学生時代から環境保護活動に関わってきた
元サッカー日本代表監督の岡田武史さん。
その岡田さんは今年、コカ・コーラ社
環境保護活動や広報活動のアドバイスや支援を行う
「サスティナビリティーアンバサダー」に就任、
先日は「ピークシフト自販機」設置6万台突破記念式典にも出席しました。
『Coca-Cola Journey』では、今回特別に、
岡田武史さんへのインタビューを掲載します。
文=石井孝明
写真=若木信吾

「いま、なぜ、地球環境保護なのか」


──環境保護活動を積極的に行う理由は?
 
岡田 自分の3人の子どもの人生の先行きを、父親として考えたことが大きいですね。若い世代は1000兆円の日本国の借金、そして地球温暖化や資源の枯渇など、私たちの世代が残した負の遺産を背負うことになっています。しかし、そのようなことがわかっているのに、諸問題に何ら手がつけられていない。それはおかしいんじゃないか。そのように思い、環境支援活動を中心に行動をしてきました。
 地球上で起きているさまざまな問題の本質を考えると「サスティナビリティー」(持続可能性)の大切さに気づきます。これからは、持続可能な社会の構築こそが重要で、それも、環境問題や自然保護活動に関心が向いた理由です。
 
Takeshi Okada’s Sustainability Vision
岡田武史が語る「企業の未来、地球の未来」


──古河電工という大企業の会社員、サッカーチームの監督、そしてNPOの代表など、岡田さんは多彩な経歴を重ねてきました。その中で環境への関心をどのように育んだのですか。
 
岡田 早稲田大学の学生時代に『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』(ドネラ・H・メドウズ/ダイヤモンド社)という本を読んだことが、そもそも環境に関心を持つことになったきっかけです。いまからもう40年近くも前のことですね。1970年代は経済成長することが正しいとされ、誰もそれを疑っていなかった。ところが、この本は成長一辺倒の社会は、地球環境への負担が高まり、いずれ限界が訪れるという内容でした。当時の私は「限界」なんて考えたことがなかったですから、それはかなりの衝撃でした。
 
 もう一つ環境を考える上で大きかった経験は、92年から1年間、ドイツのプロサッカーチームにコーチ留学をしたことです。現地の草の根の環境意識に触れてショックを受けたのです。ドイツでは日本よりもずっと早くから地球環境を考慮したライフスタイルが徹底されていて、ゴミの分別を丁寧に行っていました。
 また、冬にオーストリアのスキー場に自動車で向かったことがあったのですが、スキー場に辿り着くまでに大きな山を越える必要がありました。そのために山越え用の列車に自動車を乗せました。現場は、極寒状態ですから、車中を温かくするため暖房をつけたまま私と家族は乗車して待っていたのです。すると、“こんこん”と自動車の窓を叩く人がいました。「何だ?」と思って窓を開けて尋ねると「エンジンを切ってくれないか」と言うのです。この人は私たちと同じように列車に車を乗せていたのですが、私たちを注意するために自動車から降りてきたようでした。で、よく見ると、どの人も車の暖房を止め、車内でスキーウェアを着込んで寒さに耐えていたのです。自動車の排ガスで山の空気を汚さないようにということでしょう。その意識の徹底ぶりに驚きました。
 ただし、このような経験をしても、私は何にも増して環境が大切、人間の生活よりも環境が大切なんだという「環境至上主義者」にはなりませんでした。誰でも人間なら「心地よく暮らしたい」とか、「楽しく生きたい」という欲を持ち、それは完全に消せるものではない。私も、欲を満たしたいという思いはあります。でも、その欲と地球環境保護を両立させるには、どこかで折り合いを付けなくてはいけません。「知足(ちそく)──足るを知る」という、素晴らしい禅語がありますね。何事にも限度と限界がある。それを知った上での最低限の心地よさを望むことこそが、人間の営みと、環境の折り合いをつける形ではないかと思うのです。