対応のスマホ自販機でドリンクを買うとスタンプが1つ貯まり、それを15個集めると無料のドリンクチケットがもらえるスマートフォンアプリ「Coke ON」。そのダウンロード数は、いよいよ1,000万の大台に乗ろうとしています。また、4月には歩くだけでスタンプが貯まっていく「Coke ON ウォーク」の機能も追加され、健康志向の女性のユーザーも増加中。
ただのスタンプカードアプリにとどまらない「Coke ON」が牽引するデジタルマーケティングの未来とは、どんなものなのでしょうか。その現在とこれからについて、マーケティング本部 iマーケティング統括部長の豊浦洋祐に話を聞きました。

文=崎谷実穂
写真=村上悦子

 

■1日約1万件ダウンロードされる人気アプリ

──スマートフォンアプリ「Coke ON」の1,000万ダウンロードを記念して、7月2日からキャンペーンが始まっています。こちらは、どんなキャンペーンなのでしょうか。

豊浦 アプリ対応の「スマホ自販機」でドリンクを購入したことのある方全員で、1,000万個のスタンプを山分けしてもらうというものです。感謝の気持ちを込めて、皆さんにスタンプをお送りします。

──アプリがリリースされたのは2016年4月。そこから、1,000万ダウンロードに至るまではどんな道のりだったのでしょう。

豊浦 1,000万ダウンロードは、2年前にリリースしたときには想像もしていなかった数字です。順調すぎるくらい順調だ、と感じています。

とはいえ最初は、そこまでダウンロード数が伸びなかったんです。アプリのリリースと同時にスマホ自販機を導入していったので、対応する自販機の数も数十台程度からのスタート。「Coke ON」のプロモーションをしたくてもできない、という状態が続きました。

──アプリをダウンロードしても、対応の自販機がないとスタンプが貯められないですもんね。

豊浦 そうなんです。そして、2016年の10月あたりにスマホ自販機が10万台を超えたので、そこから「Coke ON」のマーケティング活動にも力を入れ始めました。具体的には、テレビCMを含めた広告を打ったんです。これまで日本コカ・コーラはドリンクの広告しかやってこなかったので、スマホアプリのCMをつくるというのはけっこうな勇気のいることでした。

結果的にはその広告が功を奏して、10月時点では約130万ダウンロードだったのが、年末には230万ダウンロードまで伸びました。

26万台の自販機とつながるIoTアプリ「Coke ON」が描くデジタルマーケティングの未来とは?

──2ヵ月で70万ダウンロードも!

豊浦 しっかりマーケティング活動をするとダウンロード数が伸びるということが確信できたので、2017年、2018年もテレビCMを含めた大きな広告プロモーションをやっていきました。

ドリンクのサンプリング(無料配布)も、ダウンロード数の伸長にいい影響を与えたと考えています。オリンピックと連動して、日本が金メダルを勝ち取ったら「コカ・コーラ」のドリンクチケットを配布するなど、これまでに合計約200万本のサンプリングをおこなってきました。

その結果、今ではプロモーションをしていない時期でも、1日あたり1万人もの人にダウンロードしていただけるようになりました。「Coke ON」自体の認知度が上がってきたのを感じますね。

 

■「Coke ON」で10歳代が自販機を使うように

──「Coke ON」には「友だちを紹介してスタンプをもらう」という機能もありますね。人から人へ、口コミで広がっているところもあるのでしょうか。

豊浦 それは大きいと思います。口コミの力は、Twitterで「Coke ON」のことをツイートしている件数が増えていることからも感じます。

また、「Coke ON」を利用してくださっているのはどんな方なのか調べると、関西地域に住む子持ちの女性が多いという結果が出ました。これはきっと、“ママ友”に勧めて友人と一緒にスタンプを集めている方が多いからではないか、と推測しています。

関西はもともと、「Coke ON」を起動している率が高いエリアなんです。僕自身、大阪出身なので分かるのですが、関西人は「おトク」が大好き(笑)。スタンプを貯めたら無料でドリンクがもらえる、というシステムにはまりやすいんだと思います。

──「Coke ON」を導入することで、自販機での売り上げは上がりましたか?

豊浦 上がっています。「スマホ自販機」と非対応の自販機の売り上げを比べると、「スマホ自販機」のほうがコンスタントに4〜5%高いんです。また、自販機でドリンクを購入する層にも少し変化が出てきています。

──どんな変化でしょうか。

豊浦 自販機の主力製品は缶コーヒーなので、これまで自販機のヘビーユーザーは30歳代、40歳代の男性が多かったんです。それが「Coke ON」リリース後から、若年層である学生の利用が増えてきたという印象です。

学生は、おこづかいで月の出費をまかなっている方が多く、価格にすごく厳しい。でも、スーパーやコンビニで買うより何十円か高かったとしても、「Coke ON」を使って自販機で買い、スタンプを貯めるという新しい体験に、エモーショナルな価値を見出してくれている。それは、とてもうれしいことですね。

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■ユーザーの「歩きたい」願望を後押しする新サービス

──今年の4月には新サービス「Coke ON ウォーク」がリリースされました。こちらは、1週間の歩数目標や累計歩数の目標を達成すると、「Coke ON」のスタンプが獲得できるという機能です。この機能を追加したことによる手応えはいかがですか。

