今年2月4日、「ジョージア ヨーロピアン」シリーズのボトル缶コーヒーが、「ジョージア 香るシリーズ」にリニューアルされ、ブラック・微糖・ブレンドの3製品が新発売されました。そして、3月18日には「香るカフェラテ」も登場。多様な味のバリエーションだけでなく、缶やPETボトルなど容器も多様なRTD(Ready To Drink=容器入りの飲料)コーヒー市場で、なぜ、日本コカ・コーラはボトル缶のシリーズのリニューアルに踏み切ったのでしょうか? そして、このリニューアルから新たに導入された、コーヒー豆の豊かな香りを集める日本初の特許技術とはどのようなものなのでしょうか? マーケティング担当者と製品開発担当者に話を聞きました。

文=小山田裕哉
写真=村上悦子

 

■薄れつつあった「ジョージア」というブランドの価値

──日本コカコ・コーラのボトル缶コーヒーは、これまで「ヨーロピアン」という「ジョージア」の傘下ブランドとして発売されていました。それが、この「香るシリーズ」へのリニューアルで「ジョージア」ブランドへと統合されたのはなぜでしょうか。

鈴木 「ヨーロピアン」のリニューアルに関する議論は、2017年の半ばから始まりました。そのときはまだ「ヨーロピアン」というブランディングの方向性をどうしていくのか、といった検討でした。もともと「ジョージア」は「ヨーロピアン」のほかにも、「エメラルドマウンテンブレンド」や「ザ・プレミアム」などさまざまなサブブランドで製品を展開してきました。それぞれにターゲットが異なり、コミュニケーションも別々の役割を担ってきたのです。

もちろん、ターゲットが細分化されることでお客様のニーズが明確になるので、そこには良い面もありました。しかし昨年、「ヨーロピアン」のリニューアルを検討するうえで分析を進めていくうち、お客様から見たときに「ジョージア」という大きなブランドの価値が薄れてしまっているという課題が浮かび上がってきたんです。

[コカ・コーラ社の製品開発「ジョージア 香るシリーズ」篇] 攻めの“ワンブランド戦略”と香りの“新製法”で、ボトル缶コーヒーはどう変わる?

日本コカ・コーラ株式会社
マーケティング本部 コーヒーグループ シニアマネジャー
鈴木 英里子

 

──サブブランドの訴求に注力した結果、徐々に「ジョージア」というブランドがユーザーから遠いものになってしまったんですね。

鈴木 そこでまずは、「ジョージア」というブランドをお客様に身近に感じてもらうために全体のコミュニケーション戦略を変更しました。山田孝之さんが出演した「世界は誰かの仕事でできている」というTVCMのシリーズは、もともと「エメラルドマウンテンブレンド」での訴求を中心としていましたが、それを昨年から「ジョージア」傘下のすべての製品に広げたんです。

そして今年からは「だから私は、がんばれる」というスローガンのもと、このキャンペーンをさらに進化させています。山田孝之さん、染谷将太さん、広瀬アリスさん、そして新たに麻生久美子さんに加わっていただき、年代も性別も違う働く人に、「ジョージア」はさまざまな製品を通じて寄り添い応援している、というメッセージを伝えながら、お客様との距離をさらに一段深めることに挑戦しています。

──個別製品のキャンペーンを「ジョージア」ブランド全体のキャンペーンに拡大していったわけですね。

鈴木 そうです。さらに、こうしたコミュニケーション戦略の変更を行なっていたタイミングで、RTDコーヒーをめぐる市場環境も劇的に変わりました。「ヨーロピアン」は依然としてボトル缶コーヒーでナンバーワンではありましたが、2018年にボトル缶市場全体が初めてマイナス成長に転じたのです。

──2018年というと、PETボトルのコーヒー飲料が本格的に普及した年ですが、この影響が大きかったのでしょうか?

