今年の「コカ・コーラ」サマーキャンペーンでは、「すべての夏がすばらしい。キミ色の夏を見つけよう!」をキーメッセージに、「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロ」の“カラーボトル”を期間限定で発売中です。
あわせて、テレビCMには、綾瀬はるかさんとともにダンスや将棋などに打ち込む若者たちが出演。彼・彼女らがそれぞれ夢中になっていることに打ち込む姿を描いたこのCMは、題材の選定から出演者選びまでさまざまな可能性とバランスを考え抜いて生まれたものでした。
キャンペーン全体の企画とCM制作を手がけた、日本コカ・コーラ山下広樹電通平石洋介さんに、メッセージに込めた意味やCM制作の舞台裏について聞きました。

文=高島知子
写真=村上悦子

 

■日常のドキドキワクワクとともにある「コカ・コーラ

──7月下旬から始まっている「コカ・コーラ」サマーキャンペーンの“カラーボトル”、反響も上々ですね。Instagramにさまざまな色を集めた写真が投稿されていたり、テレビCMを見て「おいしそう」「集めたい」といった感想がTwitterに上がっていたりしました。

山下 嬉しいですね。「コカ・コーラ」が介在する会話が楽しいものになるように、といつも思っているので、“カラーボトル”の色やCMをきっかけに話題が広がっているのが感じられて、手応えがあります。

SNSで話題沸騰中!“すべての夏”を応援する「コカ・コーラ」カラーボトルCMの制作秘話

日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部
IMC コンテント エクセレンス グループマネジャー
山下広樹

 

──サマーキャンペーンのCMについて伺う前に、まず最近の「コカ・コーラ」ブランドの方向性をお聞かせいただけますか?

山下 2016年に全世界でコカ・コーラ」のブランド戦略が刷新されました。オリジナルの「コカ・コーラ」の下に「コカ・コーラ ゼロ」など同ブランドの全製品を統合し、すべての製品で「コカ・コーラ」の変わらぬ魅力とおいしさを訴求しようというものです。最初の2年間はうまくいったのですが、さらに良くしていきたいと考えたのが2018年。日本ではより一層「コカ・コーラ」ブランドを身近に感じてもらえるように、2017年に「コカ・コーラ」の顔となった綾瀬はるかさんを「コカ・コーラ」のブランド名がつくすべての製品やキャンペーンで起用し、イメージソングも年間を通してLittle Glee Monster(リトルグリーモンスター、通称リトグリ)の「世界はあなたに笑いかけている」で統一しているんです。

平石 今年はさらにキャンペーン全体を進化させたいという話を聞いて、山下さんと改めて、年間を通じてブランドが目指すことを話し合いました。そこで導き出したのは「日常のドキドキワクワクのそばに『コカ・コーラ』がある」ということ。もっと言うと、皆さんにとって「コカ・コーラ」がドキドキやワクワクを引き出してくれる存在になれたらいいな、と。その考えをベースに、年間を通してキャンペーンを組み立てています。

 

■ティーンの夏は“キラキラ”だけじゃない!

──そうなんですね。では今年のサマーキャンペーンはどういったコンセプトなのでしょうか?

山下 2017年のサマーキャンペーンも全体としては好調でしたが、世代別に見ると、ティーンエイジャーにもう少しアプローチできたのでは、と感じました。そこで、大きく「ティーンを中心に、より多くの方にとって身近なブランドになる」ことを掲げたんです。「コカ・コーラ」は長年、ビーチで仲間と冷えた「コカ・コーラ」を飲む……という、いわば “キラキラ”した夏を描いてきましたが、今ならもっと広くさまざまなティーンに語りかけられるはずだ、と。平石さんたちには、「ボトルから始めたいんです」とお話ししました。誕生から130年以上、「コカ・コーラ」の味わいは変わっていません。だからこそ、お客様を飽きさせないためには、ボトルを使って新しいことに取り組むのが非常に重要なのです。

──つまり、ボトルそのものに手を加えるようなアイデアでも構わないということですか?

山下 ええ。CMだけではなく、ボトルを中心に、もっと大きなアイデアが必要だと思いました。

SNSで話題沸騰中!“すべての夏”を応援する「コカ・コーラ」カラーボトルCMの制作秘話

株式会社電通
第3CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター
平石洋介さん

 

──通常、すでに決まったボトルありきで、キャンペーンのクリエイティブ表現を考えることが多いと思います。このお話はインパクトがあったのでは?

平石 そうですね、チャンスだと思いました。僕は「コカ・コーラ」ブランドを担当して4年ほどになりますが、企画単位で説明を受けてからプレゼンして……という堅いやりとりではなく、コンテンツの専門チームである山下さんのチームと柔軟にキャッチボールをしながら企画を固めていけるおかげで、世界的ビッグブランドでありながらも日本人に伝わるような、みずみずしい広告表現ができていると思っています。そんな関係の中から、「企画として必要があるならボトルから提案していい」と言われたのは大きかったですね。なぜなら、情報過多の状況にあるティーンを本気で動かそうとするなら、広告表現だけではなく、「コカ・コーラ」そのものがメッセージを発するくらいの強さがほしいと感じていたからです。でも、企画はボトルからではなく、まずはティーンが、今どんなことを考えてどんな生活をしているのか、というところから考えていきました。

──今のティーンを掘り下げて、どんな発見があったんでしょうか?

