「労働」と「生きがい」の幸せなる一致

安藤 ここで少し話を変えます。前編でご紹介させていただいたように、「なんでなんで?」と、疑問に思ったことを何でも聞いてしまう好奇心旺盛な中村少年は、昆虫採りや魚釣りなどに夢中でした。そして現在の中村さんは、子どもの頃から大好きだった生物や環境に関することを仕事にしています。これは、ご飯を食べていくための「ライスワーク」と、生き甲斐を追求する「ライフワーク」の二軸が一致している、すごく幸せなキャリア例です。なぜなら世の中の多くの人は、「ライスワークとライフワークは別もの」だとあきらめているからです。

中村 本当にそう思います。

安藤 これだけ大きな会社で、「ライスワーク」と「ライフワーク」の両立を叶えている中村さんですが、人生を充実させるための「ライフワーク」に、なんと、狩猟採取生活全般を挙げているのだとか(笑)。「1ヵ月の費用1万円でのサバイバル生活」などというバラエティ番組じゃないですが、銛を持って海にでも潜って、自活されているんでしょうか(笑)。

中村 いやいや、遠からずですよ(笑)。秋になったらシャケを捕って燻製にしています。

安藤 シャケを捕りに青森に行くんですよね。

中村 はい。そのシャケは、冬の保存食にする他、お世話になった人との物々交換にまわすんです。

安藤 ご自分で燻製にされているんですか?

中村 ええ。自分、畜産学科だったので(笑)。

安藤 スゴイ! 自分のスキルを使って楽しんでつくった燻製を、ご友人に贈ってるんですか(笑)。

中村 夏の間、自分で育てた野菜をくれた人へのお返しとして、差し上げたりもします。思うんですけど、お金って、自分の気持ちを伝えるのに不自由な道具だと思うんです。ひと手間かけて手づくりしたものの方が、お金を渡すよりも自然と気持ちが伝わりますからね。シャケの場合、包装紙に包んで花束っぽくして送ったりするんですけど、受取人の奥さんが袋をあけると中からシャケが出てきてびっくり仰天(笑)。

安藤 それはシャレてますね(笑)。

安藤美冬のPeople in Coca-Cola
〜ハッピーを届ける社員スタッフの素顔〜
第1回 植物生物由来燃料で走るバイオディーゼルトラックの開発企画からヤンバルクイナの生態調査まで関わる日本コカ・コーラ社のリーサルウエポン(後編)

中村 自分は人間である前に生き物らしくしていたいのです。日本には四季があるじゃないですか。四季折々の移ろいとその中での生き物たちの営みの中に自分があることをちゃんと感じていたいんです。狩猟採集生活をしていると日々自然を感じます。鮭が川を上り、鹿がいて、海の中でもいろんなことが起きている。鮭が川を上ってくるのが遅れていれば、秋の訪れが遅いと感じられる。上ってきた鮭を自分の手で獲り、寒風を利用し冬の間の保存食に加工し、それを食べながら火を焚き、暖をとりながら春を待つ。そのような暮らしが、自分にとってはとても魅力的なんです。

安藤 私は生まれが山形なんです。最近、「解放食堂」という被災地支援プロジェクトに関わっていることもあって、東北のいわき市や石巻などに足を運ぶ機会が増えました。そうすると、いかに去年までの自分が東京の「コンクリート・ジャングル」で生きていたのかを痛感するんです。たとえば、季節の移ろいを感じる機会は、お祭り行事しかない。ハロウィンが来ると秋が終盤で、クリスマスの時期は冬の到来だな、とか。

中村 都会生活の宿命ですよね。

≪前のページ    次のページ≫