コカ・コーラ社は、総合飲料企業への移行を加速し、あらためてイノベーションと成長に注力しようとしています」──2017年11月16日(木)、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)のジェームズ・クインシー社長兼最高経営責任者(CEO)は、120人を超える投資家や金融アナリストを前にこう語りました。今回は、この投資家向けイベントで示されたコカ・コーラ社の今後の事業方針と事業戦略をご紹介します。

*関連記事:その戦略はコカ・コーラ社をネクストステージに押し上げる? ついにヴェールを脱いだコカ・コーラ社の「新・成長戦略」

<クレジット>
文=ジェイ・モイエ

 

■成功事例は即、グローバル展開する

この日のイベントは、2009年以来久しぶりとなる大規模な投資家向けの説明会でした。ここでクインシーと経営幹部たちは、ザ コカ・コーラ カンパニーが消費者ニーズに寄り添って製品ポートフォリオを拡大していること、そして、成功事例を世界中の市場へ展開するにとどまらず、各地で実験的かつ実践的な戦略を採用していることを説明しました。

クインシーは次のように述べています。
「私たちは、機動力を高め、製品を開発してから市場に投入するまでの時間を短縮しなければなりません。200ヵ国以上で事業を展開している当社にとって、一つの国で成功するだけでは、率直に言ってそれほど意味はない。複数の国で大きな成功を収めて初めて意味があるのです。そのためには、一つの国での成功事例を他の国に展開していかなければなりません。我々が持つ多様な製品ポートフォリオの中で『10億ドルブランド(*)』をさらに増やしていくには、世界中から最良のアイディアを集めることが絶対条件となります」

動画:ザ コカ・コーラ カンパニー インベスター・デー2017の様子
(*キャプションは英語のみ)

たとえば、中南米でベストセラーとなっている大豆飲料ブランド「AdeS」が、2018年初めに欧州で発売される予定です。最近では、米国で販売していた「Honest Tea」と「smartwater」が英国で発売されました。また、中欧/東欧ビジネスユニットは、コカ・コーラ ノースアメリカが採用している、新たな飲料への投資、育成、事業化というベンチャーキャピタル的なアプローチを取り入れた「Venturing & Emerging Brands(VEB)」モデルを導入しました。

*10億ドルブランド:ザ コカ・コーラ カンパニーの製品ポートフォリオにおいて、売上高が10億ドルを超えるブランド。2017年11月時点で、全世界に21の10億ドルブランドが存在する。

 

■成長は“目的”ではなく“行動規範”

最高成長責任者(CGO)のフランシスコ・クレスポは、「成長は行動規範である(discipline of growth)」という、コカ・コーラ社のビジネスにおける新しい考え方を紹介しました。クレスポは、その意味を次のように解説しています。「成長は目的ではなく、行動規範です。その行動規範を実践することが、結果的に成長につながるのです」。


規律あるアプローチでブランド構築に取り組むことについて説明する
フランシスコ・クレスポ最高成長責任者

 

この考え方を実現していくことは、すなわち、高い競争力を持つブランドポートフォリオを構築することにつながります。その結果、競合企業を上回る利益率を達成することができるのです。「これを飲むべきだと消費者に訴求するのではなく、謙虚な姿勢で消費者の嗜好とニーズにポートフォリオを合わせていきます」(クレスポ

さらにクレスポは、同社が持つブランドを「開拓者(explorer brands)」「挑戦者(challenger brands)」「リーダー(leader brands)」という3つのポジションに分類し、ポジションごとの事業戦略を説明しました。

Honest Tea」などの「開拓者」ポジションにあるブランドは、スタートアップ企業と同じように、他社にはない強みを確立すること、つまり差別化戦略により成長を図ります。ブランドにとっての理想は、「開拓者」から「挑戦者」へと成長を遂げることです。さらに大きな成功を収めたブランドは、世界中で圧倒的な知名度を誇る「コカ・コーラ」ブランドのように、それぞれの飲料カテゴリにおける「リーダー」を目指すことができるのです。

「我々の考える『成長』という行動規範は、大胆さを備えた起業家としての行動規範、決してあきらめないスタミナを持つ戦士としての行動規範、そして知恵を持つリーダーとしての行動規範。この3つが、複合的に合わさったものです」(クレスポ)。

米国で展開されている「Honest Tea」。
有機茶葉を使用した紅茶ブランド

 