平石 SNSをはじめ、各種の調査も参考にしつつ時間をかけて探ったところ、彼らを象徴するものとしてたどり着いたのは“多様性”でした。今の若い人が好きなこと、興味関心の対象は本当に多岐に渡っています。一方で、SNSによって「夏は典型的な“リア充”のようにキラキラしていなければ」とプレッシャーを感じる人も増えています。これを「サマー・プレッシャー」と名付けたんですが、苦しんでいるとまではいかなくても、若い人の夏はときにそんな状況にあると分かったんです。そこで「キラキラだけじゃない」「自分が好きなことに夢中になるなら、その夏はすばらしい」と発信すれば、ティーンの共感を得られるのではないかと考えました。そんな“多様性”をキーワードに何案も企画した中で、イチ推しであり、でも一番難しそうだと考えていたのが、“カラーボトル”の案だったんです。

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■おいしさを損なわない色味とは?

──“多様性”というキーワードが、まさに「すべての夏がすばらしい。キミ色の夏を見つけよう!」というキャンペーンメッセージにつながり、それを具現化したもの“カラーボトル”だったと。

平石 そうですね。若い人の多様性を応援する姿勢をメッセージとして打ち出して、それを製品やクリエイティブで表現していきました。ボトルの色で多様性を表し、CMではそれぞれが夢中になっている瞬間を描ければ、と。若い人の心を探る中で、言葉だけではなかなか響かないことも分かったので、「コカ・コーラ」が“体”を使って、つまりボトル自体で表現するから強く響くだろうという仮説もありました。単にカラフルさで目を引きたいのではなく、あくまで「すべての夏がすばらしい」という思いを表現する手段としての色展開だったんです。

──とはいえ、2016年から、「コカ・コーラ」ブランドを象徴するのが“赤”で、パッケージも“赤”を重要視しようというブランド戦略が続いている中で、カラーバリエーションを実現するのは難しかったのでは……?

山下 そうですね(笑)。直感的には、僕も“カラーボトル”の案が抜群だと思いましたが、同時に「本当にやれるだろうか……」とも感じました。でも、実現できるか不安になるアイデアは、大体いいアイデアです。やったことがあるものは、安心感がありますが既視感もありますから。
ほかの企画もすごく斬新でしたが、この案が僕のチームでも、ブランドチームはじめ社内でも一番盛り上がったので、日本の若者のインサイトや夏のビジネス環境などを説明し、期間限定キャンペーンとして米国本社の承認も得られました。

平石 世界中が知っている「赤いブランド」だからこそ、この企画の強さがあると信じていました。企画にGOサインが出てからは、まず具体的な色選びに時間をかけました。人の味覚は視覚と強く結びついているので、ちょっと色味を誤ると「おいしそう/おいしい」という感覚を損ねてしまいます。だから、色彩学まで立ち戻って、「コカ・コーラ」がこれまで築いてきたおいしさの価値を壊すことなく、かつ“多様性”を感じてもらえるかというポイントですごく吟味しました。針の穴に糸を通すような作業でしたね。

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■役者ではなく“本物”を起用してリアリティを追求

──たしかに! そこで決まったボトルの色展開から、CMでは赤を入れて計10色が使われています。ライフセービングやダンス、将棋、コスプレなどさまざまな “夢中になっていること”が描かれていますが、これらの選定はどのようにして?

平石 まず、若い人が今どんなことに興味があるのか、100以上ピックアップして、そこから本当に流行っているのかどうか確かめたり、「コカ・コーラ」の元気の良さやポジティブさとマッチするかを検討したりして、絞り込んでいきました。「いいんじゃないか」と僕らが思っても、コカ・コーラ社側は違和感を覚える……という候補もあったので、ディスカッションを重ねましたね。

山下 そこは僕らも悩んだところで、「コカ・コーラ」の思う夏らしさを追求しすぎてしまうと、結局いつもの「夏のビーチで……」という“キラキラ”に戻ってしまうんです。そうすると、「すべての夏がすばらしい」というメッセージからは遠ざかります。アウトドアでもインドアでも、誰かが何かに夢中になっている夏をどう描き、同時に「コカ・コーラ」がおいしそうに感じられることをどう両立させるかは、平石さんたちに特にしっかり検討をお願いした部分でした。

SNSで話題沸騰中!“すべての夏”を応援する「コカ・コーラ」カラーボトルCMの制作秘話

SNSで話題沸騰中!“すべての夏”を応援する「コカ・コーラ」カラーボトルCMの制作秘話

缶製品もカラー展開(写真上)
CMの中で「ペーパージオラマ部」の若者が制作しているジオラマ。この中にも小さな“カラーボトル”が(写真下)

 

