2月26日、「綾鷹」ブランドの新製品として登場した「綾鷹 茶葉のあまみ」
その名の通り、茶葉本来の「あまみ」が引き立ち、
しっかりとした緑茶の香りと味わいが感じられます。
一方で、渋みや苦みを抑えてあるため、飲みやすい。
この上品でやさしい味わいの緑茶はどのようにして生まれたのでしょうか。
株式会社コカ・コーラ 東京研究開発センターの執行明日香さんと、
日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部の吉田ミシャールさん
「綾鷹 茶葉のあまみ」誕生秘話を聞きました。

文=崎谷実穂
写真=村上悦子

 

■老舗の茶師も難しいと唸る「あまみ」の開発にあえて挑戦

──お茶の味わいの要素は、苦みや渋み、旨みなどいろいろありますが、今回お茶の「あまみ」に着目した理由は?

吉田 まず、これまで展開していた「綾鷹 にごりほのか」は、抑えた苦みと繊細な旨みの味わいをベースに、女性や緑茶ノン・ライトユーザーを獲得してきました。急須でいれた緑茶の本格的な味わいを目指す「綾鷹」ブランドの次なる進化として、新たな味わいの軸を確立できないかと考えました。同時に、「綾鷹」をより多くの人にも受け入れてほしいという思いもありました。

そんな中、近年のお茶の消費の傾向として、麦茶やほうじ茶などが伸びていることにも注目しました。それらの味わいの共通点を考えたとき、穀物が持つ自然な甘さや焙煎の香りからくる甘さが浮かび上がってきました。そして、味覚設計に携わる有識者にヒアリングをしたところ、近年の味覚のトレンドとして、素材そのものの自然な味わいや甘さ、すっきりしながらもしっかりした味わいへの、消費者の嗜好のシフトが見えてきました。それらの分析から、「あまみ」に着目しようと決めました。

「綾鷹」シリーズは、創業450年の歴史を持つ宇治の老舗茶舗「上林春松本店」代表の茶師、上林秀敏さん(以下、上林さん)に開発協力を仰いでいます。上林さんに「今回は、あまみを引き立たせたお茶をつくりたいと思っています」と伝えると、「とうとうそこに挑戦されますか。それはけっこう難しいですよ」と言われました。

[コカ・コーラ社の製品開発「綾鷹 茶葉のあまみ」篇] 数多もの試作の末にたどり着いた 緑茶の“あまみ”の秘密。

ブランド担当の吉田ミシャールさん

──どうしてあまみを引き立たせた緑茶の開発はむずかしいのでしょうか。

執行 お茶の世界でも、「あまみ」は味わいの一要素として認識されているのですが、緑茶のあまみというのは訴求が難しいんですね。というのも、緑茶の味わいのなかでも苦み、渋み、旨みといった味は感じやすくイメージを共有しやすいのですが、あまみについては、砂糖のような甘味成分が含まれているわけではないので、イメージを共有しづらいという点があると思います。

吉田 それでも、挑戦する価値はあると思いました。実際、手いれ(リーフ)の市場でも、「あまみ」のある味わいは支持されていますし、世の中のニーズは十分あると考えました。また、現在発売されている緑茶のラインナップを見てみると、苦みや渋みを抑えてあまみを引き立たせた味わいの緑茶は、ほとんどありません。緑茶をそんなに飲まないライトユーザーや、苦みを理由に敬遠している人にも、緑茶の楽しみ方を知ってもらいたい。そのような思いから、新しいタイプの緑茶づくりに挑戦することに決めたのです。

──熟練の茶師でも「難しい」と言う「あまみ」の味わい。それを感じてもらえるような製品を、どのようにつくっていったのでしょうか。

執行 お米やお水も、新米や湧き水を「あまい」と感じたことはありませんか? どちらもお砂糖が入っているわけではありませんが、「素材そのものが本来もつ味わい」を潜在的に「あまさ」と感じ、表現している例だと思います。お茶の「あまみ」は、正にその「緑茶葉そのものが本来もつ豊かな味わい」を表現していると一開発者としては捉えています。ですので、開発は「茶葉そのものの味わい」にこだわった茶葉の選定からスタートしました。

茶葉には、種類ごとにそれぞれ違う味わい、あまみがあります。今回、「綾鷹 茶葉のあまみ」で使用した茶葉は、主に深蒸し茶、玉露、碾茶(てんちゃ)そして抹茶です。深蒸し茶は、長時間蒸すことによってあまみやコクを引き出した茶葉です。玉露は、茶葉の摘採前に日光を遮断した環境で栽培し、あまみや旨みがしっかりとした茶葉です。碾茶というのは、抹茶の原料となる茶葉で、普通の緑茶のように針状に揉まず、蒸してそのまま乾燥させているので、雑味が出にくい茶葉です。そして、「綾鷹」の要ともいえる特別な抹茶を使用し、その使用量にもこだわり、全体としてバランスの良いあまさになるよう組み合わせました。

また、緑茶は同じ茶葉を使っても抽出の条件によって味わいが変わってきます。茶葉のあまみを引き立たせる最適なお湯の量・温度・時間はどれ位なのか? お湯の温度も数度違いの細かい検討を重ねた結果、ある一定の低温でじっくりと抽出することによって渋みが抑えられ、あまみが際立つことが分かり、ベストな条件を見つけ出すことができたのです。抽出している間はかき回さず、時間をかけて丁寧に抽出することによって、雑味のないすっきりとした味わいを実現しました。

[コカ・コーラ社の製品開発「綾鷹 茶葉のあまみ」篇] 数多もの試作の末にたどり着いた 緑茶の“あまみ”の秘密。

製品開発担当の執行明日香さん

 