鈴木 はい。PETボトルの市場規模が大きく伸びてきました。キャップ付きのボトルで持ち運びができるという共通点があることから、ボトル缶はその影響を受けました。そうした状況の中、改めてボトル缶製品のお客様への価値を再定義し、その価値を「ジョージア」ブランドの傘の元、お客様に広く伝えていくことが強いブランドを育てることにも繋がるのでは、と考えました。

そこで今回のリニューアルでは、コミュニケーション戦略だけでなく製品自体もワンブランドに統合することで、「ジョージア」ボトル缶の市場での競争力を強化するとともに、「ジョージア」ブランド自体の成長にもつながるリニューアルとすることを目指したのです。

また、ボトル缶の価値を再定義するにあたり、ボトル缶を選んでくださっているお客様が「香り」を非常に重視していることに着目し、そのとき同時並行で進めていた新しい香りの製法の技術開発も実現しつつあったので、その製法をこのリニューアルに活用することになりました。

 

■ボトル缶が“香り”の追求に向いている理由

[コカ・コーラ社の製品開発「ジョージア 香るシリーズ」篇] 攻めの“ワンブランド戦略”と香りの“新製法”で、ボトル缶コーヒーはどう変わる?

左から、「ジョージア 香るブラック」「ジョージア 香る微糖」「ジョージア 香るブレンド」「ジョージア 香るカフェラテ」

 

──それが、新たに導入された「挽きたてアロマ製法」ですね。これは日本初の特許製法とのことですが、どのような点にイノベーションがあるのでしょうか。

梅山 PETボトルのコーヒー飲料が普及したことで、あらためてお客様に訴求するボトル缶の価値を見つめ直しました。ボトル缶はPETボトルに比べて飲み口が広く、開封したときに容器内に圧縮された空気が外に出ようとするので、開けた瞬間にふわっと香りが漂います。これはPETボトルにはないボトル缶ならではの特性です。

喫茶店に入るとコーヒーの香りが漂ってきますよね。あの豊かな香りはコーヒー好きにはたまらないものですが、それをなんとかRTDコーヒーでも感じさせることはできないか、というのが発想の原点でした。従来の製法では豆を工場で挽いたときに、どうしても香りが逃げてしまうので、焙煎会社や香料会社の方々と協力して、豆を挽いている時の香りを集めて、その香りを液体化することに成功しました。

[コカ・コーラ社の製品開発「ジョージア 香るシリーズ」篇] 攻めの“ワンブランド戦略”と香りの“新製法”で、ボトル缶コーヒーはどう変わる?

製品開発 コーヒーグループ
梅山 満玲

 

──実現に至るまでどれくらい時間がかかったのでしょう?

梅山 最初のアイデアから2年半ほどです。当初、ラボレベルでの検討はうまくいったのですが、その方法を実際の工場のスケールへと大きくしていくのが大変でしたね。パートナー企業のみなさんの粘り強い協力がなければ実現できなかったと思います。

鈴木 “香りを生かす” ことはボトル缶という容器だからこそできたことですが、実は、お客様のニーズとも合致していたんです。ボトル缶は仕事から離れ、ゆっくりくつろぎたいときに飲まれやすい製品なので、味や香りがしっかりして、コクもある、コーヒーらしいコーヒーが求められているんです。それを裏づけるように、ボトル缶は突出してブラックが売れており、全体の6割を占めます。香りやコクの良さをストレートに感じられるからだと思います。

──そんなにですか!

鈴木 一方、PETボトルは仕事中や勉強中に時間をかけて少しずつ飲むために購入する方が多く、水やお茶に近い飲まれ方をしています。また、購入者には女性も多く、強いコクというよりも、飲みやすさが求められています。そのため、すっきりした味わいのカフェラテが一番売れているんです。缶は休憩時間にほっと一息つくような、気分の切り替えのために飲まれています。いわゆるショット的な飲まれ方ですね。容器の違いで、ここまでニーズが異なるんです。

 

