コカ・コーラ」ブランドは、2018年の年間イメージソングにLittle Glee Monsterリトルグリーモンスター)の「世界はあなたに笑いかけている」を起用しています。
2018年1月から「コカ・コーラ」のTVCMで流れ、本人たちも出演したサマーキャンペーンのTVCMは大きな話題になり、この曲はグループ最大のヒットを記録。10月29日から放映されているウィンターキャンペーンのTVCMでは、ガラッと雰囲気の変わったウィンターバージョンが使用されています。
これまでも、「コカ・コーラ」のTVCMは、BENNIE Kの「Dreamland」やAIの「ハピネス」など、いくつものヒット曲を生み出してきましたが、今年はどのようなブランド戦略のもと、音楽を決定したのでしょうか?
その背景を、楽曲制作を担当したソニー・ミュージックレベルズのチーフプロデューサー 灰野一平さんと、今回のパートナーシップを担当した日本コカ・コーラ マーケティング本部の安念剛が語ります。

文=小山田裕哉
写真=村上宗一郎

 

リトグリのルーツは「コカ・コーラ」にあり!?

──「コカ・コーラ」のCMに採用される音楽は、どのような基準で決められているのでしょうか?

安念 過去の「コカ・コーラ」のキャンペーンの中でも、TVCMの音楽はブランドのイメージを形成する重要な役割を担ってきました。人の記憶に残る要素として、音楽は非常に強い力を持っているので、キャンペーンにフィットする楽曲を選ぶのはすごく大切なことです。

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部
IMC マーケティングアセット グループマネジャー
安念 剛

 

これを選ぶ基準には、時代に応じて変わっていく部分と、根本的に変わらない部分があります。変わらない部分とは、「コカ・コーラ」というブランドのイメージに関わるところ。もっとも大切なのは、「みんなが『コカ・コーラ』を飲むことで、世界が一つになる」という、ブランドの根底にあるメッセージです。

そのメッセージを紐解いていくと、キーワードは“Uplifting” ──「コカ・コーラ」というブランドに触れることで気持ちが高まりポジティブになれること、そして、“Authentic” ──偽りがない本物、本格派であること。つまり、ポジティブで本格的で、誰もが一つにつながれるという印象を与えてくれる広告をつくるということが、「コカ・コーラ」ブランドにおける世界共通の考え方です。

また、「コカ・コーラ」は世代や性別を問わずすべての方にお楽しみいただける製品ですが、キャンペーンごとに注力する層が変わります。だから、ブランドのベースにある価値観と、キャンペーンの方針の両方にハマるアーティストを選ぶというのが、基本的な音楽戦略です。

──その意味ではLittle Glee Monsterリトルグリーモンスター、以下リトグリ)というアーティストは、まさに「コカ・コーラ」が大切にしている“ポジティブで、本格派で、みんなを一つにする”というイメージにぴったりです。

灰野 僕はリトグリの結成から関わっているのですが、実は、「『コカ・コーラ』のCMに採用されるようなアーティストに成長してほしい」とずっと思っていました。というのも、僕は自分が14歳の多感な時期に、「YES COKE YES.」(*1)という「コカ・コーラ」のCMにものすごく影響を受けたんです。いつか、こういう音楽や映像をつくりたいなという思いを抱いていました。

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
第二制作部チーフプロデューサー
灰野一平さん

 

リトグリは、「世界に通用する女性ヴォーカリストグループを発掘する」というオーディションから生まれたグループです。実力派だけど、決してカッコつけた感じではなく、親しみやすいハーモニー主体のアーティスト。メンバーがまだ正式決定していない段階から、僕の頭の中にはずっと、14歳のときに観た「YES COKE YES.」のイメージがありました。実際、シングル2枚目のGirls be Free!という曲のミュージックビデオでは、勝手にこれをオマージュさせてもらっています(笑)。

──もともと「コカ・コーラ」のブランドイメージに影響を受けていたグループだったんですね!

灰野 はい。「コカ・コーラ」は飲料ブランドではありますが、文化を生み出してきた存在でもあります。だから、自分が関わるアーティストが、その文化の一部を担うことができたら嬉しいと個人的にずっと思っていて。今日もこうして呼んでいただけたことにすごく感動しています(笑)。

*1 1984年の「コカ・コーラ」ブランドの世界共通キャンペーンで、日本でも若者たちが音楽に合わせて歌と踊りを披露する斬新なTVCMが話題を集めました。

 

■20近いデモの中から選んだのは「最初の一曲」

──安念さんはそうした灰野さんの思いはご存じでしたか?

