コカ・コーラ社のスマホ自販機でドリンクを購入することで、無料のドリンクチケットに引き換えられるスタンプがたまるスマートフォンアプリ「Coke ON」。その「Coke ON」が大きく変わろうとしています。6月17日には、東京2020オリンピック聖火ランナーに応募できるキャンペーンも開始。「Coke ON」を使ってより楽しくオリンピックを応援できるよう、新機能を追加し、ユーザーインターフェース(UI)も刷新します。この大々的なリニューアルの背景には、「Coke ON」をスタンプのたまる「自販機アプリ」から、消費者をよりリアルな場に巻き込んで感動体験を提供するデジタルプラットフォームへ進化させる、という壮大なビジョンがありました。その意図について、マーケティング本部iマーケティング統括部長の豊浦洋祐が解説します。

文=『Coca-Cola Journey』編集部
写真=下屋敷和文

 

■カメラを使って楽しくポイントをためられるように

感動体験を生むIoTアプリ「Coke ON」がリアル×デジタルで挑む東京2020オリンピック

日本コカ・コーラ株式会社
マーケティング本部 iマーケティング統括部長
豊浦洋祐

──「Coke ON」アプリは2018年7月に1000万ダウンロードを達成しました。今でもダウンロード数は伸び続けているのでしょうか。

豊浦 おかげさまで順調に伸びています。ダウンロード数は1400万人を超え、月間アクティブユーザー数も450万人を超えました。アプリストアでの評価も高いんですよ。iOSアプリのApp Storeだと4.6という高評価を獲得しています。20万人以上の人に評価していただいた結果、この高いスコアが達成できている。こうした結果から、チーム一同「Coke ON」アプリに手応えを感じています。

──立ち上げ当初に比べると、機能もいろいろと追加されています。

豊浦 2018年11月には、決済カード情報を登録することで、アプリから自販機の製品が購入できる「Coke ON Pay」のサービスを提供しました。また、今年の4月には電子マネー決済でスタンプをためられる「Coke ON IC」のサービスを開始。電子マネーが使えるコカ・コーラ社の自販機であれば、「スマホ自販機」で購入しなくてもスタンプをためられるようになりました。

──6月17日から、東京2020オリンピック関連のキャンペーンも始まりました。

豊浦 はい。それに伴い、アプリの大幅なバージョンアップを行いました。一番大きな変化は、カメラ機能がつくことです。このカメラを使い、通常のスタンプとは違う「オリンピック応援ポイント」をためられるようになりました。製品のパッケージに掲載されている「オリンピック応援マーク」をカメラで読み取ると、ポイントがアプリにたまっていくんです。

──わあ、読み取ったときのモーションがおもしろいですね!

感動体験を生むIoTアプリ「Coke ON」がリアル×デジタルで挑む東京2020オリンピック

製品の「オリンピック応援マーク」を読み取ると、AR技術でポイントがカメラに飛び出してくる仕組み

豊浦 AR(拡張現実)技術を使って表現を工夫しているんです。「オリンピック応援ポイント」1つで、東京2020オリンピック聖火ランナーに応募できます。さらにポイントをためると、アクションカメラやピンズなどコカ・コーラ オリジナル オリンピック応援グッズに交換できます。
この「オリンピック応援ポイント」は従来の「Coke ON」アプリのスタンプと違って、コンビニやスーパー、ドラッグストア等どこで買った製品でもポイントを貯められ、キャンペーンに参加できるんです。

 

■コカ・コーラ社にしかできないこととは? 極限まで考えた

──今回、なぜ、「新しく『オリンピック応援ポイント』を付与する」「カメラを使ってポイントをためる」といったキャンペーンになったのでしょうか。

豊浦 これは、「Coke ON」のビジョンから考えた結果なんです。まず、「Coke ON」アプリは2016年の立ち上げ当時から、「買う(Buy)」、「飲む(Drink)」、「(スマホで)楽しむ(Enjoy)」の3つのモーメントにおいて、コカ・コーラ社にしかできない体験をつくる、ということを目的としていました。
「買う」については、スタンプをためることを通してお得さを提供してきました。「飲む」については、さまざまなサンプリングをおこなってきました。さらに「楽しむ」は、歩くとスタンプがたまる「Coke ON ウォーク」などの導入がそれにあたります。
そして今回、東京2020オリンピックに向けて過去最高にデジタルを活用するオリンピックにするという社内の方針を決めました。それに連動し、「Coke ON」アプリではさらに「楽しむ」部分を強化しようと考えたんです。

──ゲームなどのコンテンツではなく、「カメラ」で楽しんでもらうことしたのですね。

豊浦 そうですね。「コカ・コーラ社にしか提供できない体験」という点で、カメラは相性がいいと考えました。
世の中にスマホのアプリは300万個以上あり、そのなかで「いつも使ってもらえるアプリ」の地位を確立するのは至難の技です。我々も日々試行錯誤し、そのために何をすべきか考え続けました。その結果出てきた答えが、「コカ・コーラ社にしかできないことを極限まで突き詰める」だったんですね。

感動体験を生むIoTアプリ「Coke ON」がリアル×デジタルで挑む東京2020オリンピック

コカ・コーラ社の強みは、まずドリンクという製品があること。そして、オリンピックやFIFAワールドカップTMといったスポーツイベントのパートナーであること、マーケティング活動でセレブリティの方々に協力していただいていること、などがあります。これらはコカ・コーラ社のアセット(資産)とも呼べるでしょう。コカ・コーラ社は、ネット空間で完結しない現実世界でのアセットが多いんです。だから、カメラと相性がいい。
このアセットと「Coke ON」を掛け算していくことで、唯一無二の体験やサービスが提供できると思っています。例えば、「オリンピック応援ポイント」というのは、東京2020オリンピック×「Coke ON」アプリであり、製品パッケージ×「Coke ON」アプリのカメラ機能ですね。

