9月24日、「綾鷹」ブランドから初の特定保健用食品(トクホ)が発売されます。その名も「綾鷹 特選茶」。「トクホにしてはおいしい」ではなく、通常の緑茶と比べてもおいしさで選ばれる緑茶でありたい──。そんな意味を込めた名前です。
開発着手から発売までに要した歳月は、なんと4年。その甲斐あって開発途中の消費者調査でも驚くべき好評を博したこの新製品の開発秘話を、日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 ティーカテゴリー 緑茶グループ グループマネジャーの成岡誠に聞きました。

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文=崎谷実穂
写真=村上悦子

 

■「おいしさ」と「トクホの機能」を両立するという難題

──今回、トクホの「綾鷹」が新しく誕生しました。“特選茶”というネーミングには、どういう意図があるのでしょうか?

成岡 「“特”定保健用食品でも味わいで“選”ばれる緑“茶”」という意味で、“特選茶”とつけました。トクホの製品だとひと目で分かってもらうために、「特」の字が最初にくるのがいいと思ったんです。

以前、広告コミュニケーションで使っていた「選ばれたのは、綾鷹でした」という言葉が印象に残っている人も多いと思います。SNSなどではCMの放映が終わってからも、「選ばれたのは、〇〇でした」ともじって使われていたりしました。“特選茶”は、その「選ばれた」という言葉との親和性もいいと考えました。

──開発を始めてから発売まで、4年もかかったと聞きました。どんなハードルがあったのですか?

成岡 「綾鷹 特選茶」には、難消化性デキストリンという関与成分(*特定の保健の目的に資する栄養成分)が入っています。この成分は、食事から摂取した脂肪の吸収を抑え、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにします。また、食事から摂取した糖の吸収をおだやかにして、食後の血糖値の上昇をおだやかにします。その難消化性デキストリンを入れつつ、「綾鷹」の持ち味である「急須でいれたような本格的な緑茶の味わい」を実現するのが難しかったんです。

[コカ・コーラ社の製品開発 「綾鷹 特選茶」篇]開発着手から発売まで4年以上!「おいしさ」と「トクホ」を両立させた“こだわりと戦略”とは?

マーケティング本部 ティーカテゴリー 緑茶グループ グループマネジャー
成岡

 

──難消化性デキストリン自体には、味があるんですか?

成岡 味の感じ方は人それぞれですが、僕は苦味と、もったりした食感があるなと感じました。なので、そのまま緑茶に入れると、少し口に残る感じがするというか、すっきりしないんです。開発の第一歩として、通常の「綾鷹」にそのまま難消化性デキストリンを入れてみたんですよ。それでおいしければ、効率的に開発が進められますから(笑)。でも、それではやはりうまくいきませんでした。

──そこから試行錯誤をされた。

成岡 火入れ(*茶葉を焙煎すること)、茶葉の種類、いれ方、温度……さまざまな要素を変えてみて、難消化性デキストリンと相性の良い緑茶の味はどの方向なのか探っていったんです。火入れが強めで香ばしいほうが合うのか、または火入れを抑えた青っぽい味わいのほうが合うのか。既存のトクホ緑茶は苦いものが多いけれど、その苦味は本当に必要なのか。さまざまな組み合わせを試し、これは良さそうだとあたりをつけて、消費者調査をかけてみる。そして改善点を探し、また試作する。その繰り返しでした。

──試作品はどのくらいつくられたんですか?

成岡 正確な数は分かりませんが、開発チームは数え切れないほどの試作をしたはずです。おそらく、最初に「綾鷹」というブランドの緑茶を出した時の次に、多くつくったと思います。最初の「綾鷹」を開発した時は、世の中にまだ存在していない「にごりのあるPETボトル緑茶」をつくり出さなければいけなかった。そのハードルはものすごく高かったと思います。今回の「特選茶」は、その次に大きなチャレンジでした。

[コカ・コーラ社の製品開発 「綾鷹 特選茶」篇]開発着手から発売まで4年以上!「おいしさ」と「トクホ」を両立させた“こだわりと戦略”とは?

 

■目指したのは、緑茶全体でトップレベルの味わい

成岡 そもそも、この「特選茶」の開発を始めた2014年は、前年の秋に他社のトクホの緑茶が出たばかりの時期だったんです。消費者調査をしてみると、その製品は「トクホの緑茶の中ではおいしい」と人気を得ていることが分かりました。

さらに当時の「綾鷹」は、今ほど消費者から支持されていませんでした。実は「綾鷹」は、導入翌年の2008年と今の売り上げを比べると、10年で30倍以上伸びているんですよ。少しずつ大きなブランドになってきたんです。

──そうなんですね! では、2014年は今ほどシェアが大きくなかったと。

成岡 まだ成長段階にある、後発のブランドだったので、どうやったら当時人気を得ていたトクホ緑茶に勝てるのだろう……と常に考えていました。しかも「綾鷹」は、急須でいれた本格的な味わいの緑茶を目指しているブランドです。そもそもそのブランドで、味に影響を与えてしまう関与成分を入れたトクホの製品をつくるべきなのか。そんな疑問も、社内では出ていました。