安念 そのエピソードをうかがったのは後のことですね。リトグリが今年のキャンペーンに採用された経緯をさかのぼると、2016年と2017年は「Taste the Feeling」という世界共通のキャンペーンの音楽を日本でも使用していました。それを経て、2018年はもっと日本のお客様に共感してもらうため、よりローカライズされたキャンペーンを行うことになりました。だから音楽にも、日本のアーティストを起用しようと考えたんです。

しかも、「コカ・コーラ」のブランドイメージをしっかり伝えていくためには、季節ごとに変えることなく、年間を通して使えるような音楽をつくらないといけない。そう考えたとき、「リトグリしかいないな」と。アーティストのイメージが「コカ・コーラ」の目指すものと見事に当てはまる。単に明るくて楽しいというだけでなく、歌とハーモニーを生み出す力量が日本の音楽シーンの中でも際立ったグループだと感じていました。一度ライブを観たことがあり、その実力に衝撃を受けていたんです。

そして、2018年のキャンペーンの企画が本格的に始まった去年の夏頃から、灰野さんに相談を始めて、たくさんのデモ曲をつくっていただきました。

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

世界はあなたに笑いかけている」シングル

 

──デモはどのくらいつくったんですか?

灰野 20曲くらいは聴いていただきましたよね。

安念 そうですね。でも、僕の中では1曲目に聴いたデモが第一候補で、すぐに「これ、良い曲だな」と思ったんですよ。最終的にやっぱりその曲に決まりました。

 

■歌詞は異例の“一発OK”

──デモの曲はどのようなコンセプトでつくられたのでしょう?

灰野 今回はコンペを行い、いろいろな作曲家さんに参加してもらいました。その際に、イメージを共有するための参考曲をお渡ししたんです。

今回の「コカ・コーラ」のキャンペーンの方向性を考えると、楽しいだけじゃなく、グルーヴィーな要素も必要だろうと思い、70年代にアメリカでブームになった“フィリー・ソウル”(フィラデルフィア・ソウル)という、パーティー感があるディスコ音楽の曲をいくつか選びました。

パーティーとひとことで言っても、それはセレブたちが集まるような豪華なイメージではなくて、いろんな人種が入り混じった、明るくてエネルギッシュなもの。「そんなポジティブさを感じる曲をお願いします」とみなさんに伝えたら、たくさん良い曲が集まりました。

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

──そうして生まれたのが「世界はあなたに笑いかけている」なんですね。歌詞はどのように制作されたのですか?

灰野 デモの段階でしっかりとイメージをすり合わせ、作詞はいしわたり淳治さん(作詞家、音楽プロデューサー)にお願いしました。「コカ・コーラ」のイメージに合った、「世界がハッピーになるような、大きなメッセージを込めたい」と伝えたら、まさに歌うことで世界が広がるような歌詞を頂戴して。

──歌詞にも修正は入らなかったのでしょうか?

安念 そうですね。細かく指示を出すというよりは、根本のコンセプトや求めているものを共有できていたので、よっぽどイメージが違っていたら修正をお願いしようとは思っていましたが、その必要はありませんでした。「Smile together」というサビのフレーズもイメージ通りでしたね。

灰野 こういう大型のタイアップではありえないくらい、スムーズに決まりました。

──やはりそれは灰野さんが「YES COKE YES.」に憧れたように、「コカ・コーラ」というブランドの世界観をよく理解していたから、ディレクションにもブレがなかったということなんでしょうね。

灰野 リトグリ自体、「コカ・コーラ」のイメージで成り立っているアーティストですから(笑)。

 

■CMソングがグループの代表曲に

──お話を伺っていると、制作はかなりスムーズに進行されたように思われますが、反対に、苦労した点はありますか?

