コカ・コーラの愛飲者である作家の戌井昭人さんにとって
コカ・コーラ製造工場」は秘密のベールに包まれた香しき魅惑の世界。
好奇心がくすぐられてしようがない場所です。
そんな戌井さんは寒波の到来した早春のある日、
北海道コカ・コーラプロダクツ札幌工場を訪ねる機会を得ました。
いったい戌井さんは現場で何を見、何を感じたのでしょう?
芥川賞候補になること数度、文芸界の鬼才による
書き下ろし見聞録を掲載します。

文=戌井昭人
写真=松本昇大

  飛行機は北海道の新千歳空港に着陸、外の温度を知らせる放送が流れると、なんとマイナス17度。それにしても「マイナス17度って、どんなもんなんだい」と笑っちゃうような心持ちで、空港の外に出てみると・・・・・・。 

 寒い、というか痛い。そこは、まさしくマイナス17度の世界でした。突っ立ったまま凍ってしまいそうで、鼻から吸う空気は脳味噌まで到達すると、シャキっとさせた後、すぐにバラバラと崩れて、なにも考えられなくなりそうです。 

 わたしは、これから、北海道コカ・コーラプロダクツ札幌工場(以下、コカ・コーラ札幌工場)に向かいます。このような寒い地でも、コカ・コーラが作られていることを考えると、やはり、コカ・コーラはキンキンに冷えているものが美味しいのだと思えてきます。 

 かつて、インドで飲んだコカ・コーラは外があまりに暑いせいか、キンキンに冷えた感じはしませんでした。暑いデリーの街を歩きまわり、汗まみれの埃まみれで、一息つこうと、商店で瓶入りのコカ・コーラを購入し、口にしたのですが、あのキンキンに冷えた感じが足りないのです。悲しくなりました。
 そして、マイナス17度の地で、灼熱の地、インドのことを思い出しているのが不思議でしたが、世界共通で、コカ・コーラは冷えたものが美味しい、という思いに至りました。 

 空港からコカ・コーラ札幌工場に向かうため、電車に乗って札幌へ、そこからタクシーに乗り込みます。しばらくすると、大きな四角い物体があらわれ、青空の下、赤いコカ・コーラのロゴが見えてきました。

Coca-Cola Journey Special“Coke”
戌井昭人の
「コカ・コーラ製造工場見聞録」

<外気はマイナス1度。新千歳空港よりはマシです>


 タクシーを降りると、これまた「寒い」のですが、寒い地で「寒い、寒い」と繰り返すのは、いいかげん野暮に思えてきました。今後、ひかえます。 

 いざ社屋へ、エントランスには、北海道限定商品が並んでいます。
 「い・ろ・は・す」のハスカップ味、「ジョージア サントスプレミアム」などなど、見ているだけでも飽きません。

Coca-Cola Journey Special“Coke”
戌井昭人の
「コカ・コーラ製造工場見聞録」

<北海道限定の『い・ろ・は・す ハスカップ』と『ジョージア サントスプレミアム』です>


 工場見学がはじまる前に、控え室で待機していると、瓶入りの冷えたコカ・コーラをいただくことができました。寒い地の暖かい部屋で、冷えたコカ・コーラ、これまた一興で、スカッと美味しいのであります。はじける炭酸で喉をうるおし、工場見学へ向けて、テンションが上がっていきます。


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