日本全国で事業展開をするコカ・コーラ社
全国各地の地域社会のさまざまなつながりを描いていく
シリーズ企画「POWER OF COMMUNITY」
第1回目は、コカ・コーラ復興支援基金の助成で
太陽光発電設備および蓄電池を設置した
福島県相馬郡新地町との“つながり”を描いていきます。


文=大山貴弘
写真=松本昇太

「災害時の防災機能を高めたい」

 福島県浜通りの最北に位置する、相馬郡新地町。総人口8,000人足らずの小さな町にある4校の小中学校には、太陽光発電設備が置かれている。校舎の屋根にはソーラーパネルが設置され、校内で使う電力の一部をまかなう他、災害時には、蓄電池を使った電源供給も行うことが可能だ。

 発電面の効果だけではなく、教育的効果もある。
「只今の発電電力は3.5kw。40W蛍光灯の本数にすると、87本分」──。各校が発電状態をリアルタイムで確認できる表示システムを用意していて、それを見ることで、児童・生徒たちは、節電や省エネに対する意識を持つようになるのだ。

POWER OF COMMUNITY
わたしたちの地域とコカ・コーラの「未来志向」な関係
第1回「僕たちの学校に太陽光発電設備がやってきた!」

POWER OF COMMUNITY
わたしたちの地域とコカ・コーラの「未来志向」な関係
第1回「僕たちの学校に太陽光発電設備がやってきた!」

子どもたちは学校内に設置されたモニターで、常に電気の使用量を把握することができる。


 新地町の小中学校4校は、コカ・コーラ復興支援基金が展開する「公立小中学校へのエコ支援事業」(*1)による助成を受け、太陽光発電設備を設置した。発電設備の竣工式が行われたのは、2012年9月9日。東日本大震災から1年半後のことだった。そのプロジェクトの中心になったのが、新地町教育委員会の教育総務課長、泉田晴平氏である。

「東日本大震災で、新地町沿岸部の集落は壊滅的な被害を受けました。被災者の方々には避難所で生活を送っていただくことになるのですが、避難所となるのは基本的に学校です。東日本大震災で我々が身にしみて感じたのは、災害時の情報と電源の大切さです。そうした震災経験から、災害時の防災機能を高めることを目的に、ソーラーパネルと蓄電池を小中学校に設置することを決めました。設置にあたり、コカ・コーラさんからの助成をいただいています」(泉田氏)


きっかけは、コカ・コーラ復興支援基金

 泉田氏は地元新地町で生まれ、高校卒業までこの町で育った。大学入学と同時に上京し、卒業後は都内の建設会社に就職し、経理を担当していた。29歳の時にふるさとに戻り、新地町役場に就職。所属している新地町教育委員会では、生徒の就学関係の事務の他、小中学校の施設管理も行っている。

 町としての災害時の防災機能の向上に加え、子どもたちに対する環境教育やエネルギー教育をさらに充実させられるという観点からも、コカ・コーラ復興支援基金「公立小中学校へのエコ支援事業」に興味を持ったという。

 コカ・コーラ復興支援基金の事業に応募した頃の新地町は、復興というより復旧段階にあり、太陽光発電という新しい事業に取り組むことは困難な状況であった。だが、村山正之教育長を中心に関係機関と調整をし、計画書をまとめあげ、事業実施につなげることができた。

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わたしたちの地域とコカ・コーラの「未来志向」な関係
第1回「僕たちの学校に太陽光発電設備がやってきた!」

校舎屋上に設置されたソーラーパネル


「しかし、大きな問題がありました。それは、我々が太陽光発電やソーラーパネルに対して、知識や経験をまったく持っていなかったということです。設計書や仕様書をどのようにつくればいいのかさえ分からない。他の自治体の取り組みを参考にしようとも、前例のないことで、小さな町の教育委員会としてはとても苦労しました」(泉田氏)

 民間業者の力添えを得て、なんとか太陽光発電設備の設置にいたったという新地町。設置後は、太陽光発電によって校内の電力の一部をまかなう他、余剰電力の売電も行っているそうだ。


