界が取り払われ、その年に亡くなった人々の魂はあの世に渡り、先祖の霊はこの世に帰ってくると信じていました。しかし、あの世とこの世がつながるということは、悪霊がこの世に舞い戻ってきて悪さをする可能性もあるということ。それを恐れた人々が、死の神をなだめるために「サムハイン」という儀式を始めたというわけです。

現代のミーズ州では、古くからの伝統と21世紀の文化が融合した盛大なお祭り「スピリッツ・オブ・ミーズ・ハロウィン・フェスティバル」が開催されます。見どころの一つは、古代ケルト文化の儀式を再現したたいまつ行列。他にも、アイルランドの人々は、かがり火をたいたり、パーティーゲームで遊んだり、伝統的な食事をいただいたりしてハロウィンを楽しみます。コイン、ボタン、指輪などを忍ばせたフルーツケーキがふるまわれる習慣がありますが、昔は、ケーキの中に指輪を見つけた若い女性は、次の年に結婚すると信じられていました。こんなロマンチックな言い伝えがあったなんて、ちょっと意外ですね。

 

[トリビア2]

世界には大人向けの“とんでも怖い”ハロウィンがある。

[解説]
世界には、大人向けの盛大なハロウィンイベントを開催している都市があります。たとえば、米国のニューオーリンズ、ロサンゼルス、ニューヨーク、タイのバンコク、フランスのリモージュなどです。これらの都市では、街中の仮装パレードやナイトクラブでのパーティーなど、“恐怖”をテーマにした刺激的でスタイリッシュなイベントが見どころとなっています。より本格的な恐怖をお求めの方には、米国マサチューセッツ州のセイラム(17世紀に魔女狩りが行われたことで有名)や、東欧のルーマニア(吸血鬼ドラキュラのモデルとされるワラキア公ヴラド3世ゆかりの古城があります)のハロウィンがおすすめです。

 

[トリビア3]

ハロウィンとそっくりな「死者の日」という祝日がある。

[解説]
メキシコをはじめとするラテンアメリカ諸国では、11月2日は「死者の日」という祝日です。「死者の日」にも甘いお菓子がふるまわれる仮装パーティーが開催されたり、死にまつわるものや死にまつわる場所に怖くも楽しげな装飾がなされたりするために、ハロウィンと混同されがちですが、この二つの祝日はまったくの別物。ハロウィンは死霊に対する恐怖心を取り除き、エンタテインメント性あふれる行事へと転じたものですが、「死者の日」は先祖や亡くなった家族のことを思い、彼らの魂を家に呼び戻す日なのです。日本の「お盆」と同様の習慣ですね。

ラテンアメリカからの移民が増えるにつれ、「死者の日」の伝統は米国でも広がりつつありますが、もともとはメキシコの先住民族であったアステカ族が何千年もの間受け継いできた風習です。しかし、ラテンアメリカ諸国にカトリックの教えが根付いていく中で、カトリックの「諸聖人の日」(11月1日)と「諸魂日」(11月2日)の時期に合わせて行われるようになりました。次のトリビアで触れますが、このタイミングも、ハロウィンと混同しやすい理由の一つと言えるでしょう。

「死者の日」の広場

 

[トリビア4]

「ハロウィン」の語源は、「All Hallows’ Eve=諸聖人の日の“前夜”」。

[解説]
ハロウィンという呼称は、「All Hallows’ Eve」(オール・ハロウズ・イブ)が縮まったもので、「諸聖人の日の前夜」という意味です。カトリックでは8世紀以来、10月31日~11月2日の3日間を殉教者や聖人を含む亡くなった人のことを思い起こす期間として定め、それぞれの日を「All Hallows’ Eve」「諸聖人の日」「諸魂日」と名付けました。キリスト教の普及とともに、古代ケルト人の祭りはカトリックの暦の中に取り込まれ、現代のハロウィンとして確立していったのです。

 

[トリビア5]

米国での「トリック・オア・トリート」の経済効果は数億円規模。

[解説]
「トリック・オア・トリート」といえば、仮装した子どもたちが、「お菓子をくれなきゃ、イタズラするぞ!」と近所の家を訪ね回る習慣。米国では20世紀前半に始まっていますが、その起源はやはり、ヨーロッパの伝統の中にあります。「諸聖人の日」には、貧しい人たちが豊かな隣人の家を訪れて、その家の亡くなった人のために祈る見返りとして、「ソウル・ケーキ」と呼ばれるお菓子を受け取る習慣がありました。時代が下るとともに、その主役は子どもたちとなり、家々を回って食べ物やお小遣いをもらう楽しいイベントへと変化していったのです。

