文=ジェイ・モイエ

 

■アイスランド代表ゴールキーパーは、究極のダブルワーカー

6月14日に開幕したFIFA ワールドカップロシアTMから遡ること数ヵ月前、後に、1次リーグでアルゼンチンのスーパースター・メッシのペナルティキックを止めることになるアイスランド代表チームのゴールキーパーのハンネス・ソール・ハルドーソンは、二つの重要な仕事を両立させるべく奮闘していました。代表チームのゴールキーパーとしてトレーニングに励む一方、大会時に自国で放映される「コカ・コーラ」CMの制作をしていたのです。

現在34歳のハルドーソンは、2014年にプロサッカー選手になりました。世界のトップレベルで戦う選手としてはかなり遅咲きですが、自らの熱情の赴くまま、サッカーと映像制作という二つの仕事に取り組んできた結果が、今年になって最高の形で実を結んだのです。

アイスランドの広告代理店、マウラーのマネジング・ディレクターを務めるスノーリ・バロンは、ハルドーソンの親友です。バロンは、アイスランドがFIFA ワールドカップTM初出場が決定した瞬間のことを、こう振り返ります。

「出場が決まるや否や、ハルドーソンにメッセージを送りました。『私たちが待っていた瞬間だ。一緒に大きなことをやろう!』と」

サッカー選手としての勤めを果たしたハルドーソン。今度はCMディレクターとしての勤めを果たす番です。彼とマウラーのチームは何ヵ月もかけて、次のようなコンセプトの脚本をつくりあげました。「フィールドに立つ11人の選手だけではなく、アイスランドの国民が一体となり一緒にFIFA ワールドカップTMに行くのだ、という姿勢を、CMを通じて伝えようとしました」(ハルドーソン

聞いてビックリ!FIFA ワールドカップロシアTMアイスランド代表ゴールキーパーのもう一つの顔

コカ・コーラ」CMのセットでカメラを構える
アイスランド代表GKハンネス・ソール・ハルドーソン

 

■助け合い、共に戦うアイスランド人の魂を表現

ハルドーソン率いる撮影クルーは、2018年初頭からアイスランド国内各所でロケを実施。代表チームのスケジュールの合間を縫っての慌ただしい作業となりましたが、ハルドーソンは広告業界とサッカー業界にいる友人たちの力を借り、ときには誰かに代役を務めてもらいながら、FIFA ワールドカップTMにかける思いを着々と形にしていきました。

完成した「コカ・コーラ」CMのタイトルは、「Saman」(アイスランド語で『共に』という意味)。アイスランドの美しい自然が映し出された後、現役の漁師に重量挙げ選手、パン職人や溶接工、サッカー選手など、さまざまな職業人が登場します。映像からは「自分が、それぞれの職業の“アイスランド代表”だ」という気迫が伝わってきます。

動画:「コカ・コーラ」CM「Saman」

CM全編を貫く3拍子は、FIFA ワールドカップTMの応援でいまやすっかり有名になった「バイキング・チャント」という、アイスランドの伝統的な手拍子のリズムです。アイスランド人の心を一つにする象徴的なリズムが、国民の高揚感を見事に表現していますね。

「この数ヵ月、映像制作に費やした時間、私をサポートしてくれた人たちのこと、皆で取り組んださまざまな作業のことを振り返り、それらすべてが現在ピークを迎えている私のサッカー選手としてのキャリアに関わっていることを思うと、今回のプロジェクトは、私の仕事のハイライトと言っても良いものでした。一番思い入れのあるプロジェクトになりましたし、成果を誇りに思っています。CMを制作したことで、私自身、FIFA ワールドカップTMへの気持ちがドンドン高まっていきました。見てくださる人々にも私と同じ気持ちの高ぶりを感じていただけることを願っています」(ハルドーソン

下の動画(*音声はアイスランド語、字幕は英語のみ)では、CMの制作風景と、世界トップレベルで戦うサッカー選手がいかにして練習と映像制作を両立させることができたかを詳しく紹介しています。残念ながらアイスランド代表チームは1次リーグで敗退してしまいましたが、世界的に注目されるサッカー選手ハルドーソンの、ゴールを守るときとはまったく異なる顔をご覧ください。

コカ・コーラ」CM「Saman」メイキング動画