議論を重ねた結果、我々がたどり着いた結論は、「トクホの中でおいしい緑茶」をつくるのではなく、「緑茶としておいしく、かつ、トクホでもある製品」をつくろう、というものでした。

──トクホの中ではおいしいと言われている製品も、緑茶全体として考えればそうではないかもしれない。

成岡 そうなんです。僕らは、緑茶全体の中でトップレベルのおいしさを実現しよう、と決めました。おいしさの基準をとても高いところに置いたんです。そのため開発は大変だったけれど、最終的に大きな成果を出すことができました。

現在発売されている通常の緑茶とトクホの緑茶を集め、名前を伏せて味わいの調査をやってみたんです。そうしたらなんと、通常の「綾鷹」と「綾鷹 特選茶」が、ずば抜けて高い評価を得ることができました。

[コカ・コーラ社の製品開発 「綾鷹 特選茶」篇]開発着手から発売まで4年以上!「おいしさ」と「トクホ」を両立させた“こだわりと戦略”とは?

出典:日本コカ・コーラ調べ、無糖茶飲用者

 

──まさに、「トクホにしてはおいしい」ではなく、緑茶としておいしい製品が完成したんですね。

成岡 トクホ・機能性表示食品の無糖茶の市場は、2013年と比較すると4年で約2倍に成長しています。でも、近年は伸び悩んでいる。我々はその原因の1つが、味にあると考えていたんです。いつもトクホ緑茶を飲んでいる人からも、「まずいというほどではないけど、毎日飲める味じゃない」「ごくごくとは飲めない」という声がありました。そして、「そんなにおいしくないから」と途中で飲むのをやめてしまった人もけっこういる。そういう人たちに対し、本当においしいトクホの緑茶を提供できれば、トクホ緑茶の市場もさらに成長すると考えました。

あとは、2013年以来、大型のトクホ緑茶の新製品が出ていないということも、マーケットが活性化していない原因だと考えられます。そこを、この「綾鷹 特選茶」を出すことで、打開できると考えています。

 

■日本の緑茶文化を牽引するブランドに

──「綾鷹 特選茶」は通常の「綾鷹」と比べて、製法やいれ方を大きく変えているんですか?

成岡 急須でやるような、かき回さずにじっくり抽出するいれ方、にごりを残す製法などは基本的に変えていません。ただ、ブレンドする茶葉の種類や、抽出の温度や時間を変えて、難消化性デキストリンに合うような味わいにしています。

通常の「綾鷹」と同じく、開発協力をしてくださっている茶舗・上林春松本店上林代表をお呼びして「茶葉認定式」も行いました。原料として選んだ茶葉を触って、見て、匂いを嗅ぐ。そして、定められた温度と湯量でお茶をいれ、色や香り、味わいを試してもらいました。その上で、これは上林春松本店の名を出すにふさわしいという承認をいただいています。

[コカ・コーラ社の製品開発 「綾鷹 特選茶」篇]開発着手から発売まで4年以上!「おいしさ」と「トクホ」を両立させた“こだわりと戦略”とは?

──この「綾鷹 特選茶」は、どういうシーンで飲んでもらいたいですか?

成岡 機能から考えると、食事と一緒に飲んでもらうのが一番いいと思います。おいしい食事の味を邪魔しないだけでなく、もっとおいしくしてくれる緑茶でもありますし。

さらに、単体でも楽しめる味わいなので、単に「緑茶を飲みたい」というときにも選んでもらいたいですね。緑茶が好きで、日常的に飲むという人には、ぜひ1回飲んでほしいなと思います。「トクホでこんなにおいしいお茶があるんだ!」と、びっくりしてもらえるはずです。そこから、「綾鷹」を飲んだことがない方にも、「綾鷹」というブランドの良さが伝えられると思っています。

──これからの「綾鷹」ブランドは、どんな展開をしていくのでしょうか。

成岡 今年「綾鷹 茶葉のあまみ」と「綾鷹 ほうじ茶」を発売しました。そして今回の「綾鷹 特選茶」。このシリーズを、まずはしっかり世の中に根付かせていきたいと思っています。さらに、再来年には東京2020オリンピックがあります。オリンピックを開催するというのは、ただ競技会をやるだけでなく、それをきっかけに自国の文化を世界に発信したり、再確認したりする機会でもあります。ですから、「綾鷹」を通じて日本の緑茶文化を国内外に発信し、急須でいれたお茶の味わいをみんなで楽しめたらいいなと考えています。

[コカ・コーラ社の製品開発 「綾鷹 特選茶」篇]開発着手から発売まで4年以上!「おいしさ」と「トクホ」を両立させた“こだわりと戦略”とは?

なりおか・まこと / 1999年、日本コカ・コーラ入社。2003年よりマーケティング本部にて、「爽健美茶」「ジョージア」「アクエリアス」を担当。14年からはティーカテゴリーの緑茶グループにて「綾鷹」ブランドを担当。15年から同グループのグループマネジャーを務める。