ウチのコークは世界一”を合い言葉に、平昌2018冬季オリンピック応援キャンペーンを展開している「コカ・コーラ」。このキャンペーンの一環として、2月12日から18日までの7日間、大会中に熱く盛り上がったハイライトシーンを、東京メトロ丸ノ内線新宿駅のメトロプロムナードに氷の像で再現する、「#コーク氷のハイライト」が開催されました。どんな氷像をつくるのか、氷彫刻家も直前まで知ることのできなかったリアルタイムの一発勝負。その舞台裏をレポートします。

文=香川誠
動画・写真撮影=森本洋輔
動画編集=海野真伊

 

 

■午後10時過ぎ:メダルラッシュに沸く会議室

「すごい! すごい!」

 鳴り止まない拍手と歓声。2月12日夜、東京・渋谷にある日本コカ・コーラの本社会議室は、日本のメダルラッシュに沸いていた。

 ここにいるのは、日本コカ・コーラで結成された平昌2018冬季オリンピックの応援キャンペーンのマーケティングチームのメンバーたち。この日彼らは、「#コーク氷のハイライト」に向けての作戦会議を行っていた。

#コーク氷のハイライト」とは、平昌2018冬季オリンピックのその日のハイライトシーンを氷像で再現し、東京メトロ丸ノ内線新宿駅の地下連絡通路、メトロプロムナードに設置されたショーケースに展示するというもの。最初は大会の公式マスコット「スホラン」の氷像と、高さおよそ1メートルの氷の柱が6つ並んでいるだけの状態だが、イベント開催中はこの氷の柱が毎日一つずつ氷像に変わっていく。

 オリンピック担当チームと氷彫刻家たちの怒濤の一夜が幕を開けたのは、午後10時過ぎ。まずは一日の競技が終了するまでにハイライトシーンの候補を選定しなければならない。全競技の終了予定時刻は午後11時半ごろ。メンバーたちは、平昌で繰り広げられている熱戦をテレビやスマートフォンでチェックしながら、ハイライトシーンの候補を絞っていった。

 穏やかな雰囲気で始まった会議だったが、日本人選手のメダルラッシュが始まると、そこはいつの間にかパブリックビューイングの会場と化していた。終わってみれば、日本は大会4日目となるこの日だけで3つのメダルを獲得したのだった。

 そして、全競技の中からハイライトシーンを選ぶ議論が始まる。どの競技のどのシーンも感動的で捨てがたいが、氷像で表すことができるのは一日一つだけ。マーケティングチームのメンバーが最終的に選んだのは、熱戦が繰り広げられた女子スピードスケートだった。

 

■午前1時10分:新宿の地下街で彫刻作業スタート

 その場で彫り出すハイライトシーンを伝えられた氷像製作担当チームは、早速新宿へと向かった。作業開始時刻は、日付が変わった午前1時。わずか1時間あまりの間に移動と準備を済ませるだけでなく、氷像の形を決めるデッサンも描いておかないといけない。この日の氷像製作を担当するのは補助スタッフを含め4人のチームだが、彫刻作業自体は氷彫刻家のAさんが一人で行う。

 終電時刻が過ぎた新宿のメトロプロムナード。Aさんは、デッサンを何度も描き直していた。開始時刻となる午前1時。「よし」という言葉とともに氷柱へと向かったAさんだが、デッサンと氷の柱を重ね合わせた後、再び机に戻った。頭の角度、手の位置、足の曲げ具合がほんの少し違うだけでも、躍動感がまるで変わってくる。開始時刻を遅らせてでも、納得するまでデッサンを修正する必要があったのだ。

 10分後、Aさんは再び氷の柱の前に立った。今度はデッサンもバッチリだ。そして、「お願いします」という言葉とともに、氷像づくりが始まった。

 手元のデッサン通りに、ノミを使って氷の柱に下絵となる線を入れていくAさん。次はドリルの出番だ。スイッチが入ると、氷の削りかすがAさんの頭上高く舞い上がった。チェーンソーを使って、氷柱を大胆にカットしていく。タイムリミットがある中で、迷っている時間はない。氷も少しずつ溶けていく。

 最初は氷の柱にデッサン通りの絵が描かれただけの氷柱は、Aさんがチェーンソーを回すたび、ノミで削るたびにだんだんと立体的になり、選手の体も丸みを帯びていった。

午前2時半、「3つのメダルに日本が沸いた!」というコピーが印字されたシートが届いた。ハイライトシーン決定後の日本コカ・コーラ本社会議室では、ショーケースに掲示するコピーの会議も行われていた。氷像だけでなく、コピーもライブ製作だったというわけだ。

 

■午前3時22分:スピードスケート選手をかたどった氷像が完成

「OKですね、完成です」

午前3時22分。休むことなく氷を削り続けた132分間の“激闘”が終わった。そこにあるのは、紛れもなく数時間前のハイライトシーン。今にも動き出しそうな氷像を前に、作業を見守っていた関係者たちも息を呑んだ。

 ショーケースに収められた氷像は、ライトに照らされ、より一層輝きを増した。ここを行き交う人たちは、この氷像を見て、あの熱い感動をよみがえらせるはずだ。完成直後、Aさんに話を聞いた。

「難しかったのは、前かがみになっている腰のライン。彫り慣れているものなら1時間くらいで完成しますが、こうやってその場でオファーされてつくるという経験はほとんどないので時間もかかったし、緊張もしました。氷像が醸し出す躍動感とスピード感を見てもらいたいですね」

 オリンピックの競技に挑む選手たちと同様、まさに一発勝負。22年間の氷彫刻家人生でも珍しい経験をしたAさんは、張りつめた緊張が解けたからか、この日初めてともいえるような笑みを浮かべてホッとしていた。

#コーク氷のハイライト」では、この日から毎日、日替わりで氷彫刻家たちがその日のハイライトシーンを製作していった。イベントは期間限定キャンペーンのためすでに終了しているが、平昌2018冬季オリンピックはまだ終盤戦を残している。氷と抜群の相性を誇る「コカ・コーラ」を手に、最後まで選手たちを応援しよう!