 

■「自販機アプリ」から広がりゆく可能性

──たしかに、これは日本コカ・コーラのアプリでしかできない施策ですね。しかし、せっかく「自販機アプリ」として認知度が上がってきた「Coke ON」に、自販機以外でも集められるポイントを導入することにより、方針がぶれてしまうことはないのでしょうか。

豊浦 それは我々も、慎重に考えました。従来のスタンプをそのまま使うという可能性もなくはなかった。でも、製品パッケージのマークを読み取るタイプのポイントは、自販機のスタンプと違って購買の証明ではないんです。多少使い勝手が複雑になったとしても、別のポイントを作ったほうがいいと判断しました。
自販機で購入してくださるお客様を大事にしたい気持ちに変わりはないので、この「オリンピック応援ポイント」は自販機で購入した場合、スタンプにプラスして自動的に1ポイント付与されます。さらにパッケージの「オリンピック応援マーク」を読み取れば、合計2ポイント貯まるんです。

感動体験を生むIoTアプリ「Coke ON」がリアル×デジタルで挑む東京2020オリンピック

「東京2020オリンピック 聖火ランナーになろう!」キャンペーンのトップページ

──「Coke ON」アプリは自販機で使うと一番お得で楽しい、というところは変わっていないんですね。

豊浦 そうですね。でもおっしゃる通り、今回のリニューアルは正直、大きな賭けだと思っています。「自販機アプリ」というところにコカ・コーラ社らしさや優位性があったのに、それが保たれなくなるのではないか。戦略的にどうなのか。そうした議論はずっと続けていました。
ただ、僕は「Coke ON」を立ち上げた時点で、どこかのタイミングで「自販機アプリ」から、もっとお客様にリアルな感動体験を提供するものに進化させたいとずっと言っていたんです。それを実行するタイミングが、この東京2020オリンピックだった。東京2020オリンピックというまたとない機会のキャンペーンを、自販機で購入してくださるお客様だけに展開するのはもったいないですよね。自販機で購入してくださるお客様を従来どおり最も大切にしながらも、コカ・コーラ社製品を買ってくださるすべてのお客様が、参加できるような設計にしたほうがいい。そう考えました。自販機でスタンプをためる楽しみに加えて、人によってさまざまに楽しめるアプリになっていけたら、と思っています。

 

■リアルとデジタルの掛け算で唯一無二の体験を創造

──具体的には今回のリニューアルで「Coke ON」にはどのような楽しみ方が追加されたのでしょうか?

豊浦 自販機でスタンプをためるだけではなく、人によってさまざまな楽しみ方のあるアプリになっていけたら、と思っています。
例えば今回カメラ機能を導入したことで、パッケージとカメラをかけ合わせた新しい体験を、気軽に提供できるようになりました。「い・ろ・は・す」であればセレブリティとして登場してくださっている土屋太鳳さんや渡辺直美さん、「ファンタ」であれば乃木坂46のARコンテンツをパッケージから見せる、ということも可能になります。カメラ機能は、「Coke ON」アプリをダウンロードしたもののあまり使っていないユーザーの方々にとって、アプリを立ち上げるきっかけになると考えています。
さらに言えば、今後は検索もスマホのカメラでおこなうようになるなど、ビジュアルマーケティングの潮流が激しくなってくるでしょう。「Coke ON」アプリもAR広告にとどまらず、カメラを活用した新しいマーケティング活動を模索していきたいですね。

感動体験を生むIoTアプリ「Coke ON」がリアル×デジタルで挑む東京2020オリンピック

「Coke ON」の進化の過程を説明したマトリックス

──それはやはり、リアルとデジタルをかけ合わせた領域に可能性があるのでしょうか。

豊浦 そう思います。僕がデジタルマーケティングをやっていく上での一番大きな命題は、デジタルのプラットフォームを活用してどれだけ生活者と接点をつくれるか、ということ。その一つの手段が「Coke ON」です。この接点をデジタルで完結する部分だけで考えていると、あまりにも狭い。やはり我々のアセットである、物体的なもの、リアル空間とかけ合わせることで、コカ・コーラ社にしかできない体験がつくれるんです。そこに新時代のデジタルマーケティングの勝機があると考えています。
来年には「Coke ON」アプリで、東京2020オリンピック・パラリンピックの大会観戦チケットが当たるキャンペーンも行う予定です。オリンピック関連の屋外広告とカメラ機能を組み合わせても、いろいろできますよね。東京2020オリンピック・パラリンピックを何倍も楽しめるようなことを仕掛けていきたいと思っているので、楽しみにしていてください。

感動体験を生むIoTアプリ「Coke ON」がリアル×デジタルで挑む東京2020オリンピック

〈プロフィール〉
とようら・ようすけ / 2001年にP&G Japanに入社。デジタルマーケティングを統括。09年にナイキ・ジャパン入社。デジタルマーケティングの責任者を経て、ランニングカテゴリーの広告クリエイティブ、メディア、デジタル全般の消費者コミュニケーション開発を担当。13年に日本コカ・コーラ入社。iマーケティング統括部長として、オウンドメディア、ソーシャルメディアを含むデジタルマーケティング全般を統括。