先進教育に取り組み続ける新地町

 学校の規模や建物の構造、生徒数によって状況はさまざまだが、気象条件の良かった2013年5月には、4校あわせて10万円ほど売電できたという。また、先に述べた環境教育面からの効果は高く、電気の使用量を視認できるようになったことで、明らかに子どもたちの節電意識の高まりに効果があるそうだ。

「太陽光発電設備が子どもたちの環境教育にどれくらい効果があるものなのか、設置する前はあまり見通しが立っていなかったというのが正直なところです。ただ、実際に設置してみて、環境やエネルギーに対する子どもたちの意識が非常に高まっていると実感しています。発電の表示システムがあることで、エネルギーを身近に感じることができるのでしょう。また小学校5年生を中心に、理科や社会、総合的な学習の中で、それぞれテーマを決めて環境教育に取り組んでいます。結果、学校の中だけでなく、家庭で節電に取り組むなど、地域社会全体として非常に大きな波及効果があると感じています」(泉田氏)

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わたしたちの地域とコカ・コーラの「未来志向」な関係
第1回「僕たちの学校に太陽光発電設備がやってきた!」

太陽光発電設備設備を設置したことで、子どもたちはエネルギーを身近に感じるようになった。


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第1回「僕たちの学校に太陽光発電設備がやってきた!」

太陽光発電設備設置プロジェクトの中心人物、新地町教育委員会教育総務課長の泉田晴平氏。


 新地町ではICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した教育にも注力している。2010年には小学校3校が総務省による「地域雇用創造事業ICT絆プロジェクト」に採択され、2011年には、尚英中学校が総務省の「フューチャースクール推進事業」と文部科学省の「学びのイノベーション事業」の採択を受けている。すべての教室には電子黒板を設置、小学校3年生以上は、1人1台タブレットPCが支給され、それを使って授業を行っているという。

「発電の表示システムの情報を、電子黒板やタブレットPCに表示させることもできます。それを見ながら環境教育の授業を行うことで、より学習効果が高まる部分も大きい。教育という面で子どもたちにとって本当に必要なのは、モノや設備ではなく、想像する力、未来を向く目、なのです。学校の先生方のご協力もあり、今回は環境教育にも注力したことで、設備をつくったこと以上の効果がありました。新地町はICT教育の面でも、環境教育の面でも先進的な取り組みを行っていますが、それは小さな町の教育委員会だから、機動性が高いのだと思いますね」(泉田氏)


「子どもたちの元気と未来のために」

 それにしても、だ。総人口8,000人足らずの小さな町が、ICTや太陽光発電設備など先進的な取り組みを続ける理由はいったい何なのだろう? そういう疑問が湧いてくる。そんな時、泉田氏は言った。

「それは、子どもこそが私たちの未来だからです」

 新地町の主産業だった農業や漁業は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた。震災から復興し、新しい新地町をつくっていくことを考えた場合、子どもたちの力こそが重要になる。新地町がICTを活用した授業など先進的な教育に取り組むのは、次の新地町を担う子どもたちを育てたいという思いがあるからこそで、まさに未来に種まきをしているのである。

「地域が元気になるためには、元気な子どもたちが不可欠です。子どもたちの考える力、未来を向く目を育むこと。それこそが、いま、学校教育に必要なことではないでしょうか。今回のコカ・コーラさんの助成もそうですが、子どもたちが自分の世界を広げ、好きなもの、得意なものを見つけられるようになるのなら、地域以外にも、外部や民間と協力して、さまざまな制度や技術を採り入れながら、子どもたちをサポートしていきたいと考えています」(泉田氏)

 エネルギー問題と環境問題は、現在もこれからも、世界が直面する重要なテーマとなる。これらの難題を切り拓いていくのは、子どもたちだ。だからこそ、新地町の小中学校の取り組みは、社会に求められる教育のあり方を先取りしていると言える。

 子どもこそ未来。泉田氏がいうこの言葉の重みは、計り知れない。


*1 コカ・コーラシステムは、ザ コカ・コーラ カンパニーが総額約25億円を拠出して設立した「コカ・コーラ復興支援基金」の活動を通じて、東日本大震災の復興支援を行っている。2012年は、公立小中学校への太陽光発電設備設置助成第2期として、合計23校に助成を決定した。