文=ジェイ・モイエ

 

■50年に一度の「小売革命」が到来!

「私たちは間違いなく、過去50年で最大の『小売革命』に直面しています。ここ数年で、大手の小売企業が小規模なオンラインショッピングの会社の買収を次々に進めています。そして、買収された会社がオフラインでも事業展開をすることによって、実店舗とオンラインの世界が統合されつつあるのです。変わり続ける消費者の購買行動が、その流れを加速させています」このように語るのは、コカ・コーラ ノースアメリカ(北米事業)のeコマース部門を統括するジョン・キャロルです。

調査会社カンター・リテールによると、米国消費者が飲食料品の購入に使う金額のうちeコマースが占める割合は、現在ではわずか2%に過ぎないものの、2025年までにその数字は 8%に上昇すると予想されています。また、米国の消費者の23%が、毎月オンラインで飲食料品を購入しているとのデータもあります。

このような変化の波に乗るべく、コカ・コーラ社は取引先の小売企業やレストラン運営企業と連携し、eコマースを通じたコカ・コーラ社製品の購入機会の拡大に取り組んでいます。また、デジタルマーケティングやサプライチェーン管理などにテクノロジーを活用することで、コカ・コーラ システム(*1)全体のビジネスの効率化も進めています。

「私たちはeコマースを単なる販売チャネルの一つとは捉えてはいません。私たちはeコマースを通じて、人々が製品を購入し、受け取り、使用するまでの一連の体験を取り巻く環境の再構築に取り組んでいるのです。その中で競争に勝つためには、変わり続ける消費者行動を理解し、自分たち自身も従来の考え方を大きく変えていかなければなりません。自ら変化を生み出さない限り、周囲の変化に振り回されかねない環境ですが、私たちはこれを“課題”ではなく、競争力を発揮する“チャンス”だと考えています」(キャロル

このチャンスを活かすべく、コカ・コーラ社はどのようなチャレンジをしているのでしょうか? 小売革命の最前線を切り拓くための、6つの取り組みを紹介します。

小売業界にイノベーションを! 米コカ・コーラ社が進める“eコマース革命”6つのポイント

 

■その1:スマートスピーカーやモバイルアプリとの連携

「アレクサ(*2)、『コカ・コーラ』を注文して!」

コカ・コーラ社は Amazon Echoなどのスマートスピーカーと連携して、音声によるコカ・コーラ社製品の注文の円滑化に取り組んでいます。「スマートスピーカーは製品を買い物リストに加えるためのツールにとどまらず、ブランドと消費者をつなげる新しいプラットフォームになると期待しています。毎週のように店へ買い物に行く必要がなくなり、生活が楽になる利便性が何よりの強みですね」(キャロル)。同様に、レストランへ行く前に食べたいものを注文しておくことができるモバイルアプリで、コカ・コーラ社製品の販売を拡大する方法も検討中です。

 

■その2:オンラインで製品を際立たせるクリエイティブ

コカ・コーラ社は長年にわたり、売り場で消費者を惹きつける広告やキャンペーン展開のノウハウを磨いてきました。もちろんオンラインの世界でも、売れるためには製品を目立たせることが大前提。高画質の写真を用い、感性を刺激するコピーをあしらい、さらには個々の消費者の傾向に合わせたターゲットマーケティングを行うなど、オンラインショップでのクリックを促すためにさまざまな手法を駆使しています。

小売業界にイノベーションを! 米コカ・コーラ社が進める“eコマース革命”6つのポイント

 

■その3:大人気のデリバリーサービスと連携

コカ・コーラ社はオンデマンドのフードデリバリーサービス「Uber Eats」や「DoorDash」でコカ・コーラ社製品を注文できるようにしたり、調理キットのデリバリーサービス「Chef’d」でメニューに合わせたドリンクをレコメンドするサービスを、一部の地域で試験導入しています。「デリバリーサービスの注文のうち、コカ・コーラ社製品が含まれるものは現在全体の1割ほどにすぎませんから、いかに膨大な機会が眠っているかが分かるでしょう。消費者により良いデリバリー体験を提供し、レストランやファストフード店など顧客企業の利益拡大につながるような仕組みづくりを進めているところです」(キャロル)。

小売業界にイノベーションを! 米コカ・コーラ社が進める“eコマース革命”6つのポイント

 

■その4:受け取りサービスに便乗する “オフライン戦略”

消費者がオンラインで注文した生鮮食品を、店舗やロッカーなど自宅以外の場所で受け取る“クリック&コレクト”サービスが拡大しています。でも、大量の買い物をする際には飲料の注文をうっかり忘れてしまうことも。そこで、受け取り場所の近くにコカ・コーラ社製品の売り場を設置し、消費者の“ついで買い”を促す試みが始まっています。

小売業界にイノベーションを! 米コカ・コーラ社が進める“eコマース革命”6つのポイント

2017年11月、投資家向けに「eフルフィルメント」プログラムの説明をするジョン・キャロル

 

■その5:ボトラー社が消費者に直接届ける、越境eコマース

100年以上にわたるコカ・コーラ社の歴史上初めて、ボトラー社が製品を顧客企業ではなく直接消費者の自宅に届ける「eフルフィルメント」というサービスの試験運用が始まっています。米国に住む消費者が「TaB」「Fresca」「コカ・コーラ」といった製品をパック単位で注文すると、メキシコのボトラー社が製品のピックアップ、梱包、出荷を行い、製品が直接消費者の家に届く仕組みです。

 

■その6:新ブランドの育成に活用

コカ・コーラ社の新ブランド育成部門は、外部パートナーと連携して、デジタルマーケットプレイスの新たな可能性を追求しています。「私たちは e コマースを、新ブランドを育成するインキュベーションツールとして活用したいと思っています。eコマースを通じてオンラインでブランドの価値を高めてから、次の展開につなげる手法を構築しているところです。マーケティングにあたっては、精度の高いターゲティング技術を活用する効果も期待できます」(キャロル)。

いかがでしたか? コカ・コーラ社ではこのように、eコマースを活用して消費者一人ひとりに合った利便性の高いサービスの実現に取り組んでいます。今後の展開にどうぞご期待ください。

*1 コカ・コーラシステム:原液の供給と、製品の企画開発・マーケティングを担うザ コカ・コーラ カンパニーと、製品の製造、販売などを担うボトラー社や関連会社などで構成される。

*2 アレクサ:Amazonが開発した、AIアシスタント。スマートスピーカーのAmazon Echoに搭載されており、「アレクサ」と呼びかけると起動する。