安念 苦労とは少し違うかもしれませんが、2018年1月にリトグリの曲を使ったCMが放映されてから、世間に浸透するまでに意外と時間がかかってしまいましたね。あまりに曲が「コカ・コーラ」のイメージにハマりすぎていて、イメージソングが新しくなったという印象を持たれなかったんです。

──まるで以前からこの曲だったように自然に受け止められた、と。

安念 その状態が半年くらい続いたのですが、ちょうど夏にティーンエイジャーをターゲットとしたサマーキャンペーンを計画していたので、そこでリトグリを前面に打ち出すチャンスが訪れました。曲のイメージも夏らしいですし、リトグリのファンも10歳代が多いですからね。

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

「すべての夏がすばらしい。キミ色の夏を見つけよう!」をキーメッセージに打ち出した2018年のサマーキャンペーンでは、リトグリの5人もテレビCMに登場した

 

夏に限定発売した多彩なカラーバリエーションのパッケージコカ・コーラ」カラーボトルを主役としたサマーキャンペーンでは、TVCMにも出演していただいたり、PRイベントで楽曲をパフォーマンスしていただいたり、ウェブの期間限定動画とリトグリのミュージックビデオを連動させたりと、いろんな取り組みをしたことで、そこから一気に「世界はあなたに笑いかけている」という曲が「コカ・コーラ」のイメージソングとして認知されていきました。

灰野 この曲のリリースも8月だったのですが、おかげさまで「世界はあなたに笑いかけている」は今まででもっとも売れたシングルになりました。

──ファンからの反響はいかがでしたか?

灰野 曲が浸透するにつれて、「代表曲だね」「こういう曲を待ってました」という声をいただいて、すごく歓迎してくれました。それだけリトグリと「コカ・コーラ」の相性が良かったんだと思います。

 

■「コカ・コーラ」のCMから、次は世界の舞台へ

──10月29日からのTVCMでは、「世界はあなたに笑いかけている」-winter ver.-が使用されています。イメージがガラッと変わって今度はバラード調になっていますね。

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

世界はあなたに笑いかけている」-winter ver.-

 

灰野 楽曲がリズミカルで明るく、夏らしさがあるので、当初から冬は別バージョンをつくることも考えていました。CMにはサンタクロースが出てきたりするので、クリスマスの雰囲気を演出するために、単なるJ-POPバラードではなく、コーラスを入れたりして、ゴスペル感を加えています。

──この-winter ver.-で1年間のキャンペーンが終わりますが、あらためて振り返っていかがですか?

安念 たまにTwitterでCMの反響を検索してみたりするんですけど、個人的に嬉しかったのは、「BENNIE Kの曲を思い出すよね」というコメントがあったことです(*2)

あれは「コカ・コーラ」の過去のCMソングの中で一番好きな曲で、ああいうものがつくりたいと思っていました。だから、ものすごく嬉しかったですね。

灰野 それで言うと、実はリトグリの初期の曲はBENNIE Kの作曲をよく担当していた方にお願いしていました(笑)。

──そこでも「コカ・コーラ」とつながるんですね。まさにDNAに「コカ・コーラ」が刻まれたアーティストです。

灰野 本当にそうですね。リトグリ自体は「世界に通用する」ようにと結成されたグループで、最近も台湾や香港でライブを行ってきました。だから、「コカ・コーラ」というグローバルブランドのTVCMを担当させていただいたことは、グループにとっても非常に大きな経験になったと思います。夢は東京2020オリンピックの舞台で歌うことですが、その目標にも一歩近付けたかな、と感じています。

*2 2005年に「つながる瞬間に。コカ・コーラ」というキャンペーンのTVCM曲をBENNIE Kが歌ったところ、「CDリリースはないのか?」という問い合わせが殺到。後に「Dreamland」というタイトルでリリースされました。

 

“相思相愛”が生んだ、最高のコラボレーション 「Little Glee Monster」を起用したCMソングにみる、「コカ・コーラ」の音楽戦略とは?

[写真左から]
はいの・いっぺい / 1996年、ソニー・ミュージックレーベルズ入社。以来、制作部でレーベル運営やアーティストのプロデュースに携わる。これまで担当したアーティストは、中島美嘉、久保田利伸、遊助、土屋太鳳、欅坂46、Little Glee Monsterなど多数。

あんねん・つよし / MTV Japanでタレント&アーティスト・ソリューションズ、番組編成、広告営業などに関わった後、2013年に日本コカ・コーラ入社。マーケティング本部で「コカ・コーラ」をはじめ、多岐にわたるブランドのアーティストやタレントの広告契約を統括する。