日本マクドナルド社日本コカ・コーラ社をはじめ、
多くの企業や団体、個人が支援する公益財団法人によって運営される、
国内の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」。
病気の子どもに付き添う家族をサポートするためにつくられた
“第二のわが家”は、いったいどのような場所なのでしょうか。
その現場を『コカ・コーラ ジャーニー』編集部が訪問しました。

文=香川 誠
写真=松本昇大


■利用料1,000円の「もう一つのわが家」

 東京大学本郷キャンパス内、有名な赤門とは反対側にある池之端門近くに、周囲のアカデミックな建物とは雰囲気の異なる建物がある。小さな美術館を思わせるコンクリート打ち放しの外観。それが、「ドナルド・マクドナルド・ハウス 東大(通称:東大ハウス)」だ。「大学内なのにハウス?」と不思議に思う人もいるかもしれないが、ここは文字通り人が暮らす家。いつでも快適で、家族の温もりが感じられる“第二のわが家”である。
今日も“第二のわが家”は、病気の子どもをもつ家族たちをサポートする……
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が救う小さな命

今日も“第二のわが家”は、病気の子どもをもつ家族たちをサポートする……
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が救う小さな命

東大ハウス」は東京大学本郷キャンパス内にある。
洗練された建築デザインとスタッフたちの温もりが調和している


 東大ハウスは、同じ敷地内にある東京大学医学部附属病院(東大病院)に入院、通院している子どもとその家族のために2011年に建てられた。世界38ヵ国353ヵ所(2015年9月現在)で展開されている「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の一つで、看病する患者家族の負担を軽減するために1日1,000円という低料金で滞在場所を提供している。ホテルではないため着替えなどは自分で用意しなければならないが、共用のダイニングやキッチンなどが付いているので、わが家にいるかのように過ごすことができる。
今日も“第二のわが家”は、病気の子どもをもつ家族たちをサポートする……
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が救う小さな命

施設の2階と3階に、合計12室の部屋があり、ベランダは広く開放感いっぱい。
それぞれの部屋の入口にある動物のイラストは、
人気キャラクターの「ミッフィー」で知られる絵本作家、
ディック・ブルーナ氏がデザインしたものだという


今日も“第二のわが家”は、病気の子どもをもつ家族たちをサポートする……
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が救う小さな命

4階には共用のアイランド型キッチンとダイニング、
リビング、キッズコーナーがある。
食事をしたり、子どもを遊ばせたり、テレビを観たり、
他の家族と交流したりと、楽しみの多い場所だ


 都内在住の松平裕子さん(41歳)は昨年、この東大ハウスを利用した一人だ。妊娠7カ月で突然破水して救急搬送された先が、たまたま東大病院だった。

「予定より早く生まれた長男の颯樹さつき)は体重が1,100グラムと小さいうえ、『ファロー四徴症』という心臓の病気をもっていました。そのため生まれてすぐにNICU(新生児集中治療室)での治療が必要でした」

 出産直後に処置が施されたため、母子の対面は叶わなかった。裕子さんが初めて目にしたのは、呼吸器をつけて保育器の中で寝ている息子の姿だった。裕子さんが保育器の小窓から手を入れて体を触ると、颯樹くんは小さな手で握り返してきた。母親になれた喜びに浸る一方で、これからのことを考えると頭の中は不安で一杯になった。

 颯樹くんの入院中、産後の疲れが残った体で電車を乗り継ぎ片道1時間半、自宅から病院まで通うことはできるのか。それができないならウィークリーマンションを近くに借りるしかない。そうなると費用はいったいいくらかかるのか。そもそも颯樹くんの退院がいつになるのか誰にも分からず、予定の立てようがない。

 息子の病気とどのように向き合っていけばいいのか分からないことばかりだったが、裕子さんには一つだけ決めていることがあった。

「私がしてあげられることは、NICUで治療を受ける颯樹のもとに搾乳を届けることくらい。颯樹が家で一緒に過ごせるようになるまで、それだけは自分でやろう」