世界中の、数えきれないほどたくさんの映画に登場している「コカ・コーラ」。あるときはアメリカン・カルチャーの象徴として羨望のまなざしを浴び、また、あるときには身近な飲み物としてさりげなくテーブルに置かれる……。時代設定や登場人物の置かれた状況によって、「コカ・コーラ」が映画の中で果たす役割はさまざまです。

そんな「コカ・コーラ」は、一体どのような経緯で映画に“出演”することになったのか、気になったことはありませんか? 今回の記事では、ハリウッド映画やTVドラマシリーズの制作現場に、「コカ・コーラ」や関連アイテムを届けている人物を取材。「コカ・コーラ」の知られざる一面を、みなさまにご紹介します。

文=ジェイ・モイエハンナ・ニーマーザ コカ・コーラ カンパニー ヘリテージコミュニケーション部門)

 

■“俳優”コカ・コーラの所属事務所!?

木箱の中にぎっしりと並べられた「コカ・コーラ」のガラスボトル。それを1列ずつ、丹念に見ていたマイケル・ヌシナウは、その中の1本に目を留めると、すかさず手を伸ばします。「1940年代から50年代にかけて流通していた『コカ・コーラ』ボトルのロゴに施されたエンボス加工は、ちょうどこんな感じですね」。ガラスボトルに浮き出た文字を指でなぞりながら、彼は言いました。

ヌシナウは数年前、ケンタッキー州のボトラー社(*1)から、数百本の古い「コカ・コーラ」ボトルを購入しました。しかし彼は、世界中に何千人もいる「コカ・コーラ」コレクターのように、それらを趣味で手に入れたわけではありません。彼の経営するプレミア・エンタテインメント社は、25年近くにわたり、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)と協力して「コカ・コーラ」や関連アイテムを映画、TVドラマ、ミュージックビデオなどに“出演させる”手助けをしてきたのです。最近では、ネットフリックスのようなオンデマンドのストリーミング動画にもサービスの対象を拡大しています。

動画:「コカ・コーラ」製品が映画に登場するまで
(※英語のみ)

 

■「コカ・コーラ」は、映画史と共に

コカ・コーラ」が誕生したのは1886年。映画が発明されたのは19世紀末。そして、「コカ・コーラ」の銀幕デビューは、それから間もない1900年代初頭です。1950年代には、ザ コカ・コーラ カンパニーは製品の映画出演機会を拡大させるべく、世界のエンタテインメントの中心地であるロサンゼルスに事務所を開設(その甲斐あってか、1978年公開の『スーパーマン』、1982年公開の『E.T.』といったメガヒット作品では、きわめて重要なシーンで『コカ・コーラ』が象徴的な役割を果たしています)。90年代にその役割を引き継いだプレミア・エンタテインメント社は、ロサンゼルスのコカ・コーラ社エンタテインメント・マーケティング部門やアトランタのザ コカ・コーラ カンパニー アーカイブ庫と連携し、映画業界から寄せられるニーズに応えています。

コカ・コーラ ノースアメリカ(北米事業)でエンタテインメント・マーケティング部門のディレクターを務めるタラ・パイパー曰く、「プレミア・エンタテインメント社は私たちの前線部隊として、私たちと、映画の制作会社や撮影スタジオの間に『コカ・コーラ』ブランドの橋渡しをしてくれる存在」なのだそうです。

それでは、プレミア・エンタテインメント社はどのような流れでコカ・コーラ社製品を映画の制作現場に届けているのでしょうか? 多くの場合、それは「コカ・コーラ」ボトルや看板、特定の年に放映されたTVCMなどが登場する脚本を受け取ることから始まりますが、映画セットのデザイナーや小道具の責任者が、演出したい雰囲気に基づいて漠然とリクエストしてくることもあるそうです。

「たとえば、『1950年代のダイナーでのシーンがあるんだけど、どんなものが合うかな?』といった具合です。問い合わせを受けると、私は自社の倉庫から使えそうなアイテムを選び、写真を撮って送ります。彼らが興味を持ったら、直接来てもらって、実物を確認するという流れです」とヌシナウは説明します。

出演作多数のハリウッドNo.1俳優!? 裏方たちが明かす、「コカ・コーラ」と映画の親密な関係

プレミア・エンタテインメント社マイケル・ヌシナウ

アイテムの選定の際にヌシナウが活用しているツールの一つが、ザ コカ・コーラ カンパニー アーカイブ庫のオンラインデータベースです。「保管アイテムの高解像度の画像や動画が充実しているので、特定の年につくられた看板や広告を調べて画像をダウンロードし、それを元に複製をつくることもあります。あと、アイテムの収集にはeBayのようなネットオークションもよく使っていますよ。映画のシーンをよりリアルなものにし、再現したい時代や場所に彩りや深みを与えられるアイテムは、案外身近なところにもあるんです」と彼は明かします。

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プレミア・エンタテインメント社に保管されている「コカ・コーラ」ボトル

 

■「コカ・コーラ」アイテムの宝庫が、作品への供給源

ノース・ハリウッドの比較的目立たないオフィスビルの奥に、プレミア・エンタテインメント社の倉庫はあります。外観からは、中に何があるのか想像もつきませんが、倉庫の中は宝の山。「コカ・コーラ」ボトル、コップ、缶、看板、その他ありとあらゆる「コカ・コーラ」関連アイテムが保管されているのです。壁にはロゴ入り時計、広告ポスター、メニューボードなどが、「コカ・コーラ」が登場したハリウッド映画の大作やインディーズ映画の額入りのスチール写真と隣り合わせで掲げられています。さらに、会議室には広告キャンペーンやオリンピックバージョンの限定ボトルが飾られ、廊下には自動販売機やクーラーボックスが所狭しと並べられています。

どのアイテムも、来るべき映画出演に備えてきちんと手入れがなされています。また、映画のために貸し出されたアイテムは、すべてプレミア・エンタテインメント社に返還される契約です。

ちなみにこのオフィスビルには、ケースに入った新品の「コカ・コーラ」も大量に保管されています。ザ コカ・コーラ カンパニーは、製品を映画に出演させるために対価を支払うことはありませんが、映画のキャストやスタッフのために清涼飲料を無償提供することで映画制作を支援することはよくあるのです。

*1 ボトラー社:コカ・コーラ社製品の製造、販売を担う会社。原液の供給、製品の企画開発、マーケティング活動はザ コカ・コーラ カンパニーが行う。

 

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