文=ジム・コスクス


質屋の目利きも驚くレア車

ラスベガスで質屋を経営するリック・ハリソンは、ヒストリーチャンネルの『アメリカお宝鑑定団ポーンスターズ(Pawn Stars)』という番組でホストを務めています。番組冒頭の彼の決まり文句は「言えるのは、何がやってくるかわからないってこと」。しかし、そんなハリソンでも、2011年にある男性が彼の質屋に持ち込んだ、いや、乗りつけた「お宝」には度肝を抜かれました。それは全長約8メートル、タイヤが六つ付いた「コカ・コーラ」仕様のモーターホームだったのです。

番組では、「コカ・コーラ」関連のお宝アイテムをたくさん扱ってきたというハリソン。そのモーターホームに感銘を受けたとはいうものの、いざ交渉になると、売り手が提示した4万2000ドルという買取価格に首を縦に振りませんでした。

あまりにも珍しいものなので、モーターホームが本物かどうか確信できなかったからです。

モーターホームはゼネラル・モーターズGM)の商用車およびライトトラック部門のGMCによって1977年に製造されており、「コカ・コーラ」仕様のカスタムモデルは「GadAbout」と命名されていました。同年コカ・コーラ社が米国で実施した大々的な抽選会の1等の景品としてモーターホーム5台が提供されましたが、ハリソンの質屋に現れたのは、その5台のうちの1台と考えられています。

GadAbout」のベースとなったのは、1973年~1978年の間にGMCが製造したモーターホームです。これは同時代の他のモーターホームと比べると車体が低く、デザインは洗練されており、しかも運転しやすいということで、大変な評判を呼びました。
全長7メートルのスゴイ車!
「コカ・コーラ」仕様の「動く別荘」へ、ようこそ

カール・ハーはこの「GadAbout」をネバダ州で購入し、修復を進めています
(写真協力:カール・ハー



 『ポーンスターズ』で取り上げられた「GadAbout」は、最終的にカナダのアルバータ州エドモントンに住むカール・ハーに買い取られました。モーターホームのコレクターである彼は、ネバダ州で見つけて購入した「GadAbout」のほか、GMCの標準モデルも4台所有しています。「標準型のGMCはちょっとしたスキー旅行や日帰り旅行に使っています」と彼は言います。

番組に登場した「GadAbout」は、製造当初と異なるストライプ模様に塗り替えられており、内装の一部も変更されていました。「オリジナルにできるだけ近づけたいので」と、ハーはいま、2台の「GadAbout」の修復に取り組んでいます。


ゴツいけど、運転は快適。1970年代の最先端モデル

オイルショックによるガソリン価格の高騰も何のその、モーターホームは1970年代の米国の人々の想像力を大いに刺激したようです。大型の角ばった車両にはキッチン、バスルーム、エアコン、テレビなどが完備され、それはキャンピングカーというよりも小型の別荘のような存在でした。
全長7メートルのスゴイ車!
「コカ・コーラ」仕様の「動く別荘」へ、ようこそ

「GadAbout」のパッケージに含まれていた特製ミラー
(写真協力:ビル・ブライアント



 そして、コカ・コーラ社が1977年の抽選会に提供したモーターホームは、当時の最先端モデルでした。この頃の一般的なモーターホームには商用トラックのフレームが使用されており、運転時の快適性はあまり重視されていませんでした。GMCはこのような潮流とは全く異なるアプローチをとり、GMの高級車に採用されていたシャーシや新型のエアサスペンションシステムを使うことによって、車高を低く抑え、快適な運転と滑らかな乗り心地を実現させたのです。発売時に大きな話題を巻き起こしたこの車両は、今日に至るまで根強い人気を保っています。


「コカ・コーラ」仕様と一般車の違いとは?

コカ・コーラ社はGMと連携して、「GadAbout」の外装と内装を徹底的にカスタマイズしました。車体を見て、まず目に飛び込んでくるのが、巨大な「コカ・コーラ」のロゴ。その前方には「GadAbout」の名前が入っています。車両後部には、「コカ・コーラ」ボトルのキャップの形をした特注のスペアタイヤカバーが取り付けられています。