消費者の嗜好とニーズに基づいた飲料の開発と発売は、業績の向上という明らかな成果を出し始めています。たとえば、「コカ・コーラ ゼロシュガー」の小売売上高は、2017年初めから11月にかけて前年同期比13%増となりました。また、ボトルデザイン、フォーミュラ(*原液のレシピのこと)、マーケティング戦略を一新した「ファンタ」の小売売上高は、同8%増となっています。「この結果は、すでに『リーダー』ポジションを獲得している当社の主要ブランドも、まだまだ改善、成長の余地があるということを示しています」(クレスポ)。

投資家の質問に答えるザ コカ・コーラ カンパニーの幹部たち

 

そのほか、消費者ニーズを重視したイノベーションの成功事例として挙げられるのが、「シュウェップス」(英国)、「アップルタイザー」「Vio」「Blue Sky」(米国)といった、「天然由来」「クラフト」「オーガニック」「プレミアム」をキーワードとした炭酸飲料カテゴリです。また、日本とオーストラリアで販売されている「コカ・コーラ コーヒープラス」は、「コカ・コーラ」ブランドに新しい価値を付加して生まれた派生製品です。

2015年からザ コカ・コーラ カンパニーの傘下に入った
炭酸飲料「Blue Sky

 

クレスポは、小規模でも利益率の高いカテゴリに重点を置くことは、販売数量ではなく販売金額を事業の評価基準とする、コカ・コーラ社の方向転換と一致していると言います。「販売数量を唯一の評価基準とするのではなく、新規取引の獲得数と売上の成長率も評価しながら、ブランドを強化する方法を模索していきます」。

動画:ザ コカ・コーラ カンパニー インベスター・デー2017 プレゼンテーション動画
(*キャプションは英語のみ)

 

■すべてを支えるのは「社員の好奇心」

クインシーは、炭酸飲料、果汁飲料/乳飲料/植物由来の素材を使用した飲料、茶系飲料/コーヒー飲料、その他のノンアルコールRTD(Ready To Drink、容器入り飲料のこと)飲料など、あらゆる製品カテゴリにおいてコカ・コーラ社は世界トップのポジションにいることを例に挙げ、「総合飲料企業」に発展を遂げるための強固な基盤が築かれていると強調しました。実際に、現在コカ・コーラ社には21種類の10億ドルブランドがありますが、これは2007年と比べて倍以上に増えています。

「当社は、ブランド、流通ルート、販売ノウハウという非常に強固な事業基盤を持っています。明確な事業方針と強力な事業基盤を持ちながら、非常に魅力的な業界に身を置くことができているのです」とクインシーは語り、ノンアルコールRTD飲料が他の大半の消費財カテゴリをしのぐペースで成長していることもつけ加えました。

コカ・コーラ カンパニーは、今後2020年までに既存事業において4~6%の売上高の成長を見込んでおり、売上高は1,500億ドルに達する見通しです。「販売数量ではなく売上高を重視していくこと、ブランドと消費者の結び付きを強めていくこと、ニッチ市場とプレミアム市場を狙うことにより、私たちは現在だけでなく将来的にも多くの売上を上げていくことができます。こうした収益は会社全体の成長をもたらし、実験的な取り組みへの投資を可能にしてくれるでしょう」(クレスポ)。

動画:ザ コカ・コーラ カンパニー インベスター・デー 質疑応答の部
(*英語のみ)

クインシーは最後に、「すべてのイノベーションはコカ・コーラ社内から始まる」と締めくくりました。「私たちは好奇心旺盛でなければなりません。消費者がどのように変わっていくのか、取引先がどのような戦略を有し、どのように価値を創出しているのかに関心を持たなければ、しかるべきアイディアを思い付くことはできません。独自のアイディアを見つけなければ、チャンスを逃してしまいます。加えて、事業スピードを上げ、実験的な試みを行い続けることも必要です。アイディア、実験、学びのサイクルを加速させ、それを繰り返すことが、全カテゴリでの売上拡大、および、全世界での事業展開を進めていくうえで不可欠なのです」。

さて、厳しい目を持つ投資家やアナリストに、コカ・コーラ社の事業方針と事業戦略はどのように映ったでしょうか? 「機動力」「行動規範としての成長」「好奇心」という3つのキーワードを胸に、コカ・コーラ社はイノベーションを起こし続け、さらなる成長を目指します。どうぞご期待ください。