7月19日は「女性の社会進出を応援する記念日」であることをご存知でしょうか? この日は日本初の女性大臣が誕生した日(*1)であり、二人の日本人女性がマッターホルン北壁の登頂を世界で初めて、女性だけのパーティーで成し遂げた日(*2)なのです。
この記念日にちなみ、『Coca-Cola Journey』では、日本コカ・コーラで活躍する二人の女性社員の対談を行いました。一人は一度会社を退職し、17年間「専業主婦」を経験した後に、パートタイマーから仕事復帰を果たした薄井シンシア。もう一人は新卒で日本コカ・コーラに入社後、3人の子どもを育てながら働き続け、現在はグループマネジャー職にある乙黒慧
ワーク・ライフ・バランスやワーク・ライフ・インテグレーション(*3)に悩む女性が増えている中、それぞれ異なるキャリアを築いてきた二人の話を通じて、企業における“本当のダイバーシティ(多様性)”のあるべきかたちを探ります。

*1 1960年7月19日、池田勇人内閣が発足し、中山マサ衆議院議員が厚生大臣に就任した。
*2 1967年7月19日、東京女子医大山岳部の今井通子若山美子の二人がアルプス三大北壁の一つであるマッターホルンの北壁からの登頂に成功した。
*3 仕事もプライベートも人生の大事な一部であるため、両者を分離してバランスを取ろうとするのではなく、統合(Integration)して双方の高い充実を目指そうという考え方。

文=小山田裕哉
写真=村上悦子

 

■ダイバーシティの本気度はどこに表れる?

──正反対のキャリアを歩んできたお二人ですが、日本コカ・コーラでの現在の役職は?

乙黒 私は1999年に入社し、現在は技術・サプライチェーン本部でグループマネジャーを務めています。いろんな部署のハブになって、企画から製品化への商業化のプロセスをまとめていく立場です。

──薄井さんは『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』という著書も出されているように、17年間にわたって専業主婦として子育てに専念され、それから現在のキャリアを新しく築かれました。

薄井 仕事に復帰したのが47歳のときで、最初は時給1,300円のアルバイトからスタートしました。それからホテル業界に転職して、前職では高級ホテルのディレクター職を務めていました。日本コカ・コーラに入社したのは最近です。東京2020オリンピックのホスピタリティ担当として、お客様やコカ・コーラ社関係者のアテンド、開催会場で働くスタッフのユニフォームの手配などを行うチームづくりに取り組んでいます。

──乙黒さん日本コカ・コーラで3回の産休・育休を取りながら、一度もキャリアを中断させることなく勤め続けてきました。そういった女性の仕事と育児の両立に関して、社内の制度はかなり充実しているんでしょうか?

薄井 初めて産休を取ったのは何年?

乙黒 2002年ですから、入社して3年後ですね。

薄井 おそらく、その当時の日本では産休も育休も今より広まってなかったと思います。でも、乙黒さんがしっかり取得できたということは、時代を先取りして休みやすい制度を整えていたからですよね。私が入社してみても、子どもを産んでも仕事を続けている女性が多い会社という印象です。

乙黒 両立している方は実際に多いですね。

みんなが“スーパーウーマン”を目指さなくていい! 日本コカ・コーラの女性社員が語る「本当のダイバーシティ」

日本コカ・コーラ 技術・サプライチェーン本部
コマーシャリゼーションリード&PMO グループマネジャー
乙黒慧

薄井 私はこの会社はダイバーシティをすごく実現していると思うんです。これは産休や育休の制度が充実している、ということだけじゃなくてね。私は日本のいろんな会社を見てきましたけど、私みたいに専業主婦から仕事に復帰した人を受け入れる場合、ほとんどがパートか派遣。ダイバーシティを理念に掲げている会社でもね。

だけど、ここでは乙黒さんと私みたいな真逆の生き方をしてきた人が一緒に社員として働いている。これが本当のダイバーシティであり、日本コカ・コーラのすごいところだと言い切っていいと思います。

乙黒 うちにいると、そういう環境を特別だと思わないですよね。転職や中途採用も珍しくないので、いろんなキャリアの人がいるのが当たり前になっています。私は新卒の同期が12人いましたが、今では半分も残ってないですからね。

