世界経済フォーラムのパネルディスカッションに参加する
バラティ・ヴィスワナサン(中央の女性)

 

2018年9月11日~13日の3日間、ベトナムのハノイで「東南アジア諸国連合(ASEAN)に関する世界経済フォーラム」が開催されました。世界中から著名な政治家やビジネス関係者が集まって議論を交わす中、コカ・コーラ アジアパシフィックでCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)を務めるバラティ・ヴィスワナサンが、「デジタルマーケットがもたらすグローバルなビジネスチャンス」というテーマのパネルディスカッションに参加しました。

今回は、ヴィスワナサンがそこで話した、コカ・コーラ社がASEAN地域において主導しているデジタル化の取り組みをご紹介したいと思います。

文=バラティ・ヴィスワナサン コカ・コーラ アジア・パシフィックCIO

 

■デジタル化こそ経済成長の原動力

先進国か途上国か、スタートアップか伝統企業か。そのいずれであるかに関わらず、IoTやAIの活用により製造業を改革しようという「インダストリー4.0(*1)」は、人と人のつながり方、事業プロセス、日々の意思決定を支える情報提供の仕組みなど、私たちの働き方のあらゆる側面に影響を及ぼしています。特にASEANにおいて、デジタル化は近年の経済成長と社会変革を進める大きな原動力となっています。

現在10ヵ国が加盟するASEAN は、宗教や民族が異なる6億3,000万人もの人口を抱える多様性に富んだ地域で、人々の購買力とインターネット普及率は急速な上昇を続けています。そのような中でデジタル革命は、企業やブランドとの関わり方から、職場での働き方、事業部門を超えたコミュニケーションまで、ビジネスのあらゆる点に影響し、新たな価値の創造にもつながってきました。

*1 インダストリー4.0:工業のデジタル化によって製造コストを大幅に削減し、21世紀の製造業に根本的な変革をもたらそうとする取り組み。当初、ドイツ政府が推進する国家戦略として打ち出されたが、各種産業の世界的なデジタル化・コンピュータ化の動きを指して使われることも多い。

 

■よりパーソナルな購買体験の提供が可能に

若年人口が多く、幼い頃からインターネットやデジタル端末が普及した環境で育った“デジタルネイティブ”で溢れる東南アジアは、コカ・コーラ社が先進的な取り組みを進めるのに最適な地域です。テクノロジーを活用すれば、消費者が求める製品を、飲みたい時に、飲みたい場所で、最適な楽しみ方の提案も合わせた、よりパーソナライズされた体験と共に提供することができます。

ASEAN加盟国ではありませんが、日本で展開しているスマホアプリ「Coke ON」は良い例です。消費者はこのアプリを使って、全国26万台(*2018年6月末時点)の自動販売機でスタンプをためたり、ドリンクチケットを製品と引き換えることができます。既に「Coke ON」アプリのダウンロード数は1,000万を突破。一定の成果を挙げています。そこで今後は、暑い日に十分な水分補給を促すための割引キャンペーンなど、消費者の行動を予測し、よりターゲットを絞ったキャンペーンの実施を検討しているそうです。

コカ・コーラ社の一連のブランドは、日々世界人口の20%近くにあたる消費者と接触しています。デジタル革命は、マーケティングや新鮮なブランド体験を通して、消費者との接点をさらに広げ、結びつきを強化する機会を提供してくれます。消費者と交流し、「1本の製品」をはるかに超えた体験と心理的なつながりをつくり出すチャンスが生まれているのです。

 

■取引先にもデジタルソリューションを提供!

ASEANには、大型スーパーやコンビニエンスストア、小規模な個人商店に至るまで、コカ・コーラ社製品を扱う店舗が約380万店存在します。コカ・コーラシステム(*2)のデジタル化を進めるには、これらの小売各社を巻き込むことが欠かせません。コカ・コーラ社は各社間のコミュニケーションを改善するツールを導入したり、eコマースなどの新たな販売手法の構築を支援したりと、小売各社が次世代の技術やプロセスを取り入れるための伴走者のような役割を果たしているのです。

この動きは、コカ・コーラシステムのすべての構成員を助けることにもつながります。 近くの店舗に欲しい製品がなくても、オンラインストアで製品を“クリック一つで手に入る範囲内”に置ければ、大幅なサービス向上が実現するでしょう。

ベトナムでは、小売各社は当社のオンラインチャットボット「Muacoke +」を使って、コカ・コーラ社製品を注文し、配送状況も追跡することができるようになっています。クリック一つで当社のサポートが受けられますし、今後はオンラインキャンペーンの実施やポイント付与の追加機能のリリースも予定しています。

ASEANのeコマース市場では、年間14%の成長が見込まれています。そのような中で、中小企業のパートナーを支援することは、当社にとってもさまざまなメリットがあります。たとえば、データ分析によってより正確な売り上げ予測を立てられれば、適切な製品やブランドに投資することができるようになります。コカ・コーラ社のネットワークは、消費者に対してと同様、顧客企業に対してもシームレスで利便性の高い、意義ある体験を提供し、事業の成長を助けているのです。

これらの取り組みは莫大な成果が期待されています。8月のASEAN経済大臣会合で発表された調査では、中小企業がデジタル経済に参入することで、ASEANのGDPは2025年までに1兆ドル増加する可能性があるとの結果が出ているのです。

また、ビジネスの成長に伴い、そのビジネスに関わる人々の生活や、地元コミュニティーの福利も向上します。その効果は、世代や企業を超えて、地域レベル、国レベルで感じられるようになるでしょう。誰もがその恩恵を受けることになるのです。

*2 コカ・コーラシステム:原液の供給と、製品の企画開発・マーケティングを担うザ コカ・コーラ カンパニーと、製品の製造、販売などを担うボトラー社や関連会社などで構成される。

 

■もちろん社内のデジタル化も万全

とはいえ、業界のデジタル化を進めるには、社内のデジタル化がまず必要です。そのために私たちは、業務のオペレーションやシステムのデジタル化を進め、社員のスキルを向上させ、事業部門をまたいだコミュニケーションとカルチャーの進化に注力してきました。

コカ・コーラ社では、社員の相互の結びつきと機動性がますます高まりつつあります。そしてリアルタイムでのデータの取得と分析技術を駆使して、各国の事業展開の指針とし、よりスピード感のある優れた事業判断を可能にしているのです。

ASEANのように多様な人々が居住している地域では、住民の知識レベルに格差があったり、ビジネスの機会が一部の国に偏って存在していることもあります。私たちのシステムは、そのような状況でもベストプラクティスを共有し、優れたアイデアを交換することで、国ごとの格差解消にも役立っているのです。

 

■「ASEAN 4.0」をリードする決意

インダストリー4.0は、人間と技術の関係をどんどん変化させています。企業もまた、この変わりゆく関係を最大限に活用するために、自ら積極的に変わっていかなければなりません。それは企業として、消費者との関わり方、顧客のサポート方法、社内の事業運営といったあらゆる行動を再考することを意味します。

コカ・コーラ社がASEANでこの大きな動きを主導していることを、私は非常に嬉しく感じています。今後の展開を、どうぞ楽しみにしていてください。