世界一有名な飲料「コカ・コーラ」を筆頭に、
数々の清涼飲料を企画・製造・販売しているコカ・コーラシステム。
その現場を、現役大学生の平野紗季子さんがレポートします。

第2回目は宮崎県にあるコカ・コーラえびの工場「グリーンパークえびの」の水資源保護の現場について。


文=平野紗季子
写真=鈴木泰介


 まったく壮観なコカ・コーラ誕生の現場を目撃した後は、水処理施設と排水処理施設を見学しました。案内にはあまりに笑顔が爽やかな、品質管理課の杉島さんに登場していただきました。彼は水処理・排水処理歴11年のベテランさんです。

大学生の社会科見学vol.2
「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

 まずは排水処理施設へ向かいます。 コカ・コーラシステムは、2020年までに製品の製造に使用する量と同等量の水を自然に還し、実質的な水使用量をゼロにする「Water Neutrality」の実現を目標に掲げています。使った分は還す。借りたものは返す。地球環境を想う心意気に溢れた目標です。

 だからこそ、排水処理へのこだわりもハンパではありません。

「製造に使った水は全て、ここに集まってきます。排水に関しては、国の基準よりうんと厳しいコカ・コーラが世界共通で定めている独自の基準に従って、飲めるくらいきれいにしてから川へ排出しています」

 さすがです。ちなみに排水処理の行程は約12もあるとか。

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

 この池には、クルトンのような四角形の物体が所狭しと浮いています。私はクルトンが2つだけのコーンスープを恨んできましたが、こんなに入っていたら夢のようだと思いました。

「ここでは、サイコロ状のスポンジに菌を住まわせて、排水に含まれている有機物を食べてもらっています。ここに菌が住んでいるんです。活性汚泥法のうち、流動単体方式を用いていて……」

 ふむ。なんだか難しい……。この作業って楽しいんでしょうか?
「やりがい……ありますよ。どんな排水がやってくるかはその日次第ですから。排水の状態によって薬品などの入量を変えるんです。たとえば、その日の製造した製品が水、水、炭酸とかだったら楽勝だけど、珈琲、珈琲、炭酸とかだと、排水の濃度が高くなる。そこで、ちょうどいい入量を探って行くのが技のみせどころですね」

 杉島さんの目がギラリと輝いたのを私は見逃しませんでした。

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

「ここでは、透視度をはかります。下にバッテンがあると思うのですが、これが見えれば……」
 ばっちり見えています……! 排水がすっかり澄み渡ってきました……!!

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

「ここで、汚れていないか、適正な排水になっているかの最終確認です。濁りを取り除いて、さらにPHを調整しています」(杉島)

「なんかアボカドみたいなのが浮いていますね、かわいい」(平野)

「藻の塊です。まりもみたいになってね。結構水温が高いんです、だから心地よい環境なんでしょうね」(杉島)

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

 すっかりきれいになった排水は、調整池に一次的に貯められます。調整池という名前はあまりにリアリスティックな響きですが、それとは対照的に現場は白い鳥が悠然と飛んでいたりして、かなりロマンチックな池と緑の空間です。市民の方のお散歩道としても愛されているのだとか。


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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

 外には水田が広がっています。

「良い水がある場所ってことなんでしょうか」(平野)

「ここはそうですね。霧島山系と人吉の山の水が集まっていて、すごく水質が良いんです。うちの水には自信ありますよ。日本で一番水の会社が多いと言われているのが、霧島山系なんです」(杉島)

 そんな話をしていると、ひょろろーっと杉島さんが前に駆けていき、芝生にしゃがんだと思ったら帰って来て「どうぞ」と一言。

大学生の社会科見学vol.2
「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

 なんと、四葉のクローバーをもらってしまいました(杉島さん、女の子にモテそう)。この辺りにはわりと四葉が生えているんだそうです(杉島さん、やっぱりモテそう)。余計にロマンチックな気分になってきました! 良い気分のまま、最後の見学地、水処理施設へと向かいます。

大学生の社会科見学vol.2
「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

 水処理施設では、主に、汲み上げた地下水をあらゆる飲料の基本となる水=“純水”へと変えていきます。工場ではその行程を「水を磨く」と言います。良い言葉です。水一つ生み出すのにもこんなに大きな機械が必要なのかと改めて驚かされましたが。

「うちの製品の元はほとんどが水なんで、水に対しては力を入れてます。水を磨く行程では、地下水そもそもの個性をなくし、 ほとんど不純物がない状態のまっさらな水にします。そのおかげで、どの工場でも均質な味を実現できています」

 個性を強く求める社会に疲れてしまった時は、“私は無個性=余分を取り除いた純水のような状態なんだ”と前向きに捉えていこうと思いました。

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「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

「よかったら飲み比べてみてください」

私の目の前のテーブルには3種類の水が。

Aが純水(井戸からくみ上げた水を磨いたもの)。
Bが「い・ろ・は・す」(井戸からくみ上げた水を殺菌したもの)。
Cが水道水。

 これらをテイスティングして全く差異が分からなかったら恥ずかしい……と思いつつ飲んでみると、面白いくらいそれぞれの味わいが際立っています。特に“水を磨く”行程で生まれた純水は、全ての清涼飲料の柱となるだけあって、特にすっきりとして軽く、透明の中の透明な味がしました。

大学生の社会科見学vol.2
「工場の“水”を支える仕組みに触れてみた」

 水に関連する施設を隅々まで見学し終わったのち、杉島さんがぽつりと言いました。

「私どもがお客さんに信頼していただいているなって思うのは、自動販売機で買ったコカ・コーラの製品を、お客様が迷うことなくすぐさま開栓して飲んでいただいている姿を見たとき。少しでも不安があれば、臭いをかいだり、色を見たり、確かめてから飲むと思うんです」

 それは、私たちの無意識な信頼が行動に表れた結果だと気づかされました。

 コカ・コーラには平和があります。一つは、美味しく安全な飲み物を私たちに届けるということ。一つは、それに飽き足らず、できる限り環境に負荷をかけず、きっちりと自然に還元しようとすること。「グリーンパークえびの」の見学を通して、清涼飲料を中心として、あらゆる立場から世の中をプラスに回して行こうとするコカ・コーラの人々の想いと行動の一端に触れ、ああ私もこんな風に立派なことができる大人になれたら格好良いだろうな……と思いました。


(つづく)