■ 数百もの試作の結果生まれたおいしさ

吉田 また今回、研究開発チームには「あまみ」のほかにもう一つ、実現してほしい味わいがありました。それは、「先味(さきあじ)」。味覚のトレンドとして、口に入った瞬間に広がる香り・味である「先味」が感じられるものが好まれている、ということが分かりました。そのため、飲んだ瞬間にそれを強く感じるような味わい設計にしよう、と決めていました。

執行 通常の「綾鷹」に比べて苦みや渋みを抑えているため、「お茶感」がやや弱く感じられてしまうおそれがありました。そこで、良質な玉露茶葉を使い、口に入れたときの香りのインパクトが強めに香るようにしました。また、あまみはどちらかというと味わいの後の方に感じやすいのですが、最初からしっかり感じられるように茶葉の配合を工夫しました。

──茶葉の配合は、いろいろ変えて試してみるのでしょうか。

執行 はい、さまざまな茶葉の種類、そしてそれらの組み合わせ。茶葉の配合は限りなく考えられるので、試作品の数は、相当な数になります

吉田 すごく大変な作業なのですよ。

執行 たとえば、玉露だけでいれたお茶は、アミノ酸の味(旨み)を強く感じます。旨みがあり大変おいしいのですが、PETボトルで飲むお茶としては旨みが強すぎてバランスを欠いてしまうこともあります。それぞれの茶葉の特徴を生かした配合を模索し、研究開発チームとして良いと思った試作品を吉田さんやプロジェクトメンバーに飲んでもらい、コメントもらってまたつくり直す。メンバー全員が良いと評価されたものを上林さんと飲み合わせをし、またご指導をいただき、改良する。これを何度も繰り返しました。

[コカ・コーラ社の製品開発「綾鷹 茶葉のあまみ」篇] 数多もの試作の末にたどり着いた 緑茶の“あまみ”の秘密。

吉田 そして最終的には「茶葉認定式」で、上林さんが茶葉を拝見(審査)し、お墨付きをいただきます。

──茶葉認定式、というものがあるんですね。

執行 茶葉認定式は「綾鷹」という名前がつく製品すべてで実施しています。よりおいしく、本格的な味わいの製品を提供するために、本生産に先立ち、「綾鷹」に使用する茶葉や抹茶の品質と味わいの最終確認を行う認定会議が、茶葉認定式です。使用する茶葉と抹茶は、一種類ずつ丁寧に確認を行います。まずは茶葉の状態で形状や色、艶、香りを確認します。続いて、定められた温度と湯量で緑茶をいれ、水色(すいしょく)、香りや味わいを確認しています。

吉田 味の設計と並行して、ブランドチームではネーミングやパッケージデザインなどを決めていきました。「綾鷹 にごりほのか」のときは、「綾鷹」からの距離を意識しながら、繊細な味わいとやさしいイメージを、やわらかな光を放つ和紙の灯(あかり)のほのかさと重ねて表現しました。さて、今回はどうするか。「綾鷹 茶葉のあまみ」では、ストレートに、我々が一番味わってほしい「あまみ」を製品名に入れることにしました。「苦み・渋み・旨み」を謳う「綾鷹」から距離を出すことで、更なる差別化を図ったのです。
また、デザインについては、「綾鷹」にならい、手づくりの“擦りガラス”(緑茶を飲む器)をモチーフにしました。グリーンをベースに表現することで、“薄そうに思われがちな”味を払拭し、緑茶の王道感を担保しながら、ピンクや黄色のパステルカラーを配置することで、茶葉の香り立つ感じや「あまみ」の感じを強化しました。

[コカ・コーラ社の製品開発「綾鷹 茶葉のあまみ」篇] 数多もの試作の末にたどり着いた 緑茶の“あまみ”の秘密。

 

■緑茶が苦手な人にこそ、飲んでほしい

──今回の製品名は「綾鷹 茶葉のあまみ」と、「甘み」ではなく「あまみ」と表記されています。ひらがなにしたのはなぜですか?

吉田 「甘み」と漢字で書くと、砂糖を使った甘さのイメージが浮かんでしまうからです。それは、私たちが伝えたい甘さではありません。素材由来のあまさを表現したいときに、「あまみ」という表記が一番ぴったりだと思ったのです。

──「綾鷹 茶葉のあまみ」は、どんな食べものと合わせて飲むことを勧めますか?

執行 まずは「綾鷹 茶葉のあまみ」だけで飲んでいただき、茶葉そのものの味わいと「あまみ」を楽しんでいただきたいです。また、食べ物と合わせるなら、やさしい味わいなので、和食やお弁当と一緒に楽しんでいただくのをお勧めしたいです

──海外では、緑茶に砂糖を入れてある製品も売っていますよね。

執行 そうなんです。素材そのもののあまみを感じる、好む、というのは、日本独特なのかもしれません。日本人の味覚はとても繊細で、水に対しても「あまい」と表現することがある。本来なら、何の味もついていないはずなのに。そういう感覚で、緑茶そのものの味わいを表現したかったんです。実際、研究所には海外からの問い合わせがけっこうきています。海外でなぜ緑茶に砂糖を入れるかというと、渋くて飲みづらいからです。でも、「綾鷹 茶葉のあまみ」は渋み、苦みが抑えられているので、砂糖を入れなくても飲みやすい。たくさんの人にとって、「綾鷹 茶葉のあまみ」が緑茶を飲むきっかけになればうれしいですね。

吉田 そうですね。これからも綾鷹のファンを増やせるよう、頑張りましょう!

[コカ・コーラ社の製品開発「綾鷹 茶葉のあまみ」篇] 数多もの試作の末にたどり着いた 緑茶の“あまみ”の秘密。