画像クレジット:James Russo

文=エリザベス・コンウェイ

10歳の少年と奇跡の「コカ・コーラ」ボトル

2014年の夏、ルカ・フスコという名の10歳の少年が、1本の「コカ・コーラ」ボトルをコネチカット州の海岸からロングアイランド湾に投げ入れました。その中には短いメッセージと日付が鉛筆書きされた紙が入れられていたのですが、このボトルはやがて、見知らぬ人同士をつなぎ、彼らの人生に次々とハピネスをもたらしながら海上を移動し続けることになります。これからお伝えするのは、そんな奇跡の物語です。
ルカが、手紙を入れたボトルを波間に旅立たせようと決めたのは、コネチカット州ストラトフォードにある地元のスーパーでボトル入りのメキシカンコークを見つけたときでした。彼はさっそく、シンプルな罫線ノートに日付と自分の名前とボトルを投げ込んだ地点、そして「このボトルがどこに届くか確かめてみたいと思っています」という1文と最後に自分のメールアドレスを書きました。
さらには、手紙が実際より古びて見えるようにと、父親の助けを借りて紙の端をマッチで焦がし、ボトルの中に入れてコルクで栓をしました。

拾った人がみな幸せになる
さすらいの「コカ・コーラ」ボトル

ルカが書いたメッセージ

8月後半のある日、ルカはストラトフォードにある家族の別荘にほど近い突堤に進み出て、ボトルを水の中に投げ入れました。「たとえばロングアイランド島(※)とか……ボトルができるだけ遠くまで届いたらいいなと思いました」と彼は言います。
ところが最初、投げ入れたボトルは波に打ち返されてすぐルカのもとに戻ってきてしまいました。「もう戻ってこないように」と、もう一度、力いっぱい遠くまで投げると、ボトルは波間にまぎれて見えなくなりました。
それから4日後のことです。ルカはメールの受信ボックスに、ストラトフォード在住の女性からのメッセージを発見します。
※ニューヨーク州にあるロングアイランド島は、ロングアイランド湾をはさんだストラトフォードの対岸にあり、ストラトフォードからの距離は約30キロです。

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さすらいの「コカ・コーラ」ボトル

ボトルを投げ入れた辺りで釣りをするルカと父親

 

アナログな体験だから新鮮

9月1日の早朝、一人で海岸を散歩していたニナ・レシガは、浜辺に打ちあがったガラスの欠片や貝殻の中に、緑色にきらめくものが紛れているのを目にしました。普段から浜辺に落ちているものをよく拾っていた彼女ですが、中に紙切れが入った状態で栓のされたボトルを見つけたのは初めてのことでした。
「最初は、何かのいたずらなんじゃないか。ボトルを拾おうとした瞬間に誰かがそれを糸で引っ張って動かしたりするんじゃないかと思ったのですが、そんなことは起こりませんでした」とニナは言います。ニナは長年、このような瞬間を夢見ていたのですが、実際に見つけてみると信じることができなかったのです。
ボトルを見つけた時、ニナの手元には携帯電話やカメラといった、その瞬間を記録する手立てがありませんでした。自分一人だけでこのボトルの栓を開けてしまいたくないと感じた彼女は、他に人がいないかと辺りを見回しました。「私の最初の反応は、ボトルの栓を開けるという体験を、他の人と共有しようとすることでした」と語る彼女は、近くにいたグループのところまで歩いて行って、実際に彼らと一緒にボトルを開けたのです。そのようにして、ボトルを開けることが見知らぬ人同士がハピネスを共有する稀有な瞬間となりました。
紙切れのメッセージを読んだニナルカにメールを送り、ルカは直ちに返信しました。ボトルは水中に投げ込まれた地点から1キロも移動していませんでしたが、ルカにとって、それを誰かが発見してくれたという喜びに変わりはありませんでした。
「何もかもが電子化されているこの世界で、IT技術を使わずに自由な時間を楽しむ少年の存在は私にとって新鮮なことでした」とニナは言います。そして彼女は、自分が受け取ったハピネスを次の人につなげようと決心します。ニナは2番目のメッセージを手で書いて、ルカの手紙と一緒にボトルに入れたのです。

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さすらいの「コカ・コーラ」ボトル

ニナがボトルに追加した手紙

ニナは引き潮の時間帯を確認したうえで、再度ボトルを海に投げ込みました。そして彼女は、その後しばらくの間、ボトルのことをすっかり忘れてしまいました。