■「ジョージア 香るシリーズ」がRTDコーヒー市場で担う役割

──だから、喫茶店のコーヒーにあるような挽きたての香りをボトル缶に閉じ込めることが重要だったのですね。

鈴木 これまでボトル缶は30代から50代の男性が主なユーザーでした。それに対して、PETボトルは20代から30代の男女が中心です。特に若い女性はこれまで缶コーヒーのターゲットになっていませんでした。しかし、PETボトルの普及により、新しいユーザーへとRTDコーヒーの裾野が広がりました。

さらに今は世代や性別に関係なく、「美味しいコーヒーが飲みたい」という人が増えています。そうした方々がPETボトルを入り口として、本格的な缶コーヒーの世界に定着してもらう役割を”香るシリーズ”は担っています。

──実際に「香るブラック」を飲んでみると、すっきりとした味わいにもかかわらず、挽きたての豆の香りがコーヒーらしさを際立てていますね。

梅山 やはり挽きたての香りはコーヒー豆本来のナチュラルなものですからね。「ヨーロピアン」シリーズから引き続き猿田彦珈琲さんに監修していただいていますが、まさに専門店のような本格的な味わいを実現できたと思います。甘さは控えめに、コクは深くなっています。特にボトル缶を好まれる方はコーヒーらしいコクを重視されるので、飲みごたえが増したと感じていただけるはずです。

──3月18日には新製品の「香るカフェラテ」も発売されます。

鈴木 こちらは挽きたて豆の香りに加え、エスプレッソと国産ミルクの絶妙なバランスによる深いコクが楽しめるような味わいになっています。「ジョージア」ではPETボトルの「ジョージア ジャパン クラフトマン」からもカフェラテを販売していますが、PETボトルは飲みやすさを大切にしているため、すっきりした、やさしい味わいの設計になっています。

一方、ボトル缶のカフェラテを選ばれる方は、この”香るシリーズ”のコクと香りを前提として購入されるので、エスプレッソのしっかりしたコクがベースにある味を意識して開発しました。

梅山 「ヨーロピアン」ではカフェラテを乳飲料の規格で出していたのですが、「香るカフェラテ」ではコーヒー規格として発売します。乳飲料だとミルクがメインの設計ですが、こちらはコーヒーとしての本格的な味わいを踏襲したカフェラテを目指しました。

 

■ワーキングシーンの潤滑油になるブランドに

──カフェラテも「香るシリーズ」では「ジョージア」ブランドの中でも本格志向のニーズに応えるものとしてリニューアルされたのですね。今後はどのような展開を考えていますか。

鈴木 やはり、まずはこの香りとコクを体験していただく場を増やしていきたいですね。すでに札幌の雪まつりに出展しましたが、今後はコワーキングスペースへの提供なども検討しています。

──なぜコワーキングスペースに?

鈴木 これまでボトル缶のメインユーザーではなかった、若いビジネスパーソンにアプローチができる、ということもありますが、今どきのコワーキングスペースはコーヒーが美味しくないと利用者が集まらないそうなんです。だから、コーヒーにこだわりのある方が集まる場所で、しっかり受け入れられるようなコミュニケーションを行なっていきたいと考えています。

今やコーヒーはワーキングシーンの潤滑油として、コミュニケーションを促進したり、それぞれのパファーマンスを上げたりと、いろんな場面にその役割が広がっています。そうしたニーズを微細にキャッチして、「ジョージア」の良さを幅広い方々に知っていただくための活動を広げていきたいですね。

[コカ・コーラ社の製品開発「ジョージア 香るシリーズ」篇] 攻めの“ワンブランド戦略”と香りの“新製法”で、ボトル缶コーヒーはどう変わる?

〈プロフィール〉
うめやま・まり / 食品メーカーでの商品開発を経て、2014年に株式会社コカ・コーラ東京研究開発センター入社。製品開発 コーヒーグループ所属。J.C.Q.A. 認定コーヒーインストラクター1級。

すずき・えりこ / メーカーでのマーケティング職を経て、2017年に日本コカ・コーラ入社。マーケティング本部コーヒーグループ シニアマネージャーとして「ジョージア」ブランドを担当する。