米国に「トリック・オア・トリート」を伝えたのは、「諸聖人の日」の伝統を受け継いできたアイルランドやスコットランドの移民たちでした。第二次世界大戦中は砂糖が配給制になったために、数年間中断されましたが、その後復活。近年その経済効果は、なんと、年間数億円相当にもなるのだそうです。

 

[トリビア6]

フィリピンでは迷える魂のために讃美歌を歌う。

[解説]
フィリピンのパンパンガ州の人々は、11月2日の「諸魂日」に先立ち、10月29日から31日まで「パンガンガルルワ」と呼ばれるお祭りを行います。伝統的には、子どもたちが家々を回って、煉獄(カトリックの教義で、死後天国へ行くまでの間に多くの人が経るとされる清めの期間)にいる魂のために讃美歌を歌い、特別ミサのための施しを集めていました。しかし最近では、フィリピンにも「トリック・オア・トリート」の習慣が浸透し、子どもたちが仮装してお菓子をもらい歩く行事に変わりつつあります。

 

[トリビア7]

仮面の着用は、仮装のためではない。

[解説]
ハロウィンの原型となる祭りを行っていた古代ケルトの人々は、この世とあの世の境界が取り払われるとき、この世に戻ってきた死霊に悪さをされることを恐れていました。だから、日没後に外出する際には、死霊から自分の素性を隠し、仲間(=死霊)であると勘違いさせるために、仮面をつけるようにしていたのです。現代の人々が、キャラクターや有名人になりきって目立つために凝った仮装をするのとは大変な違いですね。

全米小売業協会によると、米国で仮装に使われる金額は年間26億ドル(約2,900億円)にも上ります。子ども用の仮装の人気トップ3は、プリンセス、動物、スーパーヒーロー。ペット用の仮装として人気なのは、カボチャ、ホットドッグ、悪魔とネコとの調査結果が出ています。近年では衣装を手づくりする人の数も増加しているようですが、それには、写真共有サイトPinterest(ピンタレスト)の普及が影響していると、全米小売業協会は推察しています。調査回答者の9.3%が、仮装のアイデア探しにPinterestを活用していると答えたそうです。

 

[トリビア8]

ハロウィンの世界的名所は「香港」である。

[解説]
西欧文化とアジアの文化が融合して発展した都市・香港には、霊や魔物が登場する民話が数多く伝えられています。つまり、ハロウィンイベントの開催地にはうってつけの場所というわけです。10月には、香港ディズニーランドをはじめ、ショッピングモールやテーマパークなどの観光名所で大々的なハロウィンイベントが行われ、街中がハロウィン一色に染まります。

カボチャをくりぬいた「ジャック・オ・ランタン」

 

[トリビア9]

「ジャック・オ・ランタン」は、カボチャではなかった。

[解説]
カボチャを彫ってつくる「ジャック・オ・ランタン」の起源は、アイルランド、スコットランド、イングランドにあります。かつて、これらの地に住む人々は、怖い顔を彫って中にロウソクを灯した野菜を、あの世からやってきた悪霊を遠ざける魔除けとして家に置いていたそうです。カボチャを使うようになったのは、この伝統が、カボチャの一大生産地であるアメリカに伝わってからのこと。それ以前のランタンにはカブ、ルタバガ(カブに似た根菜の一種)、ウリ類、ビーツなどが用いられていました。

 

[トリビア10]

英国のハロウィンが盛り上がりはじめたのは、つい最近のこと。

[解説]
ハロウィンの人気は、世界的に高まり続けています。英国ではハロウィンに関連する家計の支出が2001年から2012年にかけて25倍以上に拡大したと推計されているほどです。その一方で、地域の伝統的な行事が顧みられなくなっていると嘆く人たちもいます。英国でハロウィンにお株を奪われつつあるのは、「ガイ・フォークス・デイ」と呼ばれる11月5日の行事です。1605年のこの日に、カトリック教徒らが英国議会爆破と国王暗殺を企てていましたが、直前で発覚し、国王の命は守られました。国王の無事を祝うことから始まったこのお祭りでは、子どもたちが首謀者の一人ガイ・フォークスの人形をつくって市内を曳き回しながら、通行人から小銭を集めます。クライマックスでは、花火を打ち上げ、ガイの人形を大きなかがり火で焼き捨てるという、なかなか豪快なお祭りなのです。

こうした英国の歴史を尊ぶ上の世代には、ハロウィンをアメリカ的な行事として眉をひそめる向きもあります。しかし、仮装やお化け屋敷での肝試し、オールナイトのダンスイベントなど、ハロウィンの新しい楽しみ方は、子どもや若者たちに大人気。日本でも何かと物議をかもすこともありますが、みんなで楽しむイベントとして世界中で根づきつつあるハロウィンの勢いは、まだまだ衰えそうにないですね。