豊浦 とても好調です。現在、導入してから2ヵ月ちょっとですが、すでに140万人の参加者がいます。リリース時点で「Coke ON」のダウンロード数が850万近くあったとはいえ、実際に「Coke ON ウォーク」の画面を確認し、目標歩数を設定するところまでやってくださる方はそんなに多くないのでは、と考えていました。その予想が覆されましたね。

──新機能を追加しようと考えた理由はなんだったのでしょうか。

豊浦 「Coke ON」の起動率を調べると、ダウンロードしたものの使ったことがないという方が多かったんです。そこで、「アプリを開くきっかけとしての機能を追加できないか」と考えました。

まずは起動のきっかけになればいい、くらいに思っていたのですが、実際には「Coke ON ウォーク」を導入することで、ドリンクを買ってくれる人も増えたんです。

──「Coke ON ウォーク」を使っている人のほうが、自販機で購入する率が高いということですか?

豊浦 そうです。「Coke ON ウォーク」に参加している人は40%の割合で、自販機でドリンクを買ってくださっています。参加していない人の購入率は33%なので、これは明確に差が出ていると考えていいでしょう。歩いてスタンプを貯めはじめると、このまま最後まで貯めたいという気持ちが生まれてくるのでしょうね。そうなると、ドリンクを購入してスタンプをもらうという動機が高まるのだと思います。

──新サービスを考えるにあたり、“歩く”以外のアイデアもあったのでしょうか。

豊浦 他にも10以上の候補がありました。それらを消費者調査にかけたところ、歩数計のアイデアが一番人気だったため、「Coke ON ウォーク」を導入することにしたんです。

そもそも「Coke ON」アプリのコンセプトは、「買う」「飲む」「楽しむ」という3つのモーメントにおいて、コカ・コーラ社ならではの驚きや楽しさを提供するというものです。「Coke ON ウォーク」の発想も、この考えに基づいています。立ち上がりが順調だったのも、ユーザーを主語にしたサービスを心がけたからだと思っています。

 

■26万の“店舗”の強みを活かす方法

──ユーザーを主語にする、とは?

豊浦 「Coke ON ウォーク」って、ユーザーがもともとやりたかったことをサポートする機能なんです。「健康のためにもっと歩きたい」というのは、ユーザーが主語になっている欲求ですよね。そして、自分で設定した目標歩数を達成できたら、それだけでユーザーはうれしい。健康にもいい。「Coke ON ウォーク」はさらにそこにスタンプを追加しているだけなんです。

たとえば、この新機能が「『Coke ON』を1日に1回自販機に接続したら、スタンプをあげます」だったらどうでしょう。僕らとしては、「Coke ON」を起動してくれる回数が増えるからいいけれど、その行為自体は、ユーザーになんのうれしさももたらさないですよね。

26万台の自販機とつながるIoTアプリ「Coke ON」が描くデジタルマーケティングの未来とは?

──たしかに、それはただの作業です。ユーザーではなく企業が主語になっているサービス、ということですね。

豊浦 それだと、継続して使っていただけないと思うんです。参加者もここまで増えなかったでしょう。だから、ユーザーの気持ちに寄り添うのが重要だと思っています。ユーザーがやりたいことと僕らがやってほしいこと、その接点となるような新機能をこれからも考えていきたいですね。

──これからの「Coke ON」、そして自販機の可能性はどういうところにあると思いますか。

豊浦 「Coke ON」は、ただのアプリではないんです。今、全国に26万台(*2018年6月末時点)のスマホ自販機があって、その自販機とスマートフォンをBluetoothでつなぐことができる。これは、企業のIoT活用としても例を見ない規模です。自販機は、一つの店だと考えることができます。今日本で一番多いファストフードチェーンでも、全国の店舗数は約2,900店。その100倍くらいのコカ・コーラ社の“店舗”が全国にあるわけです。

──そう考えるとすごい数ですね。

豊浦 その“店舗”では、スマホと接続することで日々購買データを取得しています。どんな人が、どこで、何を買ったかということが分かるようになった。そのデータを分析し、次のマーケティングに活かすというサイクルも確立できています。これはデジタルマーケティングの分野で、現在、コカ・コーラ社だけが実現できていることだと自負しています。

──「Coke ON」を導入したことで、今までぼんやりとしていた購買者像が明確になったんですね。この先は、どんな展開を考えていらっしゃるんでしょうか。

豊浦 東京2020オリンピックまでに、ダウンロード数を2,000万まで伸ばしたいですね。その上で「Coke ON」というプラットフォームを、スマホ自販機にとどまらず、他の販売チャネルでも活用していきたいと考えています。東京2020オリンピックと関連して、コカ・コーラ社にしかできない体験やサービスを提供していけたらいいですね。そのタイミングが、「Coke ON」の次の大きな進化のポイントだと考えています。

26万台の自販機とつながるIoTアプリ「Coke ON」が描くデジタルマーケティングの未来とは?

とようら・ようすけ / 2001年にP&G Japanに入社。デジタルマーケティングを統括。09年にナイキ・ジャパン入社。デジタルマーケティングの責任者を経て、ランニングカテゴリーの広告クリエイティブ、メディア、デジタル全般の消費者コミュニケーション開発を担当。13年に日本コカ・コーラ入社。iマーケティング統括部長として、オウンドメディア、ソーシャルメディアを含むデジタルマーケティング全般を統括。

>>「Coke ON」公式サイトはこちら

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