1980年代から2000年代初頭生まれの、いわゆる「ミレニアル世代」が企業の中核を担う時代が訪れようとしています。2025年までに世界の労働人口の75%を占めるともいわれるこの世代は「デジタルネイティブ」とも呼ばれ、学生時代からデジタル端末やソーシャルメディアを使いこなしてきた人が多く、ビジネスシーンにも新しい価値観をもたらすのではないかと注目されています。
コカ・コーラ社ではそんなミレニアル世代の社員は、どんな働き方をしているのか?『Coca-Cola Journey』ではこれから数回にわたり、彼・彼女らの生の声をお届けしていきます。第1回は、日本コカ・コーラの社内で発足した「ミレニアル・ボイス」というプロジェクトの紹介。リーダークラスの5人に集まってもらいました。

文=香川誠
写真=村上悦子

 

■会社をより良くするために、若手社員が立ち上がった!

──「ミレニアル・ボイス」とは、どんなプロジェクトですか?

エミリー・ファン(以下、ファン) 簡単に言えば、私たちミレニアル世代の一般社員が集まって、会社をよりよくするための取り組みを経営陣に提案するためのプロジェクトです。

このプロジェクトはもともとザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)で始まったもので、製品の開発にミレニアル・ボイスの提案を取り入れるなど、経営レベルでの活用が進んでいます。米国での事例を受けて、日本でも2017年9月に誕生しました。メンバーは皆、日々の仕事をこなしながらこのミレニアル・ボイスに自主的に参加しています。私はさらに、プロジェクトリーダーもやりたいと言って手を挙げました。このプロジェクトを通じて、会社と一緒に自分も成長していきたいと思ったからです。

エミリー・ファン(プロジェクトリーダー)

 

チェ・ミン・ギュ(以下、チェ 私がミレニアル・ボイスに参加しようと思ったのは、若い世代の仲間と互いに刺激を与え合いたかったから。前職においても、今の日本コカ・コーラにおいても、若手社員の活躍や成長は欠かせないと考えていました。また、若手社員の視点から、会社の成長にもつながる提案をしていきたいとも思っていました。ミレニアル・ボイスが立ち上がると聞いて、これに参加することで、新たな発想などにつながればと思ったのです。

チェ・ミン・ギュ(共同プロジェクトリーダー)

 

立田章悟(以下、立田 実を言うと、私はこのプロジェクトの“ミレニアル”という点に着目したというよりは、職場環境の改善につながるプロジェクトというところに強く興味を持ち、参加を決めました。でも結局は、ミレニアルのプロジェクトでよかったと思っています。社内には同世代がまだ少ないので、みんなと話すのはとても新鮮ですし、他部署のメンバーから得た情報が、自分の普段の仕事に役立つことも多々あります。

桜木谷薫(以下、桜木谷 社内の横断的なつながりができたことは、メンバーみんながよかったと実感していることだと思います。それが同世代だと、なお楽しいし。普段あまり関わりのない他部署の人たちの話をじっくり聞いてみると、驚くこともたくさんあります。「製品開発にこんなに多くの人が関わっているのか!」と。みんな手を動かして、汗を流して仕事をしている。製品の裏側にあるエモーショナルなストーリーを聞くことができます。

桜木谷薫(マーケットプレイスリーダー)

 

■3つのテーマでプロジェクトが同時に進行中

──日米のミレニアル・ボイスは互いに連携しているのですか?

チェ いいえ。日本のミレニアル・ボイスは、理念こそアメリカと同じですが、中身は独自のものです。私たちの活動の柱は3つあります。マーケットプレイス(市場調査)、ワークプレイス(職場環境改善)、パートナー(人材交流)。たとえば先ほどの社内の横断的コミュニケーションについては、パートナーチームのリーダー、ナビが先頭に立って進めています。

シング・ナビニート(以下、ナビ パートナーチームでは、人材開発の支援や、社内外のネットワーク構築に向けた取り組みを行っています。社内コミュニケーションについては、部門をまたぐ横のつながりも大事だけど、意識的に取り組んでいるのは縦のつながりの強化。日本の会社は、一般社員が経営陣と直接話せる機会がとても少ない。そこで、経営陣が社員の相談に乗る「メンタープログラム」を実施しています。月に1回、役員と社員3、4人がランチを取りながら、社員が普段感じている社内の改善ポイントを経営陣に共有しています。たとえば、「携帯電話を会社のものと個人のもの、二つを持ち歩くのは大変だから一つにしませんか」というようなこととか。

シング・ナビニート(パートナーリーダー)

 

チェ 私もメンタープログラムに参加して、自分がブランド担当の仕事をしながら疑問に思っていたことをぶつけたことがあります。その場で役員から説明を受けて納得もできたので、それからは迷いなく仕事に取り組めるようになりました。

ナビ 私たちみたいな本社勤務の人は、役員に近い場所にいるからまだいい。本社以外、特に守山工場(滋賀県にある原液工場)で働いている社員たちは、役員の姿を見ることもありません。でも、だからこそ私たちの出番。守山工場の社員が経営陣と意見交換できるようなプログラムを考えています。

立田 私はメンタープログラムで、企業向けSNSの「Workplace by Facebook」をもっと活用することを提案しました。そうすれば社内の意見をもっと簡単に集められる。自分が「こうすればよくなる」と思っていることを経営陣に直接話せて、その場でフィードバックをもらえるというのは嬉しいですね。

立田章悟(ワークプレイスリーダー)

 

──マーケットプレイスではどのような活動を進めているのですか?