薄井 人の流動性と、それから会社がダイバーシティに本気で取り組んでいるかどうかというのも大きいですよね。私がここのオリンピックチームにアプライ(応募)したとき、誰からも年齢を聞かれませんでした。採用のプロセスの中で、一度もです。私はそれも「会社が本気でダイバーシティに取り組んでいる」という証拠だと感じました。

みんなが“スーパーウーマン”を目指さなくていい! 日本コカ・コーラの女性社員が語る「本当のダイバーシティ」

日本コカ・コーラ オリンピック
東京2020年オリンピック ホスピタリティ
薄井シンシア

 

■ダイバーシティがカルチャーとして根付いている

──理念を掲げるだけではなく、ちゃんと実践されている、と。具体的な制度についてもうかがいますが、たとえば育児休暇はどのくらい取得できるのでしょう?

乙黒 私は最初の出産のときは1年ほど休みました。

薄井 それでいうと、育児休暇があるかどうかなんて、今の時代に議論することじゃないと思います。産休も育休も当たり前。ダイバーシティに取り組む会社の本気度を見るには、女性だけじゃなく男性が育休を取得しているかどうかが重要ですよ。

乙黒 うちの会社にはいますね。それに育休だけでなく、在宅勤務ができることで助かっている人も多いと思います。私も助けられました。子どもが小さいときは基本的に定時で上がるようにしていたのですが、どうしても終わらないときは、一旦すぱっと退社して、残りを自宅で仕上げることもできました。

薄井 最初のお子さんを産んだときから、職場に復帰するつもりだったの?

乙黒 基本的には復帰するつもりでいました。

薄井 仕事と育児の両立が無理だと思ったことはない?

乙黒 同僚やチームに迷惑をかけてしまうのではないかという思いはすごくありました。とにかく、それが一番つらかったですよね。

薄井 実際に周りが迷惑だと感じていなくても、自分はそう思っちゃうのよね。

──乙黒さんはそうしたつらさをどう乗り越えていったのでしょう?

乙黒 家族や同僚、上司といった周囲のサポートがなければ、絶対に両立できませんでした。ただ、とても印象的だったのは、妊娠したことを上司に報告した際、3回とも別の上司なのに、「いつ帰ってきますか?」と聞かれたことです。そういうルールが会社にあるんじゃないかと思うくらい、必ず言われるんですね。

でも、私自身が今ではマネジャーをやっていて、そうした研修を受けていません。「ダイバーシティに本気で取り組む」ということが、ルールではなく、日本コカ・コーラのカルチャーとして根付いていたんだなと思います。

みんなが“スーパーウーマン”を目指さなくていい! 日本コカ・コーラの女性社員が語る「本当のダイバーシティ」

──誤解がないようにうかがいたいのですが、その「いつ帰ってきますか?」というのは、「仕事に支障が出るから、早く帰ってこい」という意味ではない?

乙黒 そういうニュアンスではないですね。「休まれて迷惑だ」とか、「なるべく早く帰ってこい」とか、そういうことは一切言われていません。いつ帰ってくるか分かれば、私がいない間のメンバーの配置を考えることができる。そういう意味に受け取っていました。会社がそういうスタンスいてくれたことで、精神的に楽になったところはあります。

薄井 これは簡単なようで、すぐにできることじゃないですよね。まさに文化としてダイバーシティの精神が根付いているから、そういう対応をすることが普通になったのでしょう。

 

■“こうすべき”という生き方はない

──乙黒さんが子育てと仕事を両立させるために工夫していたことはありますか?

乙黒 両立させるための工夫……。

薄井 私を見ないで(笑)。私には絶対にできなかったことだから(笑)。

乙黒 会社を出たら完全にスイッチを切り替えるというのはありました。

薄井 お近くにご両親が住んでいるとか、ありました?

