記録的な猛暑が記憶に新しい2018年の夏は、脱水から誘発される熱中症の危険性がニュースなどで広く報じられ、その予防方法に関心が集まりました。しかし、実は、冬にも日常的に脱水のリスクがあることをご存知ですか? 冬は空気の乾燥により体から水分が失われやすいのに加え、夏に比べ喉が渇きにくく、飲料摂取の機会が少なくなることが、脱水の原因となるのです。今回は、そうした「冬ならでは」の脱水のメカニズムと、効果的な予防・改善策をご紹介します。

 

■気づかないうちに水分不足になってしまう「冬の脱水」

脱水というと、夏のイメージが強いかもしれませんが、実は冬でも、日常生活の中で脱水症を起こしてしまう可能性があるのです。冬の日常生活において脱水が生じる原因を、体の周りの環境(外的環境)と体の内側の環境(内的環境)に分けて見ていきましょう。

夏だけじゃない、「冬の脱水症」にも要注意。リスクと予防・改善策を徹底解説!

冬にみられる脱水の要因

外的環境としては、まず空気の乾燥があげられます。現代の住宅は気密性が高く、エアコンなどの暖房器具の使用により、さらに湿度が下がってしまいます。かつての日本家屋では、ふすまや畳が湿度をコントロールする役割も果たしていましたが、それらが使われていない住宅では、より乾燥が進みがちです。乾燥した環境では、皮膚や粘膜、呼気から、特に自覚がないまま水分が失われる「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」(*1)が増えます。つまり冬場では、日常的に生活する中で、知らず知らずのうちに体から失われる水分の量が増えてしまっているのです。

一方、内的環境はどうでしょうか。冬は体感温度が低く、喉の渇きを感じにくくなっているため、夏場に比べ飲料の摂取量が減りがちです。体を冷やしたくないなどの理由で飲料の摂取を控える場合もありますし、運動時においても、冬は水分摂取が不足しやすいと言われています。

このように、外気の乾燥による不感蒸泄の増加と水分摂取量の減少が同時に起こりうる冬は、日常的に脱水のリスクと隣り合わせなのです。

また、冬に流行するさまざまな感染症も脱水症を発症する原因のひとつになります。ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎を発症すると、激しい嘔吐や下痢などを繰り返します。通常、小児で約70%、成人で約60%、高齢者で約50%を占める体液が、嘔吐や下痢によって大量に体外に放出されてしまうため、脱水症に陥るリスクが高まってしまいます。そのほか、インフルエンザなどを発症して高熱が出た場合も、体温調節のために発汗することから体液を失いがちです。

このように、日常的な脱水のリスクに加え、ウイルス感染による嘔吐や下痢、発熱によって生じうる脱水症のリスクには、特に注意が必要となります。

*1不感蒸泄……普段感じることのない水分の喪失。呼気に含まれる水分や皮膚や粘膜から蒸発する水分を合わせたもの。

 

■状況に応じて、適した飲料を補給しましょう

冬の脱水症を防ぐためには、なによりも、まずは水分補給を怠らないことが大切です。暖房の効いた部屋で長時間過ごすときは、喉の渇きを感じる前に、こまめに水分を取りましょう。日常の脱水予防には、温かい白湯など、体を温めつつ水分を補える飲料を飲むだけで十分です。

しかし、高熱で大量の汗をかいたときや、感染症にかかって嘔吐や下痢の症状があるときは、水分と共にナトリウムやカリウム、ミネラルなどの電解質も失ってしまうため、水を大量に飲むだけでは適切な水分補給はできません。

水だけを大量に飲んだ場合、一時的には体液量が増えます。しかし、体液に含まれる電解質の濃度が下がり、体液濃度を一定に保とうとする体の働きによって水分が排出されてしまうため、脱水状態から回復できなくなってしまうのです。ですから、電解質を含む飲料で水分補給をすることが重要になります。

夏だけじゃない、「冬の脱水症」にも要注意。リスクと予防・改善策を徹底解説!

水だけを飲んだ場合と適切な水分補給をした場合の体液の変化

大量に汗をかいた場合には、塩分濃度が0.1~0.2%の飲料の摂取が推奨されています。また、適度な糖分を含む飲料は、血中の水分保持率を高めるという報告もあります。スポーツドリンクは前述の範囲の塩分を含み、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなど汗で失われた成分に加え、適度な糖分も含んでいるので、脱水症予防に有効です。

しかし、実際に脱水症に陥ってしまった場合は、水分吸収速度が速い経口補水液を摂取しましょう。経口補水液はスポーツドリンクと同様、電解質と糖分を含んでいますが、スポーツドリンクに比べナトリウム量が多く糖分が少ないため、迅速に水分を補給できるのが特徴です。

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スポーツドリンクおよび経口補水液の成分とその働き

経口補水液は、大量を一気に摂取するのではなく、少量ずつゆっくりと飲むのがポイントです。特に吐き気があるときは、まずは少量を試し、摂れるようであれば回数を増やして失った分を補給していくことが大切です。また、体を冷やしたくない場合には少し温めて摂取します。

 

■小児と高齢者は特に注意を!

脱水症に関して特に注意が必要なのが、小児と高齢者です。小児は、水分や電解質の再吸収が行われる腎機能が未発達で、成人に比べ水分の出入りが多いことなどから、脱水症になりやすいという特徴があります。また、自分の意思で水分補給ができない乳幼児には、周囲の大人が気を配らなくてはなりません。

小児が嘔吐や下痢をしているときは、発症後3~4時間で50~100mL程度の経口補水液を少量ずつ与えます。そして、嘔吐または下痢による排泄の都度、失った水分量を確認しながら、1時間あたり体重に応じて60~240mL程度を3~5分おきに少量ずつ補給します。

一方、高齢者は喉の渇きを自覚しにくかったり、普段の食事量が不足しがちな傾向が強く、日頃から脱水症になりやすい状態といえます。脱水により持病が悪化することもあるため、嘔吐や下痢の症状が出始めたら、速やかに経口補水液を摂ることが大切です。最初は1~5分おきに摂取し、嘔吐が止まれば適量を補給していきます。高齢者は嚥下機能が低下している場合もあるため、ゼリータイプの経口補水液もおすすめです。

以上のように、脱水の「予防」と「改善」では、摂取すべき飲料の種類が異なります。ご自身だけでなく、家族の健康を守るためにも、冬の脱水症対策にスポーツドリンクや経口補水液を常備してはいかがでしょう。

*参考
Sawka MN, et al. Med Sci Sports Exerc 39: 377-390, 2007.
環境省、熱中症環境保健マニュアル2014.
全国清涼飲料工業会、「熱中症対策」表示ガイドライン, 2012.
一般社団法人日本老年医学会. 在宅医療に関するエビデンス: 系統的レビュー

*監修
済生会横浜市東部病院 周術期支援センター センター長 谷口 英喜 先生

*ダウンロード資料:適切な水分補給を心がけましょう!