「コカ・コーラ 」とポーラーベア (シロクマ )の関係には、90年以上もの歴史があります。1922年、ポーラーベア は「コカ・コーラ 」のキャンペーン広告に初登場。その後数々のキャンペーンを経て、「コカ・コーラ 」には欠かせないマスコットキャラクターになりました(米国のザ コカ ・ コーラ カンパニー は、WWF<世界自然保護基金>と提携して北極圏に生息するポーラーベア の保護活動にも力を入れています)。
近年は、まるで生きているかのようになめらかな動きをするポーラーベア のCGアニメをザ コカ ・ コーラ カンパニー が制作しています(みなさんご存知ですね)。
今回は、「コカ・コーラ 」の“大切なパートナー”ポーラーベア のCGアニメが誕生した経緯を追ってみましょう。
文=コカ・コーラ ジャーニー 編集部
ポーラーベア のCGアニメ制作を指揮したケン・スチュアート は、ラブラドールレトリバーの子犬を飼っていました。あるとき、愛犬の顔つきがポーラーベア にそっくりなことに気づき、そこからキャラクターの着想を得たと言います。1993年のことでした。
スチュアート は、当時、世界最先端のCG技術力を誇っていた、ロサンゼルスのリズム&ヒューズ社 にアニメの制作を依頼することに決めました。しかし、彼らの技術をもってしても、生き生きとした動きを表現するためには膨大な手作業が必要でした。
では、初期の作業内容を具体的にご紹介しましょう。はじめに、イラストレーターのユージーン・イェルチン が描いたポーラーベア の絵コンテを基に、制作チームのメンバーがたくさんの下絵を鉛筆で描きました。次に、制作チームは本物のポーラーベア の映像や写真を参考にして、頭や胴体、手足の自然な動きを研究しました。そして彫刻家が粘土でポーラーベア の頭部をつくり、最終的なキャラクターデザインを決めていきました。
このようにして生まれたポーラーベア はたちまち人気を博し、彼らが登場する「コカ・コーラ 」の広告は数多く制作されました。第1作目のポーラーベア は、「コカ・コーラ 」を手にのんびりオーロラを眺めていますが、翌年1994年の第17回冬季競技大会(リレハンメルオリンピック )に合わせたキャンペーン広告では、リュージュやスキージャンプといったウィンタースポーツで大活躍します。ほかにも、一家でクリスマスツリーを飾ったり、ほかの動物と戯れたりと、さまざまな動きや表情を見せ、私たちを楽しませてくれました。
ポーラーベア が動き出す瞬間に立ち会ったデジタルアーティストのトッド・シフレット に、当時の様子を伺いました。
──1993年当時のCG技術は、現在ほど発達していなかったと思います。画面上でポーラーベア を動かすために、技術的に苦労した点を教えてください。
シフレット 当時のコンピューターには、使用する画像データを保管するのに必要な、ぎりぎりの容量しか搭載されていませんでしたから、毛などの細かい描写はできるだけ省略しましたね。ただ、ポーラーベア の毛並みのフサフサ感だけは表現したかったから、さまざまな工夫を凝らしましたよ。ポーラーベア の姿の変遷を時系列で見ていけば、技術がどれだけ進歩してきたかが分かります。
──プロジェクトを進める中で、特に印象深かったことは何ですか?
シフレット バックアップデータをクラウド上に保管する技術が開発されるはるか以前のことですから、私たちはデータのバックアップにオープンリールのテープを使用しなければなりませんでした。これは非常に時間と手間のかかる方法です。おかげでプロジェクト中は、寝る暇もありませんでしたね(笑)。ちなみに、当時はコンピューターの台数よりも多くの人が作業に携わっていたんですよ。
今でも覚えているのは、新入りだった私が、夜のシフトを担当していた日のこと。その晩私は、コンピューター上のデータをすべて消去するコマンドをうっかりタイプしてしまったんです。すべてのデータを完全に消してしまったと思いこんだ私は、一瞬にしてパニックに陥りました。いくつもの部屋をうろうろして悩み抜いた挙句、制作メンバー全員に自分のしてしまったことを白状しました。幸い、バックアップデータを用いてデータを復旧する方法を知っていたメンバーがいて、そのおかげでプロジェクトを続行することができたのです。
──最初のポーラーベア のキャンペーン広告に対する反応はいかがでしたか?
シフレット 私たちのCGアニメを使ったTVコマーシャルのヒットによって、私たち自身も大きな注目を浴びることになりました。第1作の人気が非常に高かったおかげで、次作以降の制作も決まり、私は少なくともあと3本のコマーシャルに関わることとなりました。そのうち1本はポーラーベア の家族がクリスマスツリーを丘の上から転がすという内容のもの、もう1本は1994年のオリンピックに合わせて制作したものです。
制作にあたっては、新しい技術を積極的に取り入れることを心がけましたね。結果として、年を追うごとに彼らの毛並みはどんどんリアルさを増したし、複数のポーラーベア を同時に動かすこともできるようになったんです。私はこの仕事を非常に楽しんでいましたし、ポーラーベア のTVコマーシャルがCGアニメーション史に残る重要な作品として、人々の記憶に残っていることを嬉しく思います。
動画: 2013年制作のショートフィルム(プロデューサー:リドリー・スコット )
近年は、まるで生きているかのようになめらかな動きをする
今回は、「
文=
■CGアニメ制作の“秘技”を公開

では、初期の作業内容を具体的にご紹介しましょう。はじめに、イラストレーターの

■CGアニメ制作スタッフ特別インタビュー
──1993年当時のCG技術は、現在ほど発達していなかったと思います。画面上で
シフレット 当時のコンピューターには、使用する画像データを保管するのに必要な、ぎりぎりの容量しか搭載されていませんでしたから、毛などの細かい描写はできるだけ省略しましたね。ただ、
──プロジェクトを進める中で、特に印象深かったことは何ですか?
シフレット バックアップデータをクラウド上に保管する技術が開発されるはるか以前のことですから、私たちはデータのバックアップにオープンリールのテープを使用しなければなりませんでした。これは非常に時間と手間のかかる方法です。おかげでプロジェクト中は、寝る暇もありませんでしたね(笑)。ちなみに、当時はコンピューターの台数よりも多くの人が作業に携わっていたんですよ。
今でも覚えているのは、新入りだった私が、夜のシフトを担当していた日のこと。その晩私は、コンピューター上のデータをすべて消去するコマンドをうっかりタイプしてしまったんです。すべてのデータを完全に消してしまったと思いこんだ私は、一瞬にしてパニックに陥りました。いくつもの部屋をうろうろして悩み抜いた挙句、制作メンバー全員に自分のしてしまったことを白状しました。幸い、バックアップデータを用いてデータを復旧する方法を知っていたメンバーがいて、そのおかげでプロジェクトを続行することができたのです。
──最初の
シフレット 私たちのCGアニメを使ったTVコマーシャルのヒットによって、私たち自身も大きな注目を浴びることになりました。第1作の人気が非常に高かったおかげで、次作以降の制作も決まり、私は少なくともあと3本のコマーシャルに関わることとなりました。そのうち1本は
制作にあたっては、新しい技術を積極的に取り入れることを心がけましたね。結果として、年を追うごとに彼らの毛並みはどんどんリアルさを増したし、複数の
動画: 2013年制作のショートフィルム(プロデューサー:
コカ・コーラ 公式アカウント