中山雅史さんは、日本代表が初めてワールドカップに出場した「1998 FIFAワールドカップフランス大会」の対ジャマイカ戦で日本人初ゴールを決めました。その4年後の「2002 FIFAワールドカップ日韓大会」では、主に控え選手として代表チーム初の決勝トーナメント進出を支えています。2度のワールドカップを経験した彼に、現在の日本代表はどのように映っているのでしょう? 6月に開幕するブラジル大会を占ってもらいました。

文=山口博之(BACH
写真=前 康輔

ベスト16を超えるために必要なこと 

──日本代表に選ばれている選手たちは、中山さんが高い目標を掲げたように、みなさん相当の努力を続けてきたということなんですね。 

中山 そうですね。でも、ほんの一握りですが、中には絶対的な才能のある人もいます。この間、野球の石井一久さん(元西武ライオンズ投手)がテレビ番組で「あんまり野球が好きじゃなかった」「これくらいでいいかなーと思ってやったら勝てた」と話していて(笑)、これこそ才能だな、と・・・・・・。テレビ観ながら「ふざけんなよ!」と思いましたけど(笑)、そう思いながらやれる才能は素晴らしいし、羨ましい。そういう人たちは肩肘を張らないことで、かえってリラックスしてプレーがよくなるのかもしれないけれど、まぁそんな人はほとんどいません(笑)。僕も代表に入りましたけど、“才能を持った人以外のその他大勢”のひとりなんですよ。その他大勢の中からどうやって自分をアピールしていけるのか、人がやらないことをやれるのか、あるいは人が諦めるところを諦めないでやり続けることができるのか。それで勝負するしかない。

 いまの代表選手たちも、みんな自分の才能に驕ることなく努力しているんだと思います。驕ることなくやり続けられるから、トップ・オブ・トップになれる。僕たちのような人間が、才能があって努力もしている人に追いつくためには、努力の量を増やすことが必要かもしれないし、質を上げることが必要かもかもしれない。ただ、往々にして、才能のある人は努力の量も多いし練習の質も高いんですけどね(笑)。 

──・トップ・オブ・トップの選手が集まった日本代表がワールドカップで前大会以上の結果を残すために、必要なことは何だと思いますか? 

中山 選手一人ひとりのフィジカルや技術など「個」の強化は当たり前だと思うんです。それをどれだけチーム戦術に活かしていけるのかが重要。たとえば、強豪国と対戦する場合、相手チームの選手と自チームの選手が11で向き合う局面になったら勝ち目がないというのであれば、21の状況をつくるようにすればいいし、それでもダメなら31にすればいい。そうした数的有利な状況をいかに数多くつくって戦えるのかはポイントです。そのプランを機能させるためには、11の状況に他の選手が加わっていくプラスαの運動量が一人ひとりに必要になってきます。他のポジションの選手たちとの連携をズラしてサポートするから倍近くの距離を動くことになるし、ポジションのスライド自体も速くしなければいけない。31なら、それらの運動量とスピードはもっと必要ですよね。数的優位づくりを90分間攻守に渡ってやっていくための強靭なフィジカルも必要になる。

 ワールドカップで優勝することはすごく難しいことですけれど、いまの選手たちは僕たちの頃と違って「目標は優勝」と口にしていますよね。そのことに対して批判はあるでしょうけど、それを言い続けて自分にプレッシャーをかけ、成長していくことはすごく大事です。

 あとは抽象的な話ですが、気持ちなんですよ。ハングリーな気持ち、勝ちへの飢えを思いっきり出せるのかどうか。「死に物狂い」などとよく言われますけど、それは極限状態のことで、試合が終わったら倒れ込んで動けなくなるくらいの状態に選手がなれるかということ。もちろん、ポジションごとに元々の運動量は違いますけど、そこまで自分を追い込んで戦えるかが勝負の分かれ目でしょうね。

Coca-Cola Journey独占インタビュー
中山雅史が占う
2014 FIFAワールドカップブラジル大会

──今年はぜひ結果を楽しみにしたいですね。年々世界との距離は縮まってきているように感じます。 

中山 いままではブラジルやイタリア、スペインなどのビッグネームと対峙した時、日本は名前負けしている部分があったと思うんですね。でも、いまは海外に出て戦っている選手も多いから、以前のようなコンプレックスはなくなっているんじゃないでしょうか。
 そして力の差が近づけば近づくほど、ギリギリの戦いが増えれば増えるほど、大事になってくるのが、1歩でも、1メートルでも先に足を出せるかどうかということ。世界のトップはその1歩がむちゃくちゃ速い。日本がもし、そのレベルに達していないのだとしたら、それ以上のことを、速くしなくてはいけない。世界が1歩でいけるなら、日本人は2歩出して食らいついていく。それも前半だけでなく、90分間やり続ける。

 そのために、オフェンスにしてもディフェンスにしても、ボールにチャレンジした後のカバー、「チャレンジ&カバー」が重要になると思います。昨日までコーチライセンスの研修に行っていて、守備の基本「チャレンジ&カバー」という言葉を覚えたので、いま使わせてもらいましたけど(笑)。

 これは、人生にも当てはまることでしょうね。チャレンジが必要な時もあれば、チャレンジに対するリスクヘッジ(カバー)が必要なときもある。つまり、人生には「リスク・マネジメント」も必要なんです。これも昨日の研修で出てきた言葉(笑)。

Coca-Cola Journey独占インタビュー
中山雅史が占う
2014 FIFAワールドカップブラジル大会

──(笑)。海外へのコンプレックスがなくなってきたとのことですが、中山さんの時代はまだあった・・・・・・。

中山 まだありましたね。しかも当時は世界ではなく、アジアとの闘いだったんです。ドーハ(1994 FIFAワールドカップアメリカ大会 アジア地区最終予選)ではアジアの壁を越えられず、ジョホールバル(1998 FIFAワールドカップフランス大会 アジア第3代表決定試合)でようやく乗り越えてワールドカップに行けた。そのころは、ワールドカップに出られれば御の字的な空気でした。前回大会で、日本代表は初めてアウェイの地でグループリーグを突破しましたが、選手たちは戦い方に満足はしてなかったと思います。決勝トーナメント1回戦でパラグアイに負けて、その悔しさをバネに、チームとしても個人としても海外で戦う機会を増やしたこの4年間の上澄みで、気持ち的にも、技術的にも、もうコンプレックスはないと言っていいんじゃないでしょうか。

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