桜木谷 ミレニアル世代が今どんなことに興味を持っているか、どういうものを欲しがっているか、ニーズの発掘調査をしています。5月からは、都内の大学とコラボレートして、学生たちに新製品開発の課題に取り組んでもらうプロジェクトが始まります。今年8月までに複数回ワークショップを開催し、最終的には日本コカ・コーラの社員に向けてプレゼンをします。もちろん理想は学生達のアイディアが実際に製品化されることですが、我々としては、どうしてそのような製品をつくろうと考えたのか、学生たちの思考プロセスにも興味があります。

ファン 私たちはワークショップを通じてもっとミレニアル世代の行動特性とトレンドを知りたい。大学側は学生たちに企業視点での考え方ややり方を学んでもらいたい。双方のニーズを満たす取り組みなんですよね。

桜木谷 そう、学生たちにとって社会人と交流することは、キャリアを考える上で非常に重要だと思います。私たちが学生から得たインサイト(消費者心理)は、社内でミレニアル世代のことを深く知りたい人たちにも活用してもらおうと考えています。

──もう一つの柱、ワークプレイスではどんなことを?

立田 私たちのテーマは職場環境の改善です。リーダーの私の前職がシステムエンジニアだったこともあって、まずは社員のITリテラシーを高めることから始めています。システムのデジタル化が進んでも、社員たちの知識を深めないと、せっかくの技術も使われなくなってしまいます。そうしたことを防ぐためにも、我々デジタルネイティブの世代が社員のみなさまのサポートをしています。

ダイバーシティ&インクルージョン(*1)についても、これから取り組んでいく予定です。日本では理解が遅れがちなLGBT(*2)をはじめとするセクシャルマイノリティーや障がい者の労働環境にも目を向けていきたいですね。

*1 ダイバーシティ&インクルージョン……ダイバーシティ(diversity)は多様性、インクルージョン(inclusion)は包含の意味。多種多様な価値観や考え方を持つ人たちのスキルや経験を、組織の中で活かしていくという考え方。
*2 LGBT……レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとった、セクシャルマイノリティーの総称。

 

■外部ともコラボレーションしていきたい

──今後、このミレニアル・ボイスをどのように発展させていきたいですか?

桜木谷 日本のミレニアル・ボイスには、多国籍な人たちが集まっています。自分たちがどういう社会を望んで、どう行動するか。インターナショナルな場所では、活発な議論がもう始まっている。こういうプロジェクトが他社からも立ち上がってくれば、もっと面白くなると思います。

ナビ 私は外部のミレニアル団体の会合にも参加しているけれど、外部とのコラボレーションを今よりも進めていきたいですね。そこから私たちと一緒に働く次世代の人材を獲得する機会につながることもあるかもしれない。私が思うのは、誰かが変えるのを待つのではなく、新しいことをやりたい人が変えていくべきだということ。私は議論していると、白熱しすぎて周りからよく「うるさい」と怒られてしまいますが、怒られるとがんばるタイプ(笑)。気合が入っちゃう。この勢いで変革を進めていくつもりです。

立田 私も社外の人とは積極的に交流していきたいです。私はこの会社に入るまで、リーダーシップを発揮する機会があまりありませんでした。日本人はつい一歩引いてしまうところがあるけれど、自分から発信するのがとても大事なのだということを、ミレニアル・ボイスで学びました。

チェ 確かに発信は大事。私は日本のミレニアル・ボイスの存在をもっとPRしたい。アメリカのミレニアル・ボイスとも取り組みの過程や結果をシェアできれば、さらに多くの学びが得られるはずです。

ファン 他のアジア・パシフィック地域のコカ・コーラ社員との交流ができれば、グローバル企業としても理想的。他の企業のミレニアル世代にも、コカ・コーラ社内にミレニアル・ボイスという若手の組織があることを知ってもらって、彼らと今の活動をもっと発展させていきたいと考えています。

写真上段左から
チェ・ミン・ギュ / 1985年韓国生まれ。オーストラリアの大学でマーケティングを学んだ後、2009年に来日し、MBAを獲得。その後、大手乳製品メーカーを経て、2016年に日本コカ・コーラ入社。マーケティング本部ウォーター&スポーツカテゴリー スポーツグループ マネジャー。「アクエリアス」のブランド担当を務める。
エミリー・ファン / 1993年アメリカ生まれ台湾育ち。米国の大学で気象学やビジネスを学んだ後、2016年に来日し、日本コカ・コーラ入社。経営戦略本部 コンシューマー&コマーシャルナレッジ&インサイツ コーヒーカテゴリ アシスタントマネジャー。コーヒーカテゴリ内の製品開発から、導入以降のさまざまな調査や消費者インサイトの発掘を担当。
さきや・かおる / 1989年生まれ。2012年に日本コカ・コーラでインターンをした後、入社。ライセンス&マーケティングアセット担当を経て、現在はオリンピック 東京2020オリンピック アセッツ&パートナーシップ アシスタントマネジャーとして、オリンピック関連のマーケティングに従事。
たつた・しょうご / 1984年生まれ。システムエンジニアを経て、2016年に日本コカ・コーラ入社。人事本部 サービスオペレーション スペシャリスト。セールスデータの分析や、社内でのデータ活用のサポートを行う。
シング・ナビニート / 1987年インド生まれ。2006年に来日し、2016年に日本コカ・コーラ入社。経営戦略本部を経て、現在はウォーターブランドチームにて水カテゴリの調査と戦略立案を行う。

 

*連載[“コカ・コーラ社流”ミレニアル世代の働き方]
第2回 キーワードは「巻き込む力」「目的意識」「ポジティブ」。グローバルサミットで見えてきた、次世代リーダーの共通項