──バランスが大事になりますね。描かれているシーンがすべての夏を代表するようなものでないといけない。

平石 そうですね、ティーンはもちろん、誰が見ても「自分に通じるものがあるな」と感じてほしかったので、バランスはすごく留意しました。それから、リアリティですね。出演者を役者から起用するか、それとも本当にダンスや将棋をやっているティーンに依頼するか、ぎりぎりまで悩みました。CMの撮影現場は、一般の人にとっては特殊な環境なので、いくら本物といっても現場でリアリティを出せるとは限りません。最終的に、本当にやっているティーンの皆さんに出てもらったのですが、監督の雰囲気づくりもあって、とてもリアルに撮ることができました。

 

■“文脈”を活かせるテレビCMの可能性

──そこはたしかに考えどころですね。一般の方だと、緊張しないように気を配る必要もありますし。

平石 そうなんです。撮影は1日で10あまりのシーン、それから別スタジオでは製品も撮影したので、かなりタイトでした。先ほどお話ししたバランス上、静的なシーンもある分、製品で夏らしさや躍動感を表現するという課題もあったので、こちらも入念に準備しました。当日は、製品と水しぶきを何度も撮影してスローモーションで確認して……。それもあって、僕らはとにかく撮影を無事に終える任務に徹しようとしていましたが、逆に山下さんたちは現場でも出演者の皆さんに「コカ・コーラ」の世界観を感じてもらおうとされていて、「さすが」と思いました。クライアントさんたちの計らいで、待ち時間に出演者が綾瀬さんと少し話せる時間を取ってもらったんです。

──それは嬉しいですね!

山下 感激して泣いてくれた子もいましたね。時間がなかったので元々はすれ違いもしない段取りでしたが、せっかく来てくれたのだから、「コカ・コーラ」のCMに出たこの1日がより特別な体験になったらな、と。一人ひとりに、ブランドのファンになって帰ってもらいたいと思ったんです。

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──出演者の中で、綾瀬さんは当然立ち位置が違いますし、またリトグリの皆さんもパフォーマンスのプロです。その点の描き方はどのように?

平石 それも、たくさん議論した部分です。綾瀬さんはもちろん横並びではないですが、違いが明確すぎると一体感が崩れます。行き着いたのは、綾瀬さんはあくまで赤の「コカ・コーラ」の象徴、かつティーンの夏をセレブレートするリーダーとして、最初と最後に出ていただくことにしました。リトグリの皆さんには、逆に“夢中になっているティーン”として出ていただいたので、ライブパフォーマンスというより、歌が好きだという気持ちが自然にわき上がって歌っているような感じでお願いしますと話しましたね。一般のティーンエイジャーと違和感がないさじ加減は難しかったですが、一人ひとりがいきいきと見えるように気をつけました。

──たくさん舞台裏のお話を聞かせていただき、ありがとうございました! 最後に、今の時代におけるテレビCMの可能性について、お考えを伺えますか?

平石 世の中がデジタルにシフトしているのは間違いないですし、クリエイターの立場だと「CMは古い、デジタルは新しい」と言い切って仕事を進めるのは簡単です。でも、僕はそんなに単純ではないと思う。CMは今も一定の影響力があります。しかし、それだけで通用する時代ではないので、デジタルとうまく組み合わせることが大事だと思います。たとえば今回は、わずか6秒のYouTubeの「バンパー広告」も使っています。また、今は120秒や180秒の長い動画広告もありますよね。そうすると、おのずと15秒・30秒のCMの強みは変わってきます。このように映像だけでも伝え方が多様化し、スマートフォンの“触る”行為を活かした双方向的な施策をすることもできます。それらを統合すれば、CM一辺倒だった時代よりも立体的にブランドを伝えられるだろうと思っています。

山下 平石さんのチームとはこれまでもテレビCMで先駆的な取り組みをしていて、たとえば平昌2018冬季オリンピックでは、世界の頂点に立ったメダリストを祝したCMを流しました。日本代表選手団がメダルを獲った直後に綾瀬さんが「おめでとうございます!」と言うもので、大きな反響を呼びました。テレビでしかできないのは、こうした文脈の共有だと僕は思うんですね。夏だって、これだけ猛暑だと皆が共有するトピックになります。そのため、そうした文脈を味方につけて、質の高いコンテンツの間に入らせてもらうことが、製品やブランドが皆さんと特別な絆をつくることにつながると思います。テレビ局も新しい取り組みに前向きなので、今後も積極的に活用しながら、他のメディアも組み合わせて「コカ・コーラ」が皆さんのドキドキワクワクの瞬間にもっと登場するようにしたいですね。

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[写真左から]
ひらいし・ようすけ / 株式会社電通でクリエーティブ・ディレクターを務める。「コカ・コーラ」ブランドは4年前から担当。キャンペーン全般のプランニング、企画・制作に携わる。

やました・こうき/ 日本コカ・コーラのマーケティング本部でグループマネジャーを務める。「コカ・コーラ」ブランドの、広告の企画・制作および統合マーケティングを担当。