乙黒 1時間くらいのところにはいます。ただ、日々面倒を見てもらったということはないですね。熱を出したり、体調が悪いときにお願いすることはありました。社内の制度でいうと、時短勤務も使っていましたね。

薄井 そういう制度が整っているから続けられたというのはありますよね。

乙黒 そうですね。あとは本人がどうしたいかだと思います。自分がどうしたいか明確であれば、あとは会社の制度の活用の仕方を考えればいい。私と同じくらいの時期に産休を取っていた方は、産休明けにすぐフルタイムで復帰していました。どうするのが正しいかってことではなく、それぞれが自分のキャリアを考え、それに合わせて会社の制度を利用すればいいと思います。

みんなが“スーパーウーマン”を目指さなくていい! 日本コカ・コーラの女性社員が語る「本当のダイバーシティ」

薄井 女性のキャリアって、「子どもができたら家事に専念すべきだ」とか「これからの時代は仕事と育児を両立すべきだ」とか、“こうするべき”って言われることが多いけど、何か一つの価値観を押し付けるって、全然ダイバーシティではないですよね。子どもがいても仕事を続けていいし、専業主婦になってもいい。その人のキャリアはその人次第なんです。

もし、私も夫が転勤族じゃなくて、日本で子育てを続けることができたら両立していたかもしれない。でも、現実に夫は3年ごとに転勤するし、家にいない時間がずっと長い。家事を手伝ってもらうことはできないから、私が仕事を辞めて主体的に「専業主婦」を選んだんです。自分で納得して選んだから、自分の決断にすごく納得しています。

 

■ワーク・ライフ・バランスを一生で考える

薄井 でも今の若い女性を見ていると、専業主婦を選ぶことはキャリアが「ジ・エンド」になることだと思っている人が多い印象です。私には今年で29歳になる娘がいるのですが、これが「本当にあなたは私の子ども?」っていうくらい頭がいい娘で(笑)。ハーバード大学の法科大学院を卒業後、1年間マサチューセッツ州最高裁判所の書記官を務めて、秋からニューヨークの法律事務所に入社します。

乙黒 すごい経歴ですね。

薄井 そうでしょう(笑)。本当に彼女は優秀で、前からどんな仕事でも自分はやる自信があると言っていました。ただ、唯一自信のないことがあって、それは「母親になること」だと。それはなぜかっていうと、「自分が母親になるなら、絶対にママみたいになりたい。でも、ママは専業主婦で、自分が専業主婦になったら、これまでのキャリアがダメになってしまう。だから自信がない」と言うんです。

そういう彼女の葛藤を見て、専業主婦になってもキャリアは「ジ・エンド」じゃないってことを見せなくちゃいけないと思いました。だから私は仕事に復帰したんですよ。

私の娘がそうだったように、日本の若い女性も専業主婦に対してネガティブな印象を持っている人は増えています。でも、それはワーク・ライフ・バランスを1日とか1ヵ月とか短いスパンで考えているから起こることで。私は「ワーク・ライフ・バランスは一生で考えてもいいんじゃない?」って提案したいんです。

みんなが“スーパーウーマン”を目指さなくていい! 日本コカ・コーラの女性社員が語る「本当のダイバーシティ」

乙黒 それにはすごく賛成です。

薄井 私のワーク・ライフ・バランスは17年間が専業主婦で、それから新しいキャリアをつくるって考え方。実際のところ、「専業主婦になったらキャリアに戻れない」と思っている人は多い。確かに、元のキャリアには戻れないかもしれない。でも、新しいキャリアはつくれるの。若いときに敷いたレールに乗り続けるだけじゃなく、人生のところどころで乗り換えたっていい。

私は子育てのためにそれまでのキャリアを諦めたけど、専業主婦によって得たものもありました。今の自分があるのは、専業主婦をやったから。ずっと仕事をしていくのも豊かなキャリアだし、途中で専業主婦をするのも豊かなキャリア。どっちが正しいとかじゃなくて、両方ともオッケーなんですよ。

どんな女性もこうすべき、という「Right Answer(正解)」はない。よくメディアでは仕事も育児もバリバリ両立している人を「スーパーウーマン」みたいに言うけど、みんながそうあるべきなんてことは絶対にない。その人、そのときに応じた答えがあるだけなんです。会社と社会は、そういうそれぞれの選択に応えてくれる存在であるべきだし、日本コカ・コーラはそれを実現している会社だと思います。

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[写真左から]
薄井シンシアうすい・しんしあ)/ 17年間の専業主婦生活を経て、アルバイトから高級ホテルのディレクター職まで経験。日本コカ・コーラでは東京2020オリンピックのホスピタリティ担当を務める。専業主婦の職場復帰の促進にも取り組み、著書に『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)がある。

乙黒慧おとぐろ・けい) / 1999年入社。3人の子どもを育てながら日本コカ・コーラで働き続け、現在は技術・サプライチェーン本部